『赤毛のアン』の次のキーワードとしてあげていたのは、「腹心の友」でしたね。
バタバタしてる間に、あっという間に一カ月。
しかし、めげずに続けます。
腹心の友というのは、アンが求めていた友達です。英語で言うと、a bosom friend。「親友」という意味です。
グリン・ゲイブルスで暮らすことになったアンは、「腹心の友ができるだろうか?」とマリラに質問します。
腹心の友とは?
「心の奥底をうちあけられる本当の仲間よ。いままでずっと、そういう友達にめぐり会うことを夢見てきたの」
これまでのアンの友達は、最初の養い親、トマス小母さんの本箱のガラス戸に移る自分の姿。それを、ガラス戸の向こうに住んでいるほかの女の子だと想像して、ケティ・モーリスという名をつけ、友達にしていました。
また、ハモンド小母さんのところにもらわれていったときは、家からちょっとはなれた川上に、長い小さな緑の谷があって、美しいこだまが住んでいました。小さな声で、ひと声、ひと声がちゃんと返ってくる。そのこだまにヴィオレッタと名前をつけ、小さな女の子ということにして友達にしていたそうです。
つまり、アンはこれまで、本当の意味での友達は一人もいなかったのでした。
物心ついて以来、もらわれていった先で、家の手伝いに明け暮れる毎日だったようです。
さて、アヴォンリーにやってきたアンに、腹心の友はできるのでしょうか?
マリラは、グリン・ゲイブルスと地続きのオーチャード・スロープ(果樹園の丘)に住むダイアナ・バーリーは、アンと同じくらいの年頃。とてもいい子なので「いい遊び相手になるだろう」といいます。
ダイアナは、とてもきれいな子で、黒い髪に黒い目、そして、顔はばら色。
アンは、ぜひともダイアナと友達になりたいと思うのですが…。
ダイアナが親戚の家から戻ってきたので、いよいよマリラといっしょにバーリー家を訪ねました。
アンはダイアナに案内されて、バーリー家の庭に行きました。(その庭はとてもていねいに整えられていて、ガーデニングに凝っている人なら、うらやましくなりそうな庭のようです。)
「『おお、ダイアナ』やっとのことでアンは、手を組み合わせ、ささやくような声で言った。
『あのう、あのう、ねえ、あんた、あたしをすこしばかり好きになれると思って? あたしの腹心の友になってくれて?』
ダイアナは笑いだした。ダイアナはいつも何か言う前に笑うのだった。
『ええ、なれると思うわ』とありのままに答え、『あたし、あんたがグリン・ゲイブルスにきてくれて、ほんとにうれしいの。遊ぶ人ができたら、おもしろいでしょうからね。近くにはいっしょに遊ぶような子がだれもいないし、妹はまだ小さすぎるし』」
あっさり、ダイアナは、友達になることを喜んで承知してくれたのです。
「『あんた、永久にあたしの友達になるって、誓いをたてられて?』アンは熱心に言った。
『どんなふうにするの?』ダイアナがたずねた。
『おたがいに手をとりあうの──そう』とアンは重々しく、『流れている水の上でしなくてはいけないんだけれど、この小途を流れている水のつもりに想像しておきましょうよ。あたしがさきに誓いの言葉を言うわよ。「太陽と月のあらんかぎり、わが腹心の友、ダイアナ・バーリーに忠実なることを、われ、おごそかに宣誓す」さあ、あんたも。あたしの名前を入れて言うのよ』
ダイアナはまず笑ってから、誓いの言葉を述べおわると、また笑って言った。
『あんたって変わってるわね、アン。変わってるってことは前から聞いてたけれど、でもあたし、ほんとうにあんたが好きになりそうだわ』
アンは「腹心の友」と呼べる女の子と友達になりました。
そして、ダイアナはいつも誠実で優しい、愉快な友達でした。
アンとダイアナをめぐって、いくつものエピソードが語られます。
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サラ☆

磯部
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