お盆を挟んで一週間、壮介の夏休みに入った。
この一週間は親子三人で一緒に食事をとることが多い。
昼食中に亮太の携帯がいつものように鳴りだした。
「何だって昼食時に何度も掛けてくるんだ。
急用でなければ返信するな。」
父親に注意された亮太は携帯の画面を見ながら、不満そうな顔をしながらも頷いている。
「亮太、勉強の方はどうだ。捗っているか。
焦らないでいいからボチボチやれよ。」
「うん。」
父親に対する亮太の態度は、自分に対する態度よりずっと素直だと百合子は思う。
その日の夕食は外ですることになった。
しかし亮太は行かないという。
親と一緒のところを友達に見られるのは、この年頃の男の子にとっては恥ずかしいことなのだろうか。
「一緒に行かなければ、何も食べるものがないわよ。」
「コンビニの弁当を買ってくるからいいよ。」
「せっかくみんなでレストランへ行こうと思っているのに、亮太が来ないんじゃ、行く意味がないじゃないか。」
壮介が亮太を無理やりに連れ出した。
レストランでは奮発して、ビーフステーキコースを注文した。
ふくれっ面をしているかと思った亮太は、意外に機嫌の良い顔をしてナイフとフォークを動かしている。
壮介もそんな雰囲気に気を良くして、
「明日みんなで、和歌山の実家の墓参りに行こうか。
あの近くの海水浴場で久しぶりに泳いでみたくなったなあ。」
と誘った。
「ああ、あそこだね。小学生の頃、父さんに毎年泳ぎに連れて行ってもらったのを覚えているよ。
お爺ちゃんもお婆ちゃんも一緒だったね。」
「そうだなあ。あの頃はまだ親父もおふくろも元気だった。」
昔を思い出すかのように、壮介は遠いところに虚ろな目をやっている。
それから三人はその頃の思い出話を和やかにしていた。
「亮太が墓参りに行ったら、お爺ちゃんもお婆ちゃんもきっと喜ぶと思うわ。」
「悪いけど、僕はパスする。」
「そうか、亮太は今それどころではないか。」
壮介は無理強いはしなかった。
墓参りは拒否したが、今夜は久し振りに楽しそうにしている息子の顔を見て、百合子自身も心からこの時間を楽しむことが出来た。
しかし翌日からは以前と同様、殆ど口を利かなくなっていた。
壮介の夏休みも終わり、また通常の生活が戻ってきた。
庭の樫の木でツクツクボウシが忙しく鳴き出し、西の山に日が早く落ちるようになった。
秋が駆け足でやって来る気配がする。
亮太はあと二週間足らずで二学期が始まる。
お盆を過ぎた頃から、慌てて勉強をやりだした。
もう携帯を頻繁に打つ暇もないようだ。
百合子は亮太の夏休み中、彼に携帯を注意した手前、自分がパソコンに長時間向かうわけにもいかずセーブしていた。
そして出来た暇を手芸の刺しゅうに向けていたが、この前、夫がボーナスや給料が減ると言ったことが気になっていた。
秋になれば、パートの仕事にでも出ようかと考え始めた。
この一週間は親子三人で一緒に食事をとることが多い。
昼食中に亮太の携帯がいつものように鳴りだした。
「何だって昼食時に何度も掛けてくるんだ。
急用でなければ返信するな。」
父親に注意された亮太は携帯の画面を見ながら、不満そうな顔をしながらも頷いている。
「亮太、勉強の方はどうだ。捗っているか。
焦らないでいいからボチボチやれよ。」
「うん。」
父親に対する亮太の態度は、自分に対する態度よりずっと素直だと百合子は思う。
その日の夕食は外ですることになった。
しかし亮太は行かないという。
親と一緒のところを友達に見られるのは、この年頃の男の子にとっては恥ずかしいことなのだろうか。
「一緒に行かなければ、何も食べるものがないわよ。」
「コンビニの弁当を買ってくるからいいよ。」
「せっかくみんなでレストランへ行こうと思っているのに、亮太が来ないんじゃ、行く意味がないじゃないか。」
壮介が亮太を無理やりに連れ出した。
レストランでは奮発して、ビーフステーキコースを注文した。
ふくれっ面をしているかと思った亮太は、意外に機嫌の良い顔をしてナイフとフォークを動かしている。
壮介もそんな雰囲気に気を良くして、
「明日みんなで、和歌山の実家の墓参りに行こうか。
あの近くの海水浴場で久しぶりに泳いでみたくなったなあ。」
と誘った。
「ああ、あそこだね。小学生の頃、父さんに毎年泳ぎに連れて行ってもらったのを覚えているよ。
お爺ちゃんもお婆ちゃんも一緒だったね。」
「そうだなあ。あの頃はまだ親父もおふくろも元気だった。」
昔を思い出すかのように、壮介は遠いところに虚ろな目をやっている。
それから三人はその頃の思い出話を和やかにしていた。
「亮太が墓参りに行ったら、お爺ちゃんもお婆ちゃんもきっと喜ぶと思うわ。」
「悪いけど、僕はパスする。」
「そうか、亮太は今それどころではないか。」
壮介は無理強いはしなかった。
墓参りは拒否したが、今夜は久し振りに楽しそうにしている息子の顔を見て、百合子自身も心からこの時間を楽しむことが出来た。
しかし翌日からは以前と同様、殆ど口を利かなくなっていた。
壮介の夏休みも終わり、また通常の生活が戻ってきた。
庭の樫の木でツクツクボウシが忙しく鳴き出し、西の山に日が早く落ちるようになった。
秋が駆け足でやって来る気配がする。
亮太はあと二週間足らずで二学期が始まる。
お盆を過ぎた頃から、慌てて勉強をやりだした。
もう携帯を頻繁に打つ暇もないようだ。
百合子は亮太の夏休み中、彼に携帯を注意した手前、自分がパソコンに長時間向かうわけにもいかずセーブしていた。
そして出来た暇を手芸の刺しゅうに向けていたが、この前、夫がボーナスや給料が減ると言ったことが気になっていた。
秋になれば、パートの仕事にでも出ようかと考え始めた。
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