空腹の方法

　昼食が遅かったせいか、夜になっても空腹になりません。
　でも、このまま何も食べないでいたら、きっと真夜中にお腹がすくでしょう。
　軽く何か食べておこう。
　みそ汁くらい。
　片手鍋に水を入れ、煮干しをひとつかみ。
　カルシウムたっぷり。
　ひとつ食べてみる。
　おいしい。
　もうひとつ食べる。
　なんだか、お腹がすいてきた。

並んだら双子か

　店に入ってすぐ、マネキンが着ているセーターに目が釘付けになりました。
　お洒落なブランドです。
　わりと高めの価格。
　いつも見るだけ。
　そのセーターは、黒の上に、色とりどりの端切れがランダムに付けられたように見えました。
　なんだこれは。
　とても派手。それでいて下品ではない。
　でも、どんなセンスの人が着こなせるのだろう。
　店の人が近づいてきました。
　素敵な色合いでしょう。
　うーん。
　ぼくもいま着ているんですよ、これ。
　気づいていました。

いくらでも召し上がれ

　今日のランチはインドカレーの店。
　壁にかかったテレビは、スポーツ中継を流していました。
　インド国内で行われているクリケットの試合です。
　録画のようです。
　「クリケットって、馬に乗ってやるんじゃない？」
　友人が聞きます。
　いや、それはポロでしょ。
　「ネットがついた棒を使うのは？」
　ええと、それは。ラクロス？
　ナンを食べ過ぎました。

一服の清涼剤に頼らないと歩けない

　家を出ようとしたとき、電話がかかってきました。
　約束の時間に遅れるかもしれない。
　一瞬迷いましたが、受話器を取りました。
　いま抱えている仕事先からの電話番号だったのです。
　トラブルの気配がしました。
　もしもし、はい、はい、そうですか、はい、はい。
　外出する気力が根こそぎ奪われてしまいました。
　いまできることは。
　ガムをかむ。

買い物修行僧

　スーパーの店先で、週に一度開催されるミニ市場。
　店内で売っているものより少し安いのです。
　夏でも冬でも、売り場は屋根のない屋外。
　吹きさらしです。
　りんごが安い、ネギを買おう、キャベツはいる？
　すぐ脇を、ダウンを着たおじさんが通りながら「おお、寒い！」。
　ああ、我慢していたのに、寒いことを思い出してしまいました。