立場が違えば主張も変わる

　悪役は徹底的に悪くないと憎めません。
　映画『クリード』のことです。
　世代交代したロッキーの話。
　ロシアのボクサーは、怪物のように強い憎まれ役なのですが、家庭環境が恵まれていません。
　一方、アメリカ人チャンピオンは、周りの人たちから愛されています。
　ちょっとくらいロシア人をチャンピオンにしてあげたら。
　そんな気持ちになってしまいました。

機械との攻防

　小さな銀行の出張所は、ATMが1台しかありませんでした。
　誰もいません。
　機械の前に立つと、人が入ってきました。
　離れた場所でも、並ばれると気になります。
　こんなときに、通帳をうまく開けません。
　ページをいったりきたり。
　もたついた末、やっと記帳するページが開けました。
　ATMの画面をタッチ。
　『ただいま振込だけです』
　なんで？　【おろす】をタッチしたのに。
　【もどる】
　もう一度
　【おろす】
　表示が変わりました。
　大丈夫そうです。
　カードを挿入。
　『暗証番号を』
　よかった、正常に進みました。

　通帳を入れ忘れました。

はやく一人前になりたい

　いまが旬の金柑。
　テレビでその栄養価を見てから、食べるようになりました。
　ただ、わりと手間がかかります。
　ナイフで輪切りにして、種をつついて取り出して。
　毎朝これを繰り返していると、春がくる頃には一人前の職人です。
　でも、夏のあいだ休んでしまうので、次の冬には見習いから始めます。
　こうやって少しずつ、人間は成長していくのだ。

手か口かどちらでも

　ずっと紙をさわっていたら、指先がカサカサになってしまいました。
　洗面所にハンドクリームがあります。
　誰かからもらったイタリア製らしい。
　1センチほど出して、手の甲に広げます。
　ん？　なんだ、この匂い。
　いい匂いのフリをしていますが、決していい香りではありません。
　例えるなら、爽快感のある歯磨き粉のような。
　あ、歯磨き粉か？
　あわてて表示を見ました。
　ハンドクリームでした。

実話にもとづく

　行きたくないけど、行かなきゃならない。
　行ったら命の保証はないけど、行かなきゃ身ぐるみはがされる。
　映画『喜望峰の風に乗せて』は、主人公がそんな状況に陥ってしまいます。
　経験がほとんどないのに、ヨットで世界一周をするのです。
　1人で、どこにも寄港してはいけないのです。
　妻と幼い子ども3人を置いていきます。
　自分で蒔いた種とはいえ、この選択はあまりにつらい。
　海の上で家族と別れるシーンは、胸がつまります。
　これ実話だって。
　冗談でしょう？
　本当。