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「実さえ花さえ」朝井まかて 感想

2019-06-24 | 小説・漫画他

朝井まかてさんの本は、これが初読み。
普段滅多に歴史小説を読まないので、読めるか不安だったのですが、とても面白かったです。
さっそく朝井さんの他の本にもトライしてみよう!と思いました。4つ★半

舞台は江戸時代。
読み終わってから知ったのですが、江戸時代の園芸は世界最高レベルだったのですね。
全然知らなかったです。

あと、なじみのある都内の場所の江戸時代の様子とか、庶民の暮らしぶりとか、とても興味深かったです。

種苗屋を営む、おりんと、新次という若夫婦が主人公です。
夫婦仲も良く、仕事も順調です。
そこに雀というあだ名のつく小さな男の子を預かることになります。

かつて、新次には、理世という江戸でトップの種苗屋の霧島屋の娘(優秀な花師で、新次の師匠的な存在)と、かなり親しかったのですが、身分の違いやらなにやらで、結局結ばれなかった過去がありました。

★以下ネタバレ★
久しぶりに会った二人は、結局一晩だけの関係を結びます。
理世は、これで思いを遂げたから、サッパリと、もう二度と会わずに新たな人生を歩みだすんですね。
なんか、理世の人生を思うと、可哀そうだなあ・・・。
この事は、新次、おりんにはバレない様に、一生隠しとおしてほしいですね。
後の方で、理世は京都の方で活動していることが解ります。

理世はとても気配りの効く女性で、新次が春の庭だけを担当した後、植えた希少機種の木を、抜かれ捨てられずに戻せるように手配してあげる為に、夏の庭担当を請け負っていました。あと後にソメイヨシノになる、門外不出の桜の木を送っていました。その桜を、最後の章で、花魁の吉野の花魁道中の時に使ったのですが、舞い散る桜吹雪シーンが、とても美しかったです。 でも、3年の奉公もあとわずかで終わるという頃、吉原の大火で亡くなってしまうんですよね・・・。
この小説のラストは、老年になった雀。松平家にお世話になった後(きっと)、梅ちゃんと結婚し、立派な先生になり、趣味で草花観察に熱中する良い人生を送られているようでした。良かったー。

松平家 (奥州白河出身福島)との不思議な縁も感じさせられましたね。雀のお母さんの再婚相手の男性(幼少期の病気で口が不自由な)が幼少時代お世話になっていました。
以上

それにしても、朝井さん、この本がデビュー作だったというから、驚きです。すごい!

ただ、新次がものすごい美男だったり、辰之助も超美男、っていうのがなあ・・。
勝手な私の希望だけど、新次は、そこまでの美男でなくても良かったんじゃないかなあ・・と思ったり(余計なお世話ですいません)

本を読みながら、沢山の植物の名前が登場します。
知らない名前の木も多かったのですが、読み終えてから検索してみて、誰もが見た事がある、あの木ね?あの花なのね?と解って。そもそも本の表紙に描かれていた植物だったとは(恥)
読んだ後、登場した花についても調べてみました。

紫式部っていう紫の実がなる木や、高価な値段で取引された「唐橘」カラタチバナって、普通によく見る庭木たちだったのね
あと、「らうざ」っていう花は、江戸時代に薔薇の事を言ったらしいのだけれど、どの種類のバラだったのかなー

染井吉野の桜
人によって作られた、咲いて散る為だけに一生懸命な木、病気に弱い。自然からかけ離れた異形の桜。ウィキで、江戸時代の末期に江戸の染井村(現在の東京都豊島区駒込)の植木屋が売り出したと伝えられています。とのことで、駒込が染井村って場所だったことも今回初めて知りました!

私が一般的に日本で桜と言われているソメイヨシノを見たのは、関東に来てからで、すでに大人になっていました。
それまでは、ずっと北海道にいたので、桜といえば、葉っぱとピンクの花が混在したやつしか見たことがなかったのです。
(北海道の殆どと、沖縄には、ソメイヨシノが生息していません)
なので、最初にソメイヨシノの桜を見た時に、みんなが桜、桜と騒ぐわけが初めて解りました。本当に綺麗ですよね。大好きです。

実さえ花さえ 2008/10/21 朝井 まかて
文庫本にする際にタイトル変え「花競べ 向嶋なずな屋繁盛記」になったそうですが、元のタイトルの方が好き。

あらすじ 内容
江戸・向嶋で種苗屋を営む若夫婦、新次とおりんは、人の心を和ませる草木に丹精をこらす日々を送っている。二枚目だが色事が苦手な新次と、恋よりも稽古事に打ち込んで生きてきたおりんに、愛の試練が待ち受ける。第3回小説現代長編新人賞奨励賞受賞作。
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8 コメント

