「ひと雨ごとに、踏み固まっていきますので。また、何かあればおっしゃってください。」
土木部から直接来てくださった職員の方が、ゆるんでガタガタになっていた木の周りの押さえを直して行ってくださいました。それから、初めての雨。
松江小学校の登下校の門が、今年度から3カ所に分散することになりました。それに伴い、この歩道も利用しますので、危ないところを直していただいたのです。
この歩道には、思い出があります。
それは、もう十数年前のこと。
今よりも狭かった歩道を、広くする工事を始めますといきなりお知らせされたときのことでした。
そのときに、この歩道の前で仕事を営んでいたお米やさんや新聞屋さんや乾物屋さんはじめ、何人もの方が「反対」をなさいました。
歩道が広くなるのに、なぜ?
と思いましたが、お話をよく聞くと、ここで商売をしていると、トラックが荷下しのために停車する。そして、救急病院の入り口もあるため、救急車も頻繁に停まっている。それなのに、車道が1メートル近くも狭くなったら、逆に危険である。
ということなのです。
確かに。
それは決して、身勝手な言い分などではなく、ここに何十年もお住まいの方達だからわかることだとおもいました。
しかも、その時の計画は、住民には相談なく、当時のギインの方がどなたかと相談して勝手に進めた、と言われていました。良いことと思ったのかもしれませんが、やはりそこに暮らす人たちの声をきちんと聞かないで進めるやり方は、no goodだと思います。
ご相談を受けた私は、さっそく住民の会を立ち上げました。そして、住民と役所が話し合える場を設け、車道と歩道の幅がどれくらいであれば危険でないのか、車いすやベビーカーは通れるかなど、色々な角度から話し合いました。
当初の予定より、歩道は50センチ狭くなりました。車道はその分広くなり、車の行き来の際にもスムーズに通ることができます。
また、イチョウの木の下の丸い押さえも、みなさんと一緒に色を決めました。みなさんが選んだ赤茶色は、良い選択でしたね。
その時に、元気に意見をおっしゃっていた、お米やさんのおばさんも、新聞屋さんのおじさんもお亡くなりになりました。乾物屋さんは、お店をたたみました。
でも、少しでも良い街にしようと立ち上がったみなさんの思いは、ちゃんと残っています。
この歩道を通るたびに、そこに暮らす人の意見を大事にすることを教えてくださった、おじさんやおばさんたちのこと、思い出しています。
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