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ネタバレ感想「おいしいごはんが食べられますように」高瀬隼子

2022-08-02 | 小説・漫画他
高瀬隼子さんの小説は、やっぱり面白い。
でも、まだ3冊しか読んでいないけれど、本作が一番毒が効いていた気がしました。
面白い小説でした。4つ★半
これからも、高瀬さんの小説、読んで行きたいです!

むかつきを原動力に小説を書いていると言う高瀬さん。
この小説を読んだら、高瀬さんはきっと押尾さん的立場になったことがあるんじゃないかな?と思いました。
というか、押尾さん的立場になった経験のある人って多いのではなかろうか。 

あと、この小説は、「食を大切に、丁寧な食事」みたいな風潮や、「飯はみんなで食べる方がうまい」とか「男の子はたくさん食べなきゃ」みたいな定型的考えに対しても物言う、って処も勇気があって良いな、って思いました。 
食をないがしろにしたり、粗末に扱うような発言をすると非難される事に対しても、カップ麺と対比させていたり、このタイトルは皮肉的なのかな? 

★注意 以下ネタバレで書いています★

会社内のあるある・・・。
冒頭の処から、上司の藤さんと、弱いが優しいと評判のいい芦川さんが不気味だった。
藤さんが芦川さんの飲みかけのペットボトルのお茶を勝手に飲んでしまう。
ありえない!
その後、席に戻って来た芦川さんに、「飲んじゃった」と事後報告。芦川さんが、そのペットボトルを飲んでみせて、そんなこと何でもないという様なリアクションを取る。

最後の方でも、奥さんとトラブルあって落ち込んでる藤さんを、芦川さんが優しくそっと抱き締めてるって、オイオイ!ありえんでしょう。藤さんだけじゃなく、なぜかパートのおばちゃん達にも芦川さんが人気なのが不思議。

同じ給料をもらって働いているのに、芦川さんは弱いからっていつも配慮され、人に頼ってばかりで周りに迷惑かけている。
その埋め合わせを仕事が出来る人がやる羽目になり、自分だって頭痛を我慢したりしているのに
こういう不公平感に腹が立つのは、よーーく解る。
しかも早退した後に、手作りスィーツを作って会社にもって来るようになり、みんなに美味しいと言われ、頻繁に持って来る様になり、あげくの果てには、もらってばっかりじゃ悪いからってお金をみんなで負担しようという事になる。

そして謎な男、二谷。
芦川さんにウンザリしながらも交際を続けている。むしろ、彼女が弱いというのが解って来た後の方が、性的にそそられるようになったらしい・・・。まあ、昔から自己主張が少なくいつもニコニコ優しい女性とばかりつきあって来ていたらしいが。
ちゃんとした料理よりもカップ麺を愛する。というかカップ麺を食べることで彼の食のリセット術?みたいな感じにも見える。

押尾さん(元チア部の真面目でちゃんと仕事の出来る、まっとうな人)
ゴミ箱に捨てられていた手作りスィーツをわざわざ拾って、芦川さんの机に置くというのは意地悪だなあー、そこまでしなくても・・・と思ったけど、でもそれ以外は押尾さんはまともだし、気の毒だと思う!

で、実は二谷以外にも、もらったお菓子を捨てていた人が他にもいたのね・・・。
パートの原田さんに押尾さんが問われた後に机に置かれていたスィーツは、なんと二谷自身が置いたってのもビックリ。まがりなりにも彼女でしょう?! しかも毎回足で踏みつぶしてから捨ててるってのも怖いわ・・・。

ラストは、結局二谷は千葉に移動、押尾さんは会社を辞め、チア関係のつてで別の会社に行くことになる。
送迎会、押尾さんはドタキャンする。みんなの前で自分も頭痛持ちだったことなどを明かしつつ、去って行くのです。
そして送迎会でまた手作りケーキを持って来た芦川さん。二谷が食べながらつぶやいた「結婚」という言葉だけ捕らえた芦川さんは「わたし、毎日美味しいごはん作りますから」と笑顔で言うのでした。
結婚、するのか・・・?

まあ・・・ 持って行ったスィーツが捨てられて、自分の机に置かれるという、すごい事されてるのにもかかわらず、作り続けてもって来るという芦川・・・。弱いのに、変な処にメンタル強いというか・・・。

その他、共感した処は、「他人をがんばれって励ますのは簡単だが、自分を励ます方が絶対難しい」とチア部うんぬんの処で出たセリフ。
食事は一人で食べる方が美味しい。美味しい美味しいとか、色々言い合わなくちゃならない圧がしんどい時がある。
ちゃんとした食事を作って食べて片付けるための時間と労力が負担。遅くに帰宅して、スーパー行って、献立考えて、作って、洗って、片付けて・・・。

おいしいごはんが食べられますように 高瀬隼子 2022年3月24日
第167回芥川賞受賞!

高瀬隼子さんの他の本の感想
犬のかたちをしているもの
水たまりで息をする
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4 コメント

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しずくさん☆ (latifa)
2022-08-08 19:32:37
しずくさん、こんにちは
コメントありがとうございます!

そうなんですよ、タイトルだけ聞くと、普通にありきたりなイメージが湧くと思うのですが、そうじゃないんですよ。
是非、いつか読んでみて下さい。

雑誌の群像1月号だと、そんなに待たなくても回って来るかもですよ。
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Unknown (しずく)
2022-08-08 10:27:05
高瀬隼子さんは全然読んだことがなくて・・・。『おいしいごはんが食べられますように』のタイトルからして、きっと食を大切にという視点から書かれていて、ありきたりだなと勝手に想像しちゃってました。
ところが一番毒が効いていた、むかつきを原動力に小説を書いているとか、私の思ってたのと違うじゃん! 読みたい気持ちが一気に込み上げてきましたよ。
いつか読後に伺いますね。(たぶん、予約いっぱいだろうから)
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わぐまさん☆ (latifa)
2022-08-05 07:18:33
わぐまさん、こんにちは
芥川賞って、なんじゃらほい?みたいな内容の受賞作も多い印象でしたが、本作は誰でも読みやすく、共感できる処もあって面白かったです。
数年前に「コンビニ人間」を読んだ時にもそう思ったわ。

>守られる存在になった経緯が書いてない
そうなのよね。まあ、あのありえない態度を見てるだけでも、男性上司には受けが良いのは解る気がするけども。

芦川さんは異常だから全く違うのだけれど、妊娠や出産後の復帰後とかで普通に働くのは大変になっちゃったちゃんとしてまっとうな社員さんがいて、その人は何も悪くないし、良い人なんだけど、でも彼女が時短したり休む事によって、周りの人が彼女の分の仕事をやることになって、それが結構キツイ、、って事ってあるんですよね。ちゃんとした会社ならちゃんとした穴埋めの対応してくれるだろうけど、そうじゃない会社もあって・・・。そういう体験と、つい重ねあわせて考えてしまう処ありました。

食について。
私もわぐまさんと同じです。一人で気楽にゆっくり食べるの大好きです!
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Unknown (わぐま)
2022-08-04 15:02:06
こんにちは^^
この本、いろいろと感想を言いたくなりますよね。↑で芦川さんをディスってたので気持ち良かった~~~。
自分が飲んでいたペットボトルをオッサンが飲んで、それをまた自分が飲むなんて気持ち悪すぎる。絶対に出来ない!!
なんで守られる存在なの?って、守られる存在になった経緯が書いてないのも面白なぁと思いました。
本書は「食」についても、深く描かれてましたよね。「うぁ、美味しい」とかリアクションしなきゃいけない。ってのが面倒というのに共感した。
孤食を悪いみたく言うけど、時と場合によっては、私は一人で食べる食事も好きなのよね。気を遣う相手と、気を遣いながらの食事って疲れる。だったら、一人でゆっくり味わいたいやって思う。
押尾さん、やり過ぎ感はあるけど、唯一まともだなぁって思う。
高瀬さん、魅力的ですよね。
今後も読みたいです
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