「もう十分」と自由死を望んだものの息子から反対されている間に、突然事故死した母。
何故母がそんなにも自由死を望んでいたのか?
母の本心を知りたくて、母の友人や繋がりのあった人に朔也は会って行く。
愛情あふれる優しい母と産まれた時からずっと2人きりで生きて来た朔也は、母の死後、孤独と喪失感から立ち直れず、AIで再現された本物そっくりのVF(ヴァーチャル・フィギュア)の母を購入します。
この時代、格差は今よりひどく、朔也たちは貧困層です。
彼は他人に自分の体を貸して命令通りに動く「リアル・アバター」という仕事をしています。
とても引き込まれて、数日読書に没頭させてもらいました。4つ★
メインのテーマは何故母が自由死を望んだのか?という事で、私自身も「自由死」についての処を一番読みたかったのですが、他にも一杯テーマがあって、一番知りたかったそのメインの部分があっさり・・・というか、もっと深く掘り下げて欲しかったと思ってしまいました。
「ある男」の時もそうだったのですが、とても面白く色々考えさせられる部分も多く、読み応えもあるのだけれど、あちこちに散乱しちゃってる感じが・・・・。
★以下ネタバレ★
朔也は悪質なおふざけのメロン購入の仕事を受けた日に、たまたまコンビニでミャンマー人のバイトの女性をかばっており、後にSNSでその時の動画が流れてヒーロー扱いされるようになる。大金の投げ銭をくれた富豪の人気のアバターデザイナーのイフィーに気に入られて、側にいる楽な立場というか仕事?を手に入れる。
密かに朔也が好意を抱いている母の女友達の三好(同居人という関係だがうまく行っていた)は、朔也から誘われて参加したパーティ(といっても3人だけだったが)でイフィーと出会い、結局2人は恋仲になり、朔也は複雑な思いもあるが2人を応援するのでした。
母が「自由死」を望んだ理由は結局ハッキリは解りませんでした。
父親は、母が付き合っていた作家の藤原から最後に教えてもらえました。母は40歳になって子供がどうしても欲しくて、誰とは解らない男性の精子をもらって出産。その時東日本震災でとても親しくなって同居していた同性の女性がいたが、急にいなくなってしまった。
作家の男性とは、愛読者ということで知り合い、朔也が保育園の頃から数年に渡る愛人関係でした。
また、コンビニの店員のティリと会ってみて彼女の日本語力の欠如に気がつき、朔也は彼女を良い日本語学校に通えるように手配し、自らも語学を教える様な仕事に就きたいという気持ちで前向きに進む決意をしているところで終わっています。イフィーと出会ってから、段々母のVFと会話する事が減り、最後はもう母のVFは要らない様になっていました。 以上
本作では中盤までの朔也、イフィーや作家の藤原は自由死(尊厳死)を否定していました。
私的には、「もう十分」という気持ちは凄く共感するし、自由死が認められる世の中になって欲しいと強く強く願っているのですけれども・・・ある程度の基準を設けて、もう治らない病気とか著しい苦しみがある人は、尊厳死を認める法律を作って欲しいです。実際にベルギーやオランダ等の欧米の国では認可されているんだし。
でも、それが合法になったら、こういう世の中になるかもしれないというマイナスな面を描いた小説で興味深かったです。
本心 2021/5/26 平野啓一郎
内容 あらすじ 舞台は、「自由死」が合法化された近未来の日本。最新技術を使い、生前そっくりの母を再生させた息子は「自由死」を望んだ母の、<本心>を探ろうとする。
母の友人だった女性、かつて交際関係にあった老作家…。それらの人たちから語られる、まったく知らなかった母のもう一つの顔。
さらには、母が自分に隠していた衝撃の事実を知る――。
平野啓一郎さんの他の本の感想
マチネの終わりに
ある男
何故母がそんなにも自由死を望んでいたのか?
