まったり喫茶

音楽のない喫茶店は
道路沿いの車の音がいい感じ

ほうじ茶を飲みながら

まだ知らない遠い過去を
懐かしむ

たまに会話をぽつぽつと

途切れながら

心地よいレコードのように流れる


音楽のない喫茶店は
通りを歩く人の会話がいい感じ

プリンを一口食べながら

まだ知らない遠い過去を
懐かしむ

モノクロ

月の白、雲の白
風は冷たく

マンションの下で
白い花が揺れていた

きみは、コントラストが強すぎるよ

心の黒は

月の白、雲の白
一層際立たせる

だけどネガを透かせば

心の黒は
反転することを知る

どっちにしてもデジタルの世の中
コントラストも調節できる

きみは、コントラストが強すぎるよ

わたしはアナログのまま

真っ暗な部屋で
フィルター越しに
その緻密な世界を知る

キラキラキラ

私の知っている海は
決して青くはなかった

潮の満ち引きが
大きくて

太陽に照らされると
キラキラと輝いた


私の知っている田舎は
決して美しいものではなかった

だから
いつか出たかった

だけど頭のなかでは
キラキラと輝いた


私の知っている過去は
記憶がどこか飛んじゃって

断片だけが光っていて
だからいつでもどの過去も

キラキラキラと輝いた

猫

夜道を歩いていると
猫がニャーと鳴いていた

人間の方を見ながら
近寄れなくて
路地でぐるぐる回っていた

ひょっこり顔を合わせると
シャーと鋭い顔をした

甘えたくても
甘えられない
甘え方を知らない

どんな境遇してきたの？

さよならしたあと
なんだか無性に泣けてきた

月夜

夜に咲くヒマワリは
月に照らされ

日を追うことをやめました

月はヒマワリを
そっと照らして

ヒマワリの火照りを冷まします

わたしはあの日
あなたを追うことを

夜空を見上げてやめました

好きを突き通すあなたに
憧れの気持ちもありますが

月夜のヒマワリでいたいのです