新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

海水練り海砂セメントだって?

2012年01月09日 | 被災地応援
 と、昨日の記事を投稿したあと、日経の朝刊を見たら、〈ゼネコン、東北に重点配備 復興需要17兆円〉と伝えていた。

 目を引いたのは、「大林組が海水を使っても劣化しないセメントを開発、沿岸部のコンクリート構造物に活用する」という記述である。

 海水をセメント練りに用いる、だって? 若い頃、建築現場・解体現場を渡り歩いた元バイトくんの常識は(むろん聞きかじりの半可通だが)、もう過去のものらしい。

 淡水化だろうかと思って大林組のホームページをのぞくと、むしろ逆で、海水由来の岩塩層の堅牢性に注目したのだそうだ。「地産・地消の海水練り・海砂セメント」とは、モノは言いようだね。これぞブラック・テキスト芸のお手本である。

 もちろん、素人の私でも知る海砂セメントのリスクを、技術者が知らないわけがない。心配したコンクリート劣化は、エポキシ樹脂塗装鉄筋や炭素繊維ロッドを用いることで食い止めることができるという。さすがスカイツリーを事実上単独で受注・施工する大林組だけはある。技術力には定評がある。

 しかし、建造物のライフサイクルコストのうち、初期費用である建造費は2割いくかどうか。残り8割以上は維持費・補修費・解体費であり、そのコストは時に建造費の10倍にもなる。建造物はメンテナンスフリーというわけにはいかないのだ。

 これはゼネコンでは新人研修レベルの基礎知識らしいが、かえりみられることは少ないのではないか。この日経の記者のように、技術に無知で、プレスリリース丸写しの手抜き欠陥提灯記事は後を絶たない。

 建設費用がいくらコストダウンしたからといって、結局メンテナンス費用がかさんでしまったら、何の意味もない。海砂セメントを、塩害がハードな沿岸部の建造物に利用するのなら、さらなる防食対策が必要ではないのか。たとえば、電流を流して鉄筋の錆びを防ぐ電気防食。海洋につくられる鋼構造物などでは比較的古くから用いられ、米国では多くの実施例があるという。しかし日本ではあまり聞かない。

 と、これは私の知見ではない。ソースは元準ゼネコンの人が書いた記事。
http://www.geocities.jp/fghi6789/kensetsu.html#ijihoshuugijutsu

 すべては読みきれていないけれど、原発不要論、9・11陰謀論批判、週刊金曜日の検証など、とても面白く勉強になる。

☆ある作家のホームページ
http://www.geocities.jp/fghi6789/index.html


 追記。

 この海水練り海砂セメントが、放射性廃棄物処分場の需要を見越したものであることにも、注意を喚起する必要があるだろう。以下は大林組プレスリリースより。

 <特に、この緻密性(※1)に関しては、岩塩に匹敵するもので、米国における放射性廃棄物処分場(例:ニューメキシコ州カールスバッドにおける廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP(※2):1983~1985年、大林組施工))が岩塩層(※3)に建設されることに着目し、岩塩層が存在しない日本の放射性廃棄物処分場に対しても、本コンクリートの適用を今後検討していきます。>

(※1)緻密性:一般には透水係数で表すことが多く、岩塩層はデータにもよりますが、1×10-11~1×10-14m/secです。これに対し、「海水練り・海砂コンクリート」は1×10-13m/secです。
(※2)WIPP:核廃棄物隔離試験施設(Waste Isolation Pilot Plant)のことです。
(※3)岩塩層:海底の隆起と沈下により海水が陸地に閉じ込められ、長い時を経て水分が蒸発し濃縮され、何百万年~何億年もかけて堆積されたものです。岩塩層の起源は海水です。


http://www.nikken-times.co.jp/release/1/1301695801/



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