10月6日(月)
徳島(小松島港)~高知市内~中村市~土佐清水(白爪キャンプ場)
室戸岬までの途中。海岸線の峠道で事故を起こしたバイク発見。血のついたヘルメットが転倒したバイクの横に置いてあり、血に染まったティッシュが点々と転がっている。ヘッドライトの破片が散乱。フロントフォークは奇妙な角度でエンジン部分に折れ曲がっている。それほど日にちはたっていないはずだ。前日は日曜だったので、ツーリングだったのだろう。バイクはスズキ・カタナ。ナンバーは徳島。地元のライダーだ。気を引き締めなくてはと、あらためて気合いを入れ直す。
白装束を着たお遍路さんにときどき会う。高校のときに観た映画「旅の重さ」を思い出してしまい、なぜか嬉しくなる。
安芸市では、道沿いの弁当屋で魚フライ弁当を買いこみ、巨大な鳥居のような作りかけの鉄道高架の下で(あとで土佐くろしお鉄道と判明)昼食をとる。
弁当食ったあと、桂浜にいく途中にある浦戸大橋を渡っているときに、クラッチレバーを留めているネジが2センチほど浮いているのを発見。後頭部に電気が走ったようになり真っ青になる。大橋の料金所を過ぎたところバイクを停めてネジを締めこむが、走り出すとすぐに弛んでくる。出発前、入念にクレ55をかけたのが、災いしたのかもしれない。これでもかと、ドライバーで入念に締めなおすが、結局、そのあとも何度か締めなおすことになる。
桂浜の上にある休憩所のベンチで1時間ほど横になるも、結局10分ほど寝ただけで出発。横になっているとき、小学生らしいグループの話に思わず耳がダンボになる。語尾にチューをつけてしゃべっているのが妙に新鮮だ。
「おまん、宿題しちゅーか」
「しちゅーよ」
にんまり頬が緩み、やっと四国にきたという実感がわく。
「おまん、宿題しちゅーか」
「しちゅーよ」
にんまり頬が緩み、やっと四国にきたという実感がわく。
12時半過ぎには出発。今夜キャンプするのは足摺あたりと漠然と決めて出発。途中の横浪黒潮ラインは素晴らしいの一言。車もほとんど走ってなく、ワインディングをただただ気持ちよく走る。中村市を流れる四万十川の河口にいく道を走り足摺岬に向かう。
土佐清水には4時半くらいにつく。足摺岬にいくが、駐車場にバイクを停めて先端まで歩くのが面倒くさくなりUターン。土佐清水で給油して、321号線を宿毛市に向かう。5、6キロほど走って「白爪キャンプ場」とあったのでそこでキャンプすることに決める。
ビールとツマミを近くの酒屋(――腹に溜まるものでも買おうと思っていたが、酒とツマミ以外は何もない)で購入、キャンプ場に戻るが、野っ原のようなサイトには他にキャンパーはいない。東屋があり、その近くまでバイクで近寄っていくと、ネコの白骨体らしき骨が散らばっている。げ。どうしようか、ちょっと迷う。だが、ほかのキャンプ場を探すのはしんどい。東屋から50メートルくらい離れた芝生の真んにでテントを張る。張っている途中で、蚊が何十匹と押し寄せてくる。
苦労して張っていると(といっても簡易テントのようなものだが)、管理人のおじさんがやってきて、300円ほど徴収される。なんでもここは1年中やっているらしい。名簿のようなものに名前を書くと、9月になってから1週間に2、3回の割でだれかがキャンプしているようだ。だいたいがバイクできているという。100円で温水シャワーも使えるらしい。
テントを張り終えてから、温水シャワーを浴びて、氷で冷やしていたビールをテントの前で3本飲む。ツマミはカッパエビセンのみ――夕食用にパンでも買うつもりだったが、酒屋にはそんなものなし。テントを張って1時間もしないうちに、デカシートにもフライシートにも夜露が付着。撫でると、べっとりと水。まだ午後7時にもなっていないというのに……。海がすぐ横だからだろうか。
ラジオを聞きながら、星々を見上げるようにしてビールを飲む。時折、飛行機の尾翼灯が点滅しながら通過する。首に巻いていたタオルが皮膚に擦れて痛い。天の川を久しぶりに見る。近所の高校生らしい男女のグループがキャンプ場を横切って海岸にいったくらいのもので、あたりに人家や人の気配はない。
10時過ぎには寝るが、夜中に汗ぐっしょりになって何回か目を覚ます。結局、前日の午後3時からほとんど寝ないで1000キロ近く走り続けていることになる。自律神経がおかしくなっているのだろう。夕方、シャワーを浴びたときには尻の皮膚が破けてはいないが、上皮がずるずると浮いているような感覚もあり、飛び上がるほど痛んだ。ジーