914『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカの新型コロナ対策法(2020.3)未精査
アメリカでは、これより前の3月6日には、第一弾の新型コロナ対策としての法・「Coronavirus Preparedness and Response Supplemental Appropriation Act(CPRSAA)」(「新型コロナウイルス経済救済法」)が成立、施行され、ワクチン開発なとに総額約83億円を投じる。これより前の13日(同)に野党・民主党と合意したもので、健康保険に加入していなくても感染に係る検査を受けられるようにすることや、休職や解雇を強いられた人々に向けた所得保障や失業保険の拡充などを盛り込む。
続いての第二弾としては、同18日に成立、施行の「Families First Coronavirus Response Act (FFCRA)」(「家族第一・コロナウイルス対策法」)であって、こちらはウイルス検査の無償化や有給休暇制度の拡充などを盛り込む。
そして迎えた3月28日には、第三段としての新型コロナウイルス・パンデミック対策のための、約2兆2000億ドル規模の「Coronavirus, Aid, Relief and Economic Security (CARES) Act」(「コロナウイルス支援・救済・経済保障法」(CARES法、救済・経済刺激法案))に大統領が署名し、同法が成立した。同法案は3月25日に賛成96、反対0で連邦上院を通過したあと、3月27日に連邦下院も通過していたもの。
その内容の一番目としては、Expand & Extend Unemployment Benefits$260 billionBoost all unemployment benefits by $600 per week, cover additional workers who would not normally be eligible, provide an additional 13 weeks of benefits, & other changesとして、それのDollar Costとしては260 billion というもの。
これは、州からのものとは別途連邦政府から週当たり600ドルが、最高4か月まで支給される。同時に、失業保険の受け取り期間を13週間延長する。これで、通常では失業保険を受けとることができないフリーランスや自営業、それに個人請負業者も対象に組み込む。
二番目としては、 Issue One-Time Checks$290 billionProvide tax rebates of $1,200/adult & $500/child, phased out above $75,000 of income ($150,000/couple)として、それのDollar CostExpandとしても$290 billion というもの。
要は、米国籍保有者または米国居住者について、大人は一人当たり1200ドル、子供は同500ドルを、支給する。
ただし、この支給には所得制限があり、次の金額を超える場合には、減額調整が行われる。すなわち、単身申告者は調整後総所得(AGI)が7万5000ドルを超える場合、また夫婦合算申告者はそれが15万ドルを超える場合、さらに世帯主ということではそれが11万2500ドルを超える場合をいう。
なお、当該税額控除は前払還付の形で、2020年4月に小切手で受け取れる(2018、2019年の確定申告においてDirect paymentの設定をしている場合は銀行振込)のだといい、後者による支給分については、2020年度の確定申告において税額控除できるものとするという。
三番目としては、Provide Small Business Loans & Grantsに$377 billion。その内訳では、Support, issue, & guarantee loans to small businesses; offer loan forgiveness for funds spent on payroll, rent, mortgage interest, & utilities$366 billion。また、Provide emergency grants for small businessesに、$10 billion。さらにIssue grants related to small businesses & entrepreneurial developmentとして$1 billion というもの。
かかるなかでは、3490億ドルの中小企業への信用保証の供与が注意をひくのだが、これの実施に絡んで、次のような話が伝わる。
「複数の関係筋によると、米国の新型コロナウイルス対策の一環で導入された中小企業向け緊急融資制度への参加に米大手行が難色を示している。銀行側は法的なリスクが高すぎると主張しているという。
米議会は先週、2兆ドル規模の経済対策を可決。対策には中小企業向けの緊急融資制度(3490億ドル規模)が盛り込まれた。
この制度では、中小企業が今月3日から6月30日まで同制度に参加する銀行に融資を申請できる。トランプ政権は申請から数日以内の融資実行を銀行に求めている。」(ロイター社の4月1日付けニュース電子版、ワシントン発)
加えるに、これの中では、別に、次のような金融面での追加が発表されている。それというのも、米連邦準備制度理事会(FRB)は4月6日、新型コロナウイルス・パンデミック対策として、米連邦政府が4月3日から開始し、銀行が提供している中小企業向け優遇ローン「給与保護プログラム(PPP)」について、FRBが銀行に対し同ローンを裏付け資産とする融資を提供すると発表している。
これに対する評価としては、例えば、こうある。
「9日発表された米連邦準備理事会(FRB)の2.3兆ドル緊急流動性供給プログラムは、金融史上に残る出来事だ。
民間銀行の企業向け融資はFRB傘下の特別会社が買い取る。もし貸し倒れリスク等が生じれば、財務省が損失を補填する。
かくして、中央銀行の信用が損なわれることなく、コロナ禍で瀕死(ひんし)の企業を広範囲に支援できる。「ヘリコプターマネー」の制度化である。」(2020年4月10日の 日本経済新電子版)
要は、「中央銀行と財務省のバランスシート「連結」の始まり」については、「歴史的な変化、米財務省とFRBの異様な「連結」(同)などと、今のアメリカがなりふりかまっていられないひとこまのようである。
そして黙視できないのは、財政と金融とをそれなりに使い分けていた時代から、このコロナ対策からは、両方は融合化していって然るべきだという議論さえ起こりつつあることだ。
四番目としては、Support Loans & Loan Guarantees for Large Businesses & Governmentsには、$510 billionがある。
その内訳としては、Provide loans to passenger airlinesに、$25 billion。Provide loans to cargo airlines に$4 billion。Provide loans to firms vital to maintaining national securityに $17 billion。Provide loans to the U.S. Postal Service for operating expensesに、$10 billion。Support $4.5 trillion of loans to businesses, states, & municipalities via new Federal Reserve facilityに、$454 billionというものだ。
こちらの支援の本質とは、要するに、「ラージ・ビジネス」を助けようというものにほかならない。
この項目の最後にある、FRB(米連邦準備制度理事会)による損失補填絡みというのは、企業と州・地方政府に向けての支援策であって、そのFRBが設置する融資(貸付)ファシリティを、国家財政がサポートしてやる仕組みを言うのだろう。
具体的には、財務省にある為替安定基金(EST)に5000億ドルを追加(2020年2月の残高は937億ドルとのこと)の上、4540億ドル分を同ファシリティに対する損失補填(としての保険)分に充てるとの旨。
これの背景にあるのは、少し前までの大企業の投資の行き過ぎにはどうのこうのの文句をつけることなくして、FRBが特別目的事業体を経由してではあるものの、今回初めて、彼らに大いなる直接的な融資の道を開いた、誠に大企業支援に手厚い経済政策であるとして、識者の批判を浴びつつある。
なお、この間のアメリカ経済の全体の状況については、例えば、拙稿「アメリカ経済の現局面と今後の展望」を推奨したい。
五番目のSupport State & Local Governmentsには、$150 billion。その中身は、Provide aid to states (at least $1.25 billion per state)$150 billion。これは、州・地方政府の対策による支出増や歳入減の補填を支援するものだ。
六番目としては、 Increase Health-Related Spending>$180がある。こちらの内訳としては、 billionIncrease hospital & public health funding$100 billion、Increase preparedness funding$27 billion、Increase funding for community health centers$6 billion、Increase Medicare payments, expand telehealth & home services, & repeal Medicare sequester~$20 billion、Increase funding for the CDC, FDA, NIH, IHS, & other health-related agencies~$10 billion、Increase funding toward veterans & defense health$20 billion となっている。
全体として、健康水準を守り抜く、そのためには関係する医療機関やCDCなどの関係機関に対してそれぞれに見合う援助なりをする、ということなのだが、それらの中身がはっきりしない上、金額としてもチマチマした感じを免れていないようなのだ。
七番目としては、Support the Safety Net$42 billion。Increase SNAP (food stamps) & child nutrition funding$25 billion。また、Increase child & family services funding$5 billionBoost housing support$12 billion があてられる。
八番目は、Increase Disaster Assistance$45 billionとあり、具体的にはExpand FEMA disaster assistance fundに$45 billionが振り向けられる。
九番目には、Increase Education Spending >$32 billionとある。内訳では、まずEstablish Education Stabilization Fund for states, school districts, & higher education institutionsに、$31 billionをあてる。また、Enact supplemental appropriations for Department of Education programsに、<$1 billion。さらに、Preserving student aid for those affected by COVID-19については「?」、Defer payments & interest on federally-held student loans for 6 monthsについても「? 」とされており、「全体の金額内でよろしく頼む」ということなのであろうか。
十番目としては、Support Transportation Providers & Industries$72 billionがあてられる。内訳では、Provide grants to air carriers & airline contractors to avoid furloughs & pay cuts$として、33 billion。Issue infrastructure grants to transit providers, including state & local governmentsとして、$25 billion。Provide grants to publicly-owned commercial airports$10 billionTemporarily suspend airline ticket, cargo, & fuel taxes$4 billion。
十一番目として、Reduce Individual Taxes~$20 billionを計上している。これの内訳だが、Permanently allow HSA purchases of menstrual productsに$9 billionを。
また、Loosen caps on deductibility of charitable giving as a share of incomeに$1 billionを。
さらに、Provide temporary deduction for up to $300 of charitable donations by nonitemizersに$2 billionを。
そして、Allow up to $100,000 to be withdrawn from retirement accounts for reasons related to COVID-19に$3 billionを。
それから、Temporarily waive retirement minimum distribution rules(いわゆるRMDルール)に$5 billionを。これはつまり、2020年に限りは、同ルールについて、個人のリタイアメント口座からの最低引き出し義務が免除されることを意味するのだという。
さらにまた、Temporarily exclude employer-provided student loan assistance from income$0.5 billion を見込む。
十二番目として、Cut Business Taxes ~$280 billionがある。
その内訳では、Loosen caps imposed under the Tax Cuts & Jobs Act on interest deductibility & operating lossesに、$210 billion。
また、Offer payroll tax credits for businesses who retain workers at a lossに、$55 billion。payroll tax とは、社会保険税のこと。この措置は、コロナで営業停止に至った、もしくは1月以降、前年同四半期と比較しての売上高が50%低下した中小企業を対象に、雇用の維持を条件に賃金(四半期毎に各々の従業員につき1万ドルを上限とする)のうち50%までの税額控除を受けることができる。
さらに、Delay employer payroll tax payments from 2020 to 2021 & 2022に、$12 billion。こちらは、2020年末までの納税繰延べを認める。納税が遅れることによる税額については、その半額を2021年末までに、残りの半額を2022年末までに納めるべき。
Allow retailers & restaurants to write off the cost of improvements*Allow liquor distillers to make hand sanitizer tax-freeMinimal 。
13番目のその他としては、 Other spending >$25が割り当てられる。
(続く)
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以上の情報は、「Committee for a Responsible Federal Budget」(「責任ある連邦予算委員会」)からの情報をベースに、それに現地で活躍の日本の会計事務所などの方々による解説などを見る形で、主に構成した。この委員会は、非営利組織であり、ワシントンD.C.を本拠とする独立した非営利の超党派公共政策組織だ。 1981年に元アメリカ合衆国下院議員のロバートギアモ氏とヘンリーベルモン氏によって設立された。
(続く)
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