とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

量子テレポーテーション: 古澤明著

2009年08月31日 11時13分16秒 | テレポーテーション

僕のブログが普通の日記から物理ブログになるきっかけを作ったのが「テレポーテーションの実験成功」というニュースだった。

この「量子テレポーテーション:古澤明著」は、量子テレポーテーションを世界で初めて成功させた東大の古澤明教授による一般向けの解説書である。今月発売されたばかりで僕にとっては待ちに待った本。量子テレポーテーションや量子光学の分野の本は少なかったのでとてもありがたい。さっそく読ませていただいた。

古澤教授がこのような一般向けの本をお書きになったのは高校や大学での物理学履修者の数が減っていることに先生ご自身が危機感を抱いていらっしゃるからであることが「はじめに」を読むとわかる。本書がたくさん売れ、物理好きな人が増えることを僕自身も願ってやまない。

一般向けとは言いつつも量子力学の基礎は事前に理解しておいたほうがよいと思った。この分野をまったくご存知ない方は次のサイトで30分ほど勉強するとよいだろう。

30分でわかる量子力学の世界
http://ryoushi-rikigaku.com/

量子テレポーテーションについてはその原理を説明するサイトがいくつか存在していたが、やはりこの本による説明がいちばん詳しく、そしてしつこいくらいまでにポイントを何度も繰り返して説明されているので、この本に優るものはなかった。

「瞬間移動」といってもそれは移動時間がゼロということではない。せいぜい光と同じ速度で物質を構成する原子(量子)の情報が伝わるという意味である。(それでも十分早い。)テレポーテーションは「量子のもつれ」という現象を利用した、量子のあり方についての情報を光を使って伝える情報伝達技術なのである。それがこの分野が「量子光学」を基礎としているゆえんだ。

本の中に気になる説明があった。光を光子という粒子のように扱うとき「光子には位相というものが無い。」のだそうだ。光子は位相の情報を失った波の状態とするのが正確な説明である。このあたりのことは先日の「入射角と反射角は等しいのだが...(光学)」という記事にコメントをいただいたT_NAKAさんのお考えに近いものであるだけに、もう少し詳しく知りたいと思った。理解のポイントとしては光を多数の光子の「光子流」とみなすと波になり、位相の概念が生まれ、その結果sin成分とcos成分が生まれるということらしい。「光子の波束のからみあい」を利用して光子のテレポーテーションは実現されている。

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2012年10月に追記:本書を再読して、あらためて記事を書いたのでこちらもお読みください。

再読:量子テレポーテーション:古澤明
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3612f0a3b86c8a8a247fe138f473adb3

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より専門的に学んでみたい方は同じ著者の「量子光学と量子情報科学:古澤明著」をお読みになるとよいだろう。(早速僕は注文しておいた。)






量子テレポーテーション:古澤明著」の目次

第1章:位置と運動量の量子テレポーテーション
- 量子テレポーテーション史の簡単な紹介
- 量子情報・量子状態とは
- 量子テレポーテーションの簡単な説明
- 重ね合わせの状態と波束の収縮
- 量子エンタングルメント(もつれ)
- 量子テレポーテーションの少し突っ込んだ説明

第2章:2つの値しか取らない量子テレポーテーション
- 2分の1スピンの量子エンタングルメント
- 2分の1スピンの量子テレポーテーション
- 光子の偏光を用いた2分の1スピンの量子テレポーテーションの実験

第3章:光を用いた位置と運動量の量子テレポーテーション
- 光の位置と運動量 --- 波束とは
- 光の波束を用いて量子エンタングルド状態をつくる
- 入力波束とエンタングルの片割れ
- 光の波束を用いた位置と運動量の量子テレポーテーションの仕上げ
- 筆者の行った光の波束を用いた位置と運動量の量子テレポーテーション実験

第4章:量子テレポーテーションの応用
- 量子コンピュータとしての量子テレポーテーション
- 多者間量子エンタングルメントとその応用

付録A:「式変形」詳細
付録B:参考図書


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関連記事:

古澤明教授のHP
http://www.alice.t.u-tokyo.ac.jp/

テレポーテーションは実現している。(リンク集)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cc0bc7e88d02231138f8b6a9f5859c93
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2 コメント

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物理学が未来を拓く (アマサイ)
2009-09-02 00:38:03
よいURLの紹介ありがとうございます。
私も本書は先月から心待ちにしていたのです。発売日に本屋に行き、何故か隣の棚に会った福江純さんの『ブラックホール宇宙』を買ってしまいました(笑)。図解の綺麗さに目がいってしまい。
古澤さんのお仕事は注目しています。本書も近いうちに購入いたします。
物理学好きは潜在的にいると思いますが、履修率に反映させるのは難しいかもしれない。
返信する
アマサイさんへ (とね)
2009-09-02 09:32:47
コメントありがとうございます。
古澤教授のことについては以前アマサイさんも記事に書かれていましたので読ませていただきました。
他の本を買ってしまったのですね。(笑)この本はブルーバックスの中では内容が難しいほうだと思いました。本質にかかわる一番難しいところは「詳しいことは「量子光学と量子情報科学」を読んでください。」と書かれているのが何箇所かありましたし。注文して届いた専門書のほうは、レベル高すぎでした!(笑)難しそうな本は書店で立ち読みしてから買うべきでした。コレクションにはせず「読む予定の本」の中に加えておきますけど、いつになることやら。。。

あ、そうそう。このブログの右欄のお勧めリンク集にアマサイさんのブログを含めさせていただきましたよ!よろしくお願いします。
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