姜 尚中 「在日」
在日2世として生まれた著者の自叙伝。
これまで生きてきた中で出会い、姜氏の人生を方向づけることになった人々の生きざまを描き出しながら進んでいく。
熊本の朝鮮人集落の中で生まれ、底辺で生きる人々の悲哀に満ちた暮らしを目の当たりにし、貧しくて弱い朝鮮人であるという自己認識を持つ。
文盲であった母の情緒不安定気味な行動や、おじさんとの触れ合いを、貧しい中でも何か温かみのある思い出として語っている。
青年期に、もう一人の伯父さんに成功者としての朝鮮人のイメージを持つ。この実の伯父は日本の大学を出、戦時中は憲兵であったという。
日本で結婚もしていながら、戦後韓国に帰還し、弁護士として成功を収めている。時代に翻弄され、孤独な最後を迎えることになる伯父ではあるが、在日として自己矛盾を抱えながら生きた例として、氏に少なからぬ影響を及ぼしているようだ。
韓国の軍事政権に対する抗議行動を日本で行う。韓文研という組織に属し、祖国の活動の後衛として活動することに自らのアイデンティティを見出そうとする。
金大中氏の誘拐事件・キンキロウ事件・同じ在日2世の自殺。日本が経済成長し豊かさをわがものとする半面、在日たちの暮らしは常に闇を抱えたままであった。在日をどう生きるか、その手掛かりをマックスウェーバーの宗教社会学に求め、学究の徒となる。
ドイツ留学時にギリシャ移民の子としてドイツに暮らす学生と交流を深める。ドイツの中のトルコ人やギリシャ人、またはユダヤ人といったマイノリティである人々のあり方に在日を重ね合わせる。
日本に戻り、在日朝鮮人の指紋押捺反対運動の先陣を切る。その中で支援活動をする牧師と出合い、
洗礼を受けるきっかけにもなる。
「何にでも時がある」と教えられた言葉が印象的だ。
その後は、大学の講師や助教授を務めつつ、著作やメディアを通じて持論を展開する。日朝関係やイスラム主義への共感など、ナショナリストから煙たがられる論客ではあるが、そこにはマイノリティとして生きる「在日」の視点があり、グローバル化した現代、さまざまな民族問題を避けて通れない日本に必要な視点を提供している。
現東京大学大学院教授。
在日2世として生まれた著者の自叙伝。
これまで生きてきた中で出会い、姜氏の人生を方向づけることになった人々の生きざまを描き出しながら進んでいく。
熊本の朝鮮人集落の中で生まれ、底辺で生きる人々の悲哀に満ちた暮らしを目の当たりにし、貧しくて弱い朝鮮人であるという自己認識を持つ。
文盲であった母の情緒不安定気味な行動や、おじさんとの触れ合いを、貧しい中でも何か温かみのある思い出として語っている。
青年期に、もう一人の伯父さんに成功者としての朝鮮人のイメージを持つ。この実の伯父は日本の大学を出、戦時中は憲兵であったという。
日本で結婚もしていながら、戦後韓国に帰還し、弁護士として成功を収めている。時代に翻弄され、孤独な最後を迎えることになる伯父ではあるが、在日として自己矛盾を抱えながら生きた例として、氏に少なからぬ影響を及ぼしているようだ。
韓国の軍事政権に対する抗議行動を日本で行う。韓文研という組織に属し、祖国の活動の後衛として活動することに自らのアイデンティティを見出そうとする。
金大中氏の誘拐事件・キンキロウ事件・同じ在日2世の自殺。日本が経済成長し豊かさをわがものとする半面、在日たちの暮らしは常に闇を抱えたままであった。在日をどう生きるか、その手掛かりをマックスウェーバーの宗教社会学に求め、学究の徒となる。
ドイツ留学時にギリシャ移民の子としてドイツに暮らす学生と交流を深める。ドイツの中のトルコ人やギリシャ人、またはユダヤ人といったマイノリティである人々のあり方に在日を重ね合わせる。
日本に戻り、在日朝鮮人の指紋押捺反対運動の先陣を切る。その中で支援活動をする牧師と出合い、
洗礼を受けるきっかけにもなる。
「何にでも時がある」と教えられた言葉が印象的だ。
その後は、大学の講師や助教授を務めつつ、著作やメディアを通じて持論を展開する。日朝関係やイスラム主義への共感など、ナショナリストから煙たがられる論客ではあるが、そこにはマイノリティとして生きる「在日」の視点があり、グローバル化した現代、さまざまな民族問題を避けて通れない日本に必要な視点を提供している。
現東京大学大学院教授。