新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

ゴッホ・アライブ展をみて

2023年06月07日 | アート/ミュージアム


「ぁ、美かえるさんだ…! 兵庫県立美術館のシンボルなんだよ…!」

天使のミカエルかー。前に来たときは、あのカエルはいなかったなあ。
よく考えたら、お父さんが兵庫県立美術館に来たのは、もう12年も前だ。
あのときは研修中の新人を連れて来たんだ。

「研修で展覧会に行けるなんて、いい会社だね…」

むかしは、会社にも余裕があったからねえ。今は目先の仕事優先で、厳しいけれど、若い人に本物に触れてもらう、ゆとりを失ってはいけないね。



……というわけで、6月3日、摩耶山に登った帰りは、兵庫県立美術館の『ゴッホ・ア・ライブ』展へ出かけてきました。ゴッホの作品をデジタル処理して、映像と音楽で楽しむという体験型の展覧会です。
会期は翌日4日まででした。



これは当日券を求める人たちの待機列。
れんちゃん、われわれは予約しといてよかったね。




と、思ったら……
チケットがあっても、入場規制です。仕方ないですね。

まさかこんなに混んでいるとは思いませんでした。
兵庫県立美術館は、すごく空いていたイメージがあったのですね。
しかし前回は平日だったこと、そしてゴッホと比べたら人気や知名度では劣る、ロシア・アバンギャルドのカンディンスキーの展覧会だったことを、完全に失念していました(デザインの研修と称していましたが、あれは完全に私の趣味でした)。

新人のうち一人は、大阪生まれの大阪育ちでしたが、家庭の事情で、家族旅行にも修学旅行にも行ったことがなかったのだとか。

「ここ、兵庫県ですか? すげー! おれ、初めて大阪の外に出ました!」

と、大喜びしていたのが、「マジかよ?」と記憶に残っています。そんなこともあるのですね。努力家で、仕事もよくでき、将来に期待していたのですが、残念ながら今は別の道を歩んでいます。

兵庫県立美術館は、最近毎週通っている摩耶山の青谷道登山口から、坂道をまっすぐ降りるだけのロケーションにあります。途中に神戸市立文学館、横尾忠則現代美術館などがあり、この道は「ミュージアムロード」と名づけられています。
所在地は、神戸市灘区。播磨灘、枯木灘の「灘」で、目の前が海です。今日は神戸らしく、山と海、自然とアート、ついでにグルメ、一日で五度おいしいプランのはずだったのですが…。



30分くらい並んで、入口へ到達。
人気の展覧会では1時間待ちはごく普通で、短いほうかもしれません。
しかし、コインロッカーの場所がわからず、リュックを背負ったままでしたから、しんどかったです。

ようやく会場に入ると……。



壁面に、ゴッホの素描と、ゴッホのことばが展示されていました。
カタログに載っているからいいか、と思ってスルーしたのですが、カタログは売り切れでした。残念。
こんな会期終了前日でなく、もっと早くに来るべきでした(最初はそのつもりだったのですが)。



ゴッホの部屋が再現されていました。
撮影OKのところがすごくよかったです。
れんちゃんもうれしそうです。



展示会場に入りました。
会場の四方の壁面全面に、ゴッホの作品が投影されます。



これは「カラスのいる麦畑」ですね。
ゴッホ最晩年の作品です。カラスが象徴するのは、迫りくる死の恐怖でしょうか。しかし空は限りなく青く、燃えるような麦畑は、いのちの喜び、荒々しさを伝えます。絶望も希望もないまぜになった傑作です。
カラスが麦畑から一斉に飛び立つ場面に、アニメーション効果が施されていました。
こういう絵の楽しみ方もありますね。





これはゴッホの自画像オンパレード。
こうやって連続していろいろな作品を連続して鑑賞できるのも、映像作品の強みですね。私の記憶では、ゴッホが画家として活動したのはわずか2年でしたが、そのたった2年で、これだけ画風・作風が激変しているのがよくわかりました。

ん…? れんちゃん、おねむ?