母の本心を知りたくて、母の友人や繋がりのあった人に朔也は会って行く。
愛情あふれる優しい母と産まれた時からずっと2人きりで生きて来た朔也は、母の死後、孤独と喪失感から立ち直れず、AIで再現された本物そっくりのVF(ヴァーチャル・フィギュア)の母を購入します。
この時代、格差は今よりひどく、朔也たちは貧困層です。
彼は他人に自分の体を貸して命令通りに動く「リアル・アバター」という仕事をしています。
とても引き込まれて、数日読書に没頭させてもらいました。4つ★
メインのテーマは何故母が自由死を望んだのか?という事で、私自身も「自由死」についての処を一番読みたかったのですが、他にも一杯テーマがあって、一番知りたかったそのメインの部分があっさり・・・というか、もっと深く掘り下げて欲しかったと思ってしまいました。
「ある男」の時もそうだったのですが、とても面白く色々考えさせられる部分も多く、読み応えもあるのだけれど、あちこちに散乱しちゃってる感じが・・・・。
★以下ネタバレ★
朔也は悪質なおふざけのメロン購入の仕事を受けた日に、たまたまコンビニでミャンマー人のバイトの女性をかばっており、後にSNSでその時の動画が流れてヒーロー扱いされるようになる。大金の投げ銭をくれた富豪の人気のアバターデザイナーのイフィーに気に入られて、側にいる楽な立場というか仕事?を手に入れる。
密かに朔也が好意を抱いている母の女友達の三好(同居人という関係だがうまく行っていた)は、朔也から誘われて参加したパーティ(といっても3人だけだったが)でイフィーと出会い、結局2人は恋仲になり、朔也は複雑な思いもあるが2人を応援するのでした。
母が「自由死」を望んだ理由は結局ハッキリは解りませんでした。
父親は、母が付き合っていた作家の藤原から最後に教えてもらえました。母は40歳になって子供がどうしても欲しくて、誰とは解らない男性の精子をもらって出産。その時東日本震災でとても親しくなって同居していた同性の女性がいたが、急にいなくなってしまった。
作家の男性とは、愛読者ということで知り合い、朔也が保育園の頃から数年に渡る愛人関係でした。
また、コンビニの店員のティリと会ってみて彼女の日本語力の欠如に気がつき、朔也は彼女を良い日本語学校に通えるように手配し、自らも語学を教える様な仕事に就きたいという気持ちで前向きに進む決意をしているところで終わっています。イフィーと出会ってから、段々母のVFと会話する事が減り、最後はもう母のVFは要らない様になっていました。 以上
本作では中盤までの朔也、イフィーや作家の藤原は自由死(尊厳死)を否定していました。
私的には、「もう十分」という気持ちは凄く共感するし、自由死が認められる世の中になって欲しいと強く強く願っているのですけれども・・・ある程度の基準を設けて、もう治らない病気とか著しい苦しみがある人は、尊厳死を認める法律を作って欲しいです。実際にベルギーやオランダ等の欧米の国では認可されているんだし。
でも、それが合法になったら、こういう世の中になるかもしれないというマイナスな面を描いた小説で興味深かったです。
本心 2021/5/26 平野啓一郎
内容 あらすじ 舞台は、「自由死」が合法化された近未来の日本。最新技術を使い、生前そっくりの母を再生させた息子は「自由死」を望んだ母の、<本心>を探ろうとする。
母の友人だった女性、かつて交際関係にあった老作家…。それらの人たちから語られる、まったく知らなかった母のもう一つの顔。
さらには、母が自分に隠していた衝撃の事実を知る――。
平野啓一郎さんの他の本の感想
マチネの終わりに
ある男
それは同じく私も思いました。
きっと色んな伝えたいことがたくさん頭に詰まっていらっしゃるのでしょうね。
尊厳死については、以前もコメントしましたが私も賛成です。しかし、選択の自由が認められた時、実際に自分の生を止められるかどうかは分かりません。できる人は勇気ある方々に限られるのでしょうか?
