学長のひやかし

本(もと)はみな たれもの晒しの白木綿 
染めつよこれつ 末はいろいろ

しおさいのひととき

2005年12月07日 | travel



しおさい7号 東京駅


 
 しおさい7号のお客さんになる。

 回数券とはいえ、普通乗車券、特急券で特急列車に乗るのは実に子供料金以来であるかもしれない。「しおさい」に乗るのは実は初めてで、別にお名残乗車というわけではない。使っている特急車両の中身がもと「あすさ」や「あさま」号で使われていたいわゆるグレートアップ車(両端を除く)には学生時代に多くの思い出があり、少々くたびれているとはいえ現在JRで走っている安物特急とは比べ物にならないほどの居住性を誇る。今後も団体専用や一部臨時列車として残存するものもあるが、本物の特急として最後かもしれない活躍を体感するために成東まで乗ることにした。

 この日のしおさい7号は元あさまの車両が中心の編成で、気分は乗ったときから信州だ。考えてみれば総武地下ホームから特急に乗るのは成田エクスプレスのない「わかしお」、「さざなみ」が発着してきた頃で今から十年以上も前のことかもしれない。駅に着いた頃にはすでに入線済みで車内清掃中だった。各ドア口には数人並んでいるが、最終日が近い特急にしては寂しい数。普段からこの時間はこんなに空いているのだろうか。とりあえず7号車に陣取り、記念撮影をする。マニアさんもそんなにいない。一通り両方向撮影をし、席に戻るとなんと近くの席に小さな子供をつれた母親がいるではないですか。その人達に罪はないが、料金を余計に払っているのに騒音に悩まされるのは今日は勘弁してもらいたい。仕方なしに後ろの車両に移動する。しかし今度は換気扇の音が気になる。車内の雰囲気からどうやら元喫煙者のようだ。心の中で悩んだが、結局もう一つ後ろの車両にした。




元あさま(その後あずさで活躍し千葉へ)の車内。ドアが黄色いと元あずさ。



 今度こそ腰を落ち着けて、いよいよ発車。いくつになっても心ときめく時間である。各車両30パーセントの乗車率だろうか、それにしても銚子方面に向かう際だと座席と窓の位置が微妙にずれ少々歯がゆい気がする。リクライニングすると目線が窓の仕切りの部分にいってしまいわずらわしい。空いているので、贅沢に1人4席を確保し窓を独り占めする。そっけない電子音のメロディーの後に簡単な放送、詳しい案内は錦糸町を出てからとのこと。最初のうちは足慣らし程度の走りで地下区間を走る。普通の総武快速線から見る風景とはまた違ったように感じる。(といっても語るほど乗っていないのだが・・・)程なくして錦糸町に到着。飛び込み客が数人いる程度で車内の閑散ぶりには変化がない。錦糸町を出ればいよいよ本領発揮だ。とても引退間近とは思えないほどの良い走りで、通いなれた第3の地千葉方面へと走る。午後のひと時まさにまったりという言葉がふさわしい車内雰囲気だ。

 あっという間に千葉に到着。ここでは多少の入れ替えがあるが、増えることはない。改札担当の車掌さんはこまめに車内を廻り検札に精を出す。後で分かったことだが、この総武特急では減人方式を取っているようで、乗車率に比例し銚子方面に向かうに連れ車掌の数が減っていくという形をとっているようだ。なるほど、うまくできているものである。千葉から総武本線の先に行くのもかなり久しぶりで、景色が新鮮に写る。列車は沿線の随一の有名撮影地という物井~佐倉間(通称モノサク)に差し掛かる。絶好の冬晴れで、平日にもかかわらず多くのマニアさんが撮影していらっしゃる。きっと週末や9日の最終日にはすごいことになるんでしょうな。



車窓より


 さて、列車はまもなく佐倉に着く。佐倉で少ないながらも半分近くが降りる。おそらくしおさいの役目はここまでで、あとはお客さんも減る一方だろう。佐倉では千葉から乗ったらしき女子高生が降りたのが印象的だった。いまや新幹線でも通勤通学する時代、もはやそんな光景も驚かなくなった。列車は右に大きく曲がり、単線となった総武本線を進む。千葉を過ぎてから通過駅では高校生がちらほら目に付くが、今日は特急に乗っているのでおバカな子供を見なくてすむ。単線なので、先ほどのようなスピード感は味わえないが、その分のんびりとした景色が楽しめる。この大きな窓からよく信州の山々を見たのがついこの間のようだ。あの時は若かったと爺臭いことを思って見る。それはそうと、途中八街だっただろうかこんなところでも大きなベイシアがあるのには驚いた。しかもベイシア電器なる電気屋も。なんとも多角経営ですなベイシアは。

 さて、約1時間の小さな旅もいよいよ終焉に近づき成東へ到着。
東金線と交わり、特急も停車するそこそこ大きな駅だがあたりは野っぱらに囲まれたのどかなところである。はるかかなたには成田空港から飛び立った飛行機が見える。千葉方面の普通電車との交換待ちのためで、少々停車するようでゆっくりと記念撮影ができた。もっと賑わっているのかと思いきや、同じようなお名残乗車の方も含め5人程度だったので特に混乱や殺伐とすることもなかった。列車は夕暮れ間近の強い日差しを浴びてなんともいい味を出している。そしていよいよは発車時間となり、再び銚子方面へと走り出していった。




成東駅全景 





しおさい7号 成東駅 


 出だしは少々ばたついたものの、非常に有意義な時間を過ごせたと思う。懐古主義の私としては、年々お世話になった古い電車が減っていくのは残念だが、後進に道を譲ってこそ未来があるというもの、後は思い出として大事に心に閉まっておきたいものである。