「ぇ…? ごめん、私、眠そうにしてた…?」

謝ることないよ。今日も5時起きで、朝から山登りだったもんね…。
今日はメイン3ルートではいちばん距離が長い天狗道で、お父さんも疲れたよ。お風呂入って、ビール飲んで、きょうは早く寝たいなあ。





「お父さん、ごめん…。私、この人混みに、疲れちゃったかも…」

謝るのはお父さんのほうです。

ちゃんと事前に下調べしておくべきでした。

この映像作品は40分で1サイクルなんだそうです。
そうならそうと、会場でアナウンスしてくれたらよかったのですが。
それで座って観ている人たちがいたんですね。

ただ、それを知っていたとしても、登山の後で疲れていて、感染症も心配ですから、あの人混みの中には入る気がしませんでした。

ここからは反省。

れんちゃんに、このゴッホ展を、心身ともにベストな状態で、心ゆくまで見せてあげたかったなあ。

チケットを予約した3月時点では、病院の検査のために有給休暇を取得した4月28日の午後に来るつもりでした。
あのころは、まだハイキングも始めたばかりで、まさか自分がこんなに山歩きにハマるとは思いもよらなかったのですよ。
結局、あの日は昼から摩耶山に登ったのでした。
帰りに美術館に寄れるかも、という淡い期待もあったのですが、昼からの入山では、ちょっと無理でした。
その頃には、新型コロナワクチン接種の案内が届いていたので(基礎疾患持ちですから)、午後休を取得して接種の帰りに行けばいいやと思ったのです。

しかし、接種の予約が面倒で、先延ばしするうちに、結局、予約がとれたのは会期終了後の6月14日。

というわけで、後手後手で、終了間際の訪問になってしまったわけです。

ここまで人気とは予想がつかなかったとはいえ、やはり平日に来たかったし、来るべきでした。



れんちゃん、たくさんのひまわりを見て、元気が出た?

しかし、このライブ展示会の試み自体はおもしろいですね。

原画の展示には、輸送時の破損、展示会場での火災や自然災害などのリスクがあり、保険金も膨大なものになります。

 『The America』の写真家ロバート・フランクの作品は、1点につき100万ドルくらいだったはず。ゴッホとなると、気の遠くなるような値段になるのではないでしょうか。

しかしこう美術品の保険金が高騰化してしまうと、展覧会もおいそれと開けないし、開催できてもチケットが高額になりすぎて、若者が観に行くことができません。このことを憂えたロバート・フランクは、シュタイデル社とのコラボした展覧会で、作品をインクジェットで新聞紙に出力して展示していました。場内は撮影自由。そのかわり、インクジェットの展示物は、展示会終了後に流出してプレミアがつかないように、一切合切燃やしてしまうという、思い切りのいい大胆な展覧会でした。私は労組の仕事にかこつけて、東京芸大の会場に観に行ったのですが、あのロバート・フランク展も神戸が皮切りではなかったでしょうか。

この『ゴッホ・アライブ』のように、原画の展示を伴わない、デジタル技術を駆使した展覧会は、今後も増えて、主流になっていくのでしょう。

私はあくまで原画を見たいタイプですが、コレクターでも研究者でもない限り、原画を心ゆくまでじっくり観ることは、かなわない希望です。

だからこういう企画はありだと思いますが、残念なのは、いくらなんでも人が多すぎたこと。座るスペースも探すのはむずかしかったし、立ち見も立錐の余地もない、という感じでした。

アニメ関連のイベントですが、『まどマギ』の制作会社シャフトの40周年展は、チケットは日付・時間指定の予約制でした。この展覧会も1〜2時間サイクルで、時間制限をかけたらよかったのに、と思います。もっとも、シャフト展は、4000円か5000円したはずで、同じ方式を採用したら、このゴッホ展も、2500円では済まなかったかもしれません。しかし多少値上がりしても、ゆっくりゴッホの絵を観たかったなあと思います。



れんちゃん、じゃ、帰ろうか。
地域猫のくろちゃんがごはんを待っているからね。
出口は山側だね。神戸の街は、「山手」「浜手」ではっきりしているから、道がわかりやすいよね。

れんちゃんは、きょうは阪神の「岩屋駅」から帰りたい気分?
じゃ、阪神で帰ろうか。梅田でミックスジュースを飲んで帰ろう。



……って、結局、王子公園駅から、阪急で帰るの?
阪神電車も大好きだけれど、摩耶山に来たときは、王子公園駅か春日野道駅で帰るのが、お約束なの?
お父さんに似たのか、れんちゃんも変なマイルールがあるんだねえ。いつか六甲駅から帰ってみようよ。銭湯があるんだって。あ、銭湯なら今日の洋食屋さんのすぐ近くにもあったね。

来週もまた摩耶山に登ろうね。



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