昨日東京都足立区梅田で起きてしまった悲惨な一家心中事件。自営していた工作機械販売業の経営悪化が理由なのだそうだ。家族を殺すことでしか逃れることのできなかったこの貧困という現実。この社会の矛盾を強く印象づけた。
生き残った15歳の息子さんのほうは両手首を切断され、この痛ましい出来事を一生背負ったまま障害者として生き続けなければならない。胸が痛むばかりだ。
僕の関心をひいたのは、報道されていたこのお宅の映像で両隣が空地になっていることだ。足立区のこの地域は町工場が集中している地域。想像するに、一家心中してしまったお宅だけ貧困だったのではなく、両隣に建っていた家の方々も同じような理由でよその土地に移ってしまったのだと思った。
僕は40年以上、中野区南台という渋谷区笹塚に近い「区境に近い住宅地」に住んでいる。最寄りの京王線笹塚駅までは徒歩13分くらいだ。南台から笹塚にかけては住宅地で、駅に近づくにつれて笹塚の商店街がはじまる。笹塚駅からは1駅でJR新宿駅なのでとても便利だ。
ところが最近このあたりでも「空地」や「売地」が目立ってきた。特に中野区から渋谷区へ境を越えたあたりの住宅地で著しい。渋谷区笹塚のほうが土地の値段が高いからだ。家から駅への通勤路だけでも10軒くらいの家がなくなって空地になってしまった。それらは昔からこの土地に住んできた人々の家があったところだ。(そのうちの1軒は僕が昔少しだけ交流のあったご家族の家だ。)貧困や土地の評価額上昇で相続税が払えなくなってしまったのか、少子化で後継ぎがいないからなのかわからないが彼らはこの土地を去り、そこは新しい家が建つでもなく「空地」や「売地」のままである。
昨日の記事で東京23区を再現した仮想空間のことを紹介し、中野区や渋谷区にほとんど家が建っていないのでとても寂しいと書いたが、インターネット上の絵空事ではないのだと思った。20年後、この地域の住宅地に今のように家が建っている保証はないのだと思い、寒々とした気持ちになった。
都内の住宅地の過疎化は、すでに始まっているようだ。街が悲鳴を上げている。
このところネットカフェ難民の話題も報道されなくなってしまったが、彼らがいなくなったというわけでもあるまい。今日も横浜で生活苦から母娘による心中事件がおきた。僕から見えないところで、このような死を選ぼうとしている人が急速に増えてきているように思える。
なんとかしてこうした経済的弱者の人々も安心して住める社会にできないものだろうか。東京オリンピックのために税金を使っている場合ではないと思う。道路を作っている場合ではないと思う。
次の衆議院解散総選挙が待ち遠しい。(都議会の選挙もだが。)
最後にこの足立区梅田のご家族のご冥福をお祈りしたい。
ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。