まかてさんの最近作「白光」「ボタニカ」を読みましたが、以前ほどの手ごたえのある読後感が得られませんでした。史実的な要素が多くなってきているような気がしました。
牧野富太郎さんは2023年度の前半朝ドラにもなるようで、神木隆之介さんがどういう牧野氏を演じるかに期待を寄せています。
>きっと色んな伝えたいことがたくさん頭に詰まっていらっしゃるのでしょうね。
私もそう思いました。やっぱり語りたい事、言いたいこと、一杯あるんだろうなあーと、これでもずいぶん沢山そぎ落として完成形になったんじゃないのかな・・。
尊厳死=この小説での自由死
どんな風にみなさん思われたのか、読み終わった後にあれこれ、おしゃべりしたくなる作品でした。
尊厳死については、10才位の頃からずっと長年考えながら生きて来て、今に至っています。
私は幼い頃は「死」が病的な位とても怖くてたまらなかったんですよ。
ところが今では怖くなくなって、凄く気が楽です。
今は「死」よりも、望んでも自分で死ぬ事さえできなくなる様な状況に陥る事への恐怖がもの凄くあります。
まかてさんの本、「ボタニカ」をリクエスト中なのですが、物凄い人気でいつ回って来るのやら・・・。神木君のドラマちょっと楽しみです。
現在やってるカムカム・・は最初すっごく面白かったのに、2部からなんだかなあ・・・になって、今は惰性で見てます。
ここで感想拝見して、早速読んだ本なので
ありがとう・・・という気持ちです(笑)
面白かったわ。尊厳死は映画ではいくつかみているけど、本ではあまり読んでいなかったから。好意を寄せている彼女に力になってあげたり、主人公優しかったよね。出生秘密は想像してなかったからびっくりだった。
↑<今では怖くなくなって、凄く気が楽です>そうなの?私はダメ(笑)
今はさらに、自分が自分でなくなることが恐怖よ、ある男・・・読んでみるね
そうだったのね、なんか嬉しいわ!
うん、うん、主人公優しいなあーって思ったよ。こんな息子がいてお母さんは幸せだったなあ・・・って思っちゃったよ・・・。
彼女に対してもね。
で、「死ぬこと」は怖くなくなったんだけど、あくまでもそれだけね。
それに至るまで起きるであろう事は今でも怖いよ!
ぽっくりとか事故とか、何かであっという間に瞬殺で死にたい!
>自分が自分でなくなること
これも恐怖だよー!
なんか、親とか身近な人で現実に色々あると、自分に置き換えて考えるし、読む本や映画も、そういう題材をついつい選んで見てしまったりする今日この頃だよ・・。
能天気な内容とか、高校生のラブコメとか、どうしても見る気にならなくて。
全く自分とは関係ないそういう内容の方が気分転換になって良いのかもしれないんだけどね。
先ほどは「本心」にもコメントありがとうございました。
たしかにこの作品、とても楽しめましたが、帯に書かれている「自由死」については、あまり深堀りされていなかったですね。
私自身は(夫にはこういうことを言うと怒られますが)自分が家族や周りの方々の迷惑になるようなことになるくらいなら、自由死を選びたいという気持ちがありますよ。
もっともいざそのようなことになったら、生に執着してじたばたしてしまうかもしれませんが...。
命の重さは変わりがないといっても、やはり才能のある方、若い方の死にはつい「もったいない」と思ってしまう自分がいます。決して口には出せないですけどね。
セレンディピティさんのブログ、ついついあれもこれも・・・ってお話したくなっちゃう記事があって、
自由死、尊厳死、もっと国で(政治的にも憲法でも)真剣に話される時期に来てると思うんですけどね・・。
そうそう、私も安楽死や死ぬの怖くないとか、色々言ってますが、いざその時にその立場になってみたら気持ちが揺れる事だってあるかもしれないですよね。
私も同じですよ。才能のある方や若い方の訃報を聞くたびにそう感じます。