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朝井さん (Todo23)
2019-06-24 16:36:58
大好きな時代小説の作家さんです。
初期は植木屋さんとか植物関係の仕事が出て来るのが特徴的でした。
最近は色々幅を広げてこられましたね。
凄く平均点の高い作家さんです。
樋口一葉の師・中島歌子を描いた『恋歌』や大坂の炭問屋の主・木津屋吉兵衛を主人公にした『悪玉伝』なども良い歴史小説ですが、ちょっと変わったところで、官軍への引き渡たし前夜の大奥に残った5人の女たちを描いた『残り者』や民話をベースにしたファンタジー『雲上雲下』も素晴らしいですよ
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Todo23さん☆ (latifa)
2019-06-24 19:58:42
こんにちは、Todo23さん
実は、今朝Todo23さんちにお邪魔して、記事検索していたんです。
でも、だいぶ前にお読みになられていたのかな・・・
この本の感想が無かったので、黙って立ち去っていたのでした。

そうなんですね、初期は植木屋さんや植物関係が多かったのですか。
朝井さんの本、まだこれがお初ですが、とても気に入ったので、もっと読みたくなっちゃいました。

彼女の作品、沢山教えて下さって、ありがとうございます!
とりあえず、既に「先生のお庭番」と「恋歌」はリクエスト入れちゃったので、その後読む本を選ぶ時に、参考にさせてもらいますね
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Unknown (水無月・R)
2019-06-24 21:31:28
latifaさん、こんばんは(^^)。
朝井まかてさんは、私もとても好きな作家さんです。
きちんと取材されたうえで、登場人物たちの造形も深く、凛とした美しさのある物語を描かれています。
本作がデビュー作という、とんでもない力があり、しかも進化し続けていると思います。
江戸の人々の日常、心意気が鮮やかに描かれた、素晴らしい作品でした。

じゅずじさんのおススメに加えて、ちょっとだけ私のおススメも(^^♪
『すかたん』は、大阪商家のテンンポの良さと美味しそうなお総菜の描写が素晴らしいですよ。お腹が空きます(笑)。

https://mina-r.at.webry.info/201304/article_2.html
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読んでますよ (Todo23)
2019-06-25 15:32:21
この『実さえ花さえ』は文庫化にあたり『花競べ 向嶋なずな屋繁盛記』と改題されてます。私の読んだのは文庫版なのです。

http://todo23.g1.xrea.com/book/param.html?ttl=花競べ 向嶋なずな屋繁盛記&auth=&gnr=&evl=


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水無月・Rさん☆ (latifa)
2019-06-25 17:15:34
水無月・Rさん、こんにちは
そうそう、凄く下調べを、しっかりされて書かれているなあ・・・と思いました。

普段私は滅多に歴史小説を読まないので、殆どすべてにおいて、へー!って知らなかった事が沢山あって、とても興味深く、楽しく読ませてもらいました。

水無月・Rさんのおすすめ、次に読む時に参考にさせて頂きますね

とりあえず「恋歌」と「先生のお庭番」を既にリクエストしちゃったので、ちょっと後になるかなー^^
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Todo23さん☆ (latifa)
2019-06-25 17:24:25
Todo23さん、教えて下さって、ありがとうございます!
本家本元のHPの感想リストの方にあったのですね。
ブログの方で検索しちゃって、諦めちゃってました。

朝井まかてさんの本、すっごく沢山(もしかして、ほとんど?)読んでいらっしゃるんですね。

ここでTodo23さんの感想について書かせて下さいね。

>中盤にある新次と新次が修業した霧島屋の娘・理世とのシーンは、全体の流れに対し不必要というか、違和感が残り中途半端なシーンだと思います。

ここ。
確かに私も、なんだろう・・・唐突感があって(理世側は理解できたのですが、新次側が) 

ああなるなら、もうちょっと新次側の深層心理とかを先に書いてくれていたらなーと思ったり。

でも、デビュー作で、こんな立派な作品なんですもん、充分素晴らしいと思います
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タイトル (こに)
2024-10-06 14:10:50
文庫のはありきたりな感じがして、私も「実さえ花さえ」のほうが好きです。

この夏、ベランダで育てていた鉢花(宿根草)の多くを枯らしてしまいました。
生き残っているのは丈夫な品種ばかり。
暑すぎるせいと言い訳していますが、新次みたいなセンスがあればなぁ、なんて思います。
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こにさん☆ (latifa)
2024-10-08 09:05:02
こにさん、こんにちは!
お返事遅れてしまって、ごめんなさい。

私も今迄何度となく、鉢のお花や花木を枯らしてしまっています。
ちゃんと水もやってるし、毎日見てるのに、なんでかなあ・・・

何度かトライして、もう諦めたのはハイビスカスとか南国の花木。
家のすぐ迎えのお家は同じ鉢植えのハイビスカスを10数年立派に守っているのに、私の何が悪いのか・・・
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