昔読んだことはある。
子どもの頃。
だけど、この冒険小説の面白さは、子どもにはまだ100パーセントはわからないだろう。
大人になってこそ、面白さも深みも身にしみてよくわかる。
あの『読まずに死ねるか!』を書いた激烈な冒険小説・ミステリーファンでボードビリアンだった内藤陳さんなら、「読め! 読め! 読め!」と連呼するところだろう。
ミシシッピ河の流れの音が聞こえそうな、闇にのまれた中で見える川岸の灯りが実際に見えそうな、水の匂いが漂ってきそうな描写が、読者を物語に誘い込む。
まだ奴隷制度の残るアメリカで、逃亡奴隷のジムとともにミシシッピ河を下って逃げるハックルベリイ・フィン。ふたりに降りかかる、事件、災難、活劇。
最後にはトム・ソーヤーも登場して、大団円。
どうやら逃亡奴隷を助けることは、倫理的にバツのような世情らしいが、自分の良心に反旗を翻し、「地獄に落ちてもいい」と観念してジムを助けるハックの心の動きに心を打たれる。
声をあげて笑ってしまう箇所もある。
リンチや殺し合いなどのシーンもあり、子どもの本を読んでるつもりでいるとギョッとなるが、先を読まずにはいられない。
アメリカを代表する文学作品の一つと言われるけれど、読めば、そう言われる意味がわかるのだ。
久しぶりに夜中まで読みふけった小説。
村岡花子さんの翻訳で出ている。
ハックルベリイが自分のことを「僕」と言ってるのは、今の時代には合わないかなあと思うけれど(俺とかおいらとかのほうがぴったりくるかも)、名訳! である。