とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

ロゼッタ・ストーン外国語学習法

2020年10月17日 16時22分53秒 | フランス語


とね日記では15年近く、科学系の本を読んで紹介しているが、日ごろから頭を悩ませていることがある。物理学や数学の読書に時間を割きたいし、一般の本も読みたい。英語やフランス語の力もつけておきたい。それぞれ時間がかかるから、科学の本を読んでいると「小説も読みたい」とか「語学学習にも時間を割きたい」という欲求がムクムクと頭をもたげてきて、常にストレスを抱えながら先を急ぐことになる。

洋書を読み、紹介し始めたのは日本語で「素粒子標準模型入門: W.N.コッティンガム、D.A.グリーンウッド」を読んだのがきっかけだった。樺沢先生がたまたま和訳したのが原書の初版で、その後刊行されていた原書第2版を読んでおきたいと思ったのである。そして書いたのが「An Introduction to the Standard Model of Particle Physics 2nd Edition: W.N.Cottingham, D.A.Greenwood」という記事だった。

その後、2018年3月にホーキング博士がお亡くなりになり、いちばん有名な「ホーキング、宇宙を語る」の日本語版英語版を読んで紹介した。これも日本語版は原書初版にとどまっていて、その後改訂された原書を読んでおきたいと思ったからである。

ところが科学書を日本語で読んでから英語で読むと、上で書いたようなストレスが無くなったのである。2冊目として再読する英語版では日本語版を読んだときに取りこぼしたことや忘れてしまったことのおさらいができるし、何より日本語版で読んでいるから英語も理解しやすくなる。科学への好奇心を満たしつつ、語学学習をすることができるから一石二鳥だ。科学を楽しく語って人に伝えられるようになりたい。それが外国語でもできるようになりたい。これは面白そうだと思った。

同じことはフランス語についても言える。フランス文学を読むより、好きな科学本を読むほうがはるかに楽しい。日本語で読み、次に英語で読んでから、さらにフランス語で読めば、一石三鳥。フランス語でも科学を(理系の)フランス人の友達に楽しく語れるようになる。意味がわからない箇所がでてきたら、英語版か日本語版を開いて確認すれば辞書を引くより効率的に学べる。(辞書を引くのはもちろん大事だ。)同じ本を3回読むことになるから、さすがに記憶に定着する。

日本語で読むよりも英語のほうが精読することになるから、記憶に残りやすい。そしてフランス語になるとさらに精読することになる。読み進めるうちに慣れてきて、文法を意識せず意味が入ってくるようになるのだ。学生時代にしていた英文解釈、仏文解釈のような読み方は自然に消えていく。

そうして初めて3カ国語で読んだのが昨年9月で、いちばん好きな本「光と物質のふしぎな理論―私の量子電磁力学: R.P.ファインマン」だった。紹介記事は日本語版英語版フランス語版のリンクとしてお読みいただける。

この段階で僕の外国語学習法は出来上がった。名付けて「ロゼッタ・ストーン外国語学習法」だ。厳密に言うとロゼッタ・ストーンに書かれているのは3カ国語ではなく、2カ国語(古代エジプト語のヒエログリフ(神聖文字)とデモティック(民衆文字)の2種類の表記法、そして古代ギリシャ語)なので、ロゼッタ・ストーンを持ち出すのは間違いだが、細かいことは気にしないことにした。ロゼッタ・ストーンには同じ文章を2つの言語(古代エジプト語、古代ギリシャ語)、3種類の表記で書かれている。

一般の小説についても、この方法で学べばよいことにも気がついた。英語やフランス語で一般書(特に文学)を読むのはビジネスレベルの語学力があったとしても語彙力、表現力不足になりがちで苦労するものだ。でも、日本語で読んでおけば、すらすらと読めるようになる。完璧に読もうとして、いちいち辞書を引いていたら時間がかかり過ぎて読むのが苦痛になってくる。楽しく読むのが長続きさせるコツだ。

英語やフランス語の本の紹介記事は、外国語が苦手な読者でも参考にしていただけるよう、日本語で書くことにしている。日本語版の紹介記事で書ききれなかったことを英語版、フランス語版の紹介記事で補足してもよいわけだし、日本語版では気づかなかったこと、外国語学習という視点からみたときに感じたことを書くのでもよいだろう。紹介する動画や関連情報は、それぞれ英語、フランス語のものを取り上げることにする。


ところでネット検索するとわかるのだが、「ロゼッタストーン(Rosetta Stone) - 言語学習プログラム」というのが見つかる。24言語を同じメソッドで学べるユニークな語学プログラムである。これは、僕の「ロゼッタ・ストーン外国語学習法」とはまったく関係ない。

今後、僕のロゼッタ・ストーン外国語学習の進捗は「記事一覧(洋書:英語書籍、フランス語書籍)」という記事で更新していく。


ロゼッタ・ストーンについて

せっかくだからロゼッタ・ストーンのことも書いておこう。詳細は「ウィキペディアの記事」を読んでいただきたい。この石が作られたのは紀元前196年。プトレマイオス5世によってメンフィスで出された勅令が刻まれた石碑の一部だ。縦114.4cm、横72.3cm、厚さ27.9cm、重量760kg。

1986年にパリで短期留学した際、ロンドンに遊びに行って大英博物館に展示されているロゼッタ・ストーンを見たことがある。当時と今では展示のしかたがまったく違うことを、今回調べて気がついた。次の2枚の写真は1985年と2019年に撮影されたものだ。

1985年:拡大


2019年:拡大


この石には「プトレマイオス」(天文学者ではなく古代エジプト国王のプトレマイオス5世)の名前が書かれているのを知っていたから、身を乗り出して探したら5分くらいで見つけることができた。僕は「クレオパトラ」の名前も書かれているのだと勘違いしていたから、その後もずっと探していたのだが、30分くらいこの石を凝視していたところ、近くにいたガードマンに注意されて探すのをやめたことを思い出した。ヒエログリフだと、それぞれこのように表記するそうだ。



「プトレマイオス」は3か所、それぞれこのような文字で書かれている。

拡大


「プトレマイオス」のヒエログリフと古代ギリシャ語の位置はここに示されている。「クレオパトラ」の文字ははロゼッタ・ストーンではなく、右側の「オベリスク」に書かれていたそうだ。(詳細はウィキペディアの「ロゼッタ・ストーン」に書かれている。)「プトレマイオス」と「クレオパトラ」に共通の文字があることが、ヒエログリフ解読の糸口になった。

拡大


この時代の文書は語と語の間に空白を入れた分かち書きをしていなから読みにくい。そして3段目に書かれている古代ギリシャ語は大文字だけで書くのが普通だった。したがって先日紹介した「アルキメデス写本」も、分かち書きされていない大文字のギリシャ文字で書かれていた。古代ギリシャの数学者「アルキメデス」は、ロゼッタ・ストーンが作られる14年前に亡くなっている。

大英博物館はオンラインで展示物を公開している。ロゼッタ・ストーンの写真は以下の「開く」のリンクで何種類も見ることができる。拡大して「プトレマイオス」を探してみてはいかがだろうか。

開く


次のページのほうがコントラストが強いので、探しやすいかもしれない。画像をクリックするとその部分を拡大することができる。

開く



さて、ロゼッタ・ストーンには何が書かれているのだろうか?ギリシャ語をもとに日本語に翻訳した全文は、以下のページから読むことができる。ひと言でいうと「紀元前196年、内乱と外国の侵入で揺れ動くエジプトの国王に即位したプトレマイオス5世は、税金の恩赦を布告した。」となる。

ロゼッタストーン/日本語訳とその解説
http://www.moonover.jp/bekkan/hiero/index.htm


ロゼッタ・ストーンやこれを解読したシャンポリオンについて詳しく知りたい方には、この本をお勧めしたい。

ロゼッタストーン解読 (新潮文庫)


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2 コメント

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Unknown (Yoshy)
2020-11-24 15:58:43
ご無沙汰しています。とねさんが今更ロゼッタストーンで外国語の勉強?と不思議に思って読んでみたら、日英仏の3カ国語で同じ科学書を読むという趣向だったので、見事だまされました。しかし時間が3倍になるので痛し痒しでしょうね。
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Yoshyさんへ (とね)
2020-11-24 22:19:12
Yoshyさんへ

ロゼッタストーン学習法は有名なメソッドなのですね。僕はこの記事を書くまで知りませんでした。

日英仏で読むと3倍以上時間がかかります。日本語を1とすると英語が2、フランス語が3くらいの時間でしょうか。合計すると6倍ですね。
時間をかけたぶん、記憶に残るというメリットがあるので、それをもって「よし」と考えています。語学の勉強は時間をかければかけるほど身に着きます。
返信する

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