サラ☆の物語な毎日とハル文庫

オルコット『8人のいとこ』の幸せになる処方箋

↑ オルコットが家族と一緒に19年間(1858年~1877年)暮らしたというオーチャードハウス。

1875年に出版された『8人のいとこ』もここで執筆されたはず…。

 

13歳と半のローズが、医者であるアレック叔父に面倒を見てもらうことになったのは、

前回の記事でお話したとおりです。

 

さて、アレック叔父は顔色が悪く、痩せて体調も悪い姪を、ハツラツとした健康体にしたいと目論見ます。

ローズの母親は体が弱く、若いうちに亡くなってしまったのです。

アレック叔父にとっては、最愛の女性だった。

 

そういう思い入れもあってか、医者としての使命を感じたのか、

アレック叔父は思いつく限りの処方箋をつぎからつぎに、くり出すのです。

 

その処方箋、なかなか魅力的。

マネしちゃたら、読者の自分も健康で溌剌とし、幸せになれそうです。

 

なので、どんな処方箋か、整理してアップします。

 

 

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ドクター・アレックの薬とは?

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薬は庭に!

 

アレック叔父が最初に実践したのは、おおぜいいる叔母たちがローズに与えた薬を

すべて窓から庭に投げ捨てること。

 

「あの婆さんたちがどんな害を与えていたか見てやろう」

「さあ、お前にこのガラクタ薬の一番いい使い方を見せてあげよう」というや、

叔父様は電光石火の如く、次々に瓶を下の花壇めがけて投げ捨てた。

(この色の文字は『八人のいとこ』村岡花子訳/角川文庫より抜粋しています。以下同じ)

という具合です。

 

朝のコーヒーの代わりに絞りたてのミルクを!

それから、ローズのところにコーヒーが運ばれてくると、そのせいで夜眠れなかったり、ちょっとしたことで動機が打つのだといい、コーヒーの代わりに絞りたての新しい牛乳を飲むようにいいます。  

 

朝食はオートミール

 

かけっこ

 

ウエストを締め付けるきついベルトを外す→ハアハアいって大きく呼吸ができないしろもの

「のび盛りの柔らかい小さな腰に皮と鋼鉄の堅いベルトでしめつけるとはとんでもないことだ」

 

ドクター・アレックの薬とは?

①きれいな刺繍のしてある絹のクッション→インドのおばあさんにもらった薬草のつまった枕ということに。夢も見ない深い眠りへ誘われます。

②象牙の箱につめた黒パンを丸めただけの丸薬→プラセボ効果。少しも害にならないので。

③黒ずんだ彫刻のしてある木製の風変わりなカップ→「これの効き目は飲む人が自分でつがなければ出ないのだそうだ。だからお前はミルクをしぼることを覚えなくはならないね」

→ローズはさっそく翌朝、乳搾りに挑戦します。

 

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三大療法って?

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つぎにアレック叔父が取り組んだのは、ローズが寝起きする部屋の環境整備。

居心地がよく、光が差し込み、きれいな空気にみちた部屋でなくてはなりません。

そこで三大療法なるものを打ち出します。それは…

 

「これも私の治療の一部なんだよ、ローズ。

お前をこの部屋に入れるのは私の三大療法が最も効果的に最も容易に出来るようにと思ったからなんだよ。

豊富な日光、新鮮な空気、それから冷たい水、それに愉快な環境と適度の仕事…」

 

つまり三大療法とは

①豊富な日光と、新鮮な空気と水

②愉快な環境。(→居心地のよい住まい)

③部屋の片付けをし、掃除をしてきれいに整えること

でした。

 

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フィールドワークなどなど

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花壇の整理

この間の(治療)は、かるい園芸道具の一揃いで、

ローズは叔父様が花壇の整理をするのを手伝いながら、

植物についていろいろと新しいおもしろいことをならった。

学校でも植物学の勉強はしたけれど、

叔父様のいきいきとした授業にくらべると、ひどく無味乾燥におもわれた。

 

ボートを漕ぐ

ローズが住むお屋敷の敷地には浜辺があるのだ。なんと、うらやましい。

そこには、紅白のすっきりしたボートが波にゆらゆらゆれていた。

このボートはローズのボートになる。

舵取りをおぼえ、そのうちに漕ぎ方も学ぶ予定。

 

中国への旅

港に行き、香港から入ったばかりの船を見学してから、マックおじさんの倉庫へ

中国の紳士に会い、紳士たちの会話を聞いて貿易のことを学びます。

アレック叔父はいいます。

「こういう地理のまなびかたも、悪くないだろう?」

ローズがとても愉快なまなびかただと答えると

「地図と地球儀を出してきて、僕が旅行してきたところを、いろいろ物語りながらおしえてあげよう。

実際の旅行には、かなうまいがね」

 

お小遣い帳

「数字は、われわれのほとんどだれにとっても非常に大事なことだ。

いずれお前もどっさり勘定を書きとめねばなるまいから、

いまのうちにペニーの取り扱いを勉強しておいて、

この先ポンドを扱うようになってもまごつかないようにした方が、かしこくはないかな?」

 

灯台のある島へ丸三日間のキャンプ

アレック叔父といとこたちと、ジェシー叔母様がいっしょ。

 

ポートランドの山の農場に1カ月滞在

日射病で目をやられたいとこのマックとともに、転地療養生活。

栄養たっぷりの食事とアウトドアライフ。

マックもかなり回復したし、ローズもハツラツと元気で、

ばら色の頬をした健康そのものの少女になりました。

 

パンとボタン穴 

アレック叔父の提案で家事の勉強をするとに。

家事は「どうしても知っておかなければならないことなのだ。

それはお金持ちにも貧乏人にも必要だし、

家じゅうのしあわせとふしあわせがそれにかかっているのだからね。

この立派な技りょうは今日ではなおざりにされ、旧式だと思われているが、

それは悲しむべきまちがいであって、私の娘を育て上げる上に、そのまちがいをしたくないのだよ。

それにお前には一番よい、一番上手に教えて下さる、非常に才能のある先生があるんだがなあ」

 

ということで「一人で作ったおいしいパン」のやり方ほプレンティ大叔母さん、

ボタン穴かがりをピース大叔母さんに習うことに。

 

骸骨を題材にした生理学

アレック叔父は医者なので、本物の骸骨を使って、体の部位や臓器のこと、

とくにマックが参加しからは、目の構造などについて、詳しく説明。  

 

 

さて、いかがでしょうか?

私は居心地のいい部屋と、アウトドアライフに心惹かれました。

本を読むと、三方に窓がついた部屋で、東向きの部屋は湾に面していて、

西向きの窓からは素晴らしい夕陽が見えるのです。

大きな浴用盥は、冷たい水につかるもの。それはちょっとイヤだけど。

世界各国の素敵な調度品。

そして、キャンプに山の農場での生活。

ボートを漕いだり、馬に乗ったり、スケートをしたり…。

読書と勉強。人の役に立つ暮し方。

 

19世紀の本だけど、人間に必要なものは、変わるはずもない。

なので、ローズが素敵な少女に大変身した処方箋は、

いまの私たちにもよく効くのではないかと思うのです。

 

 

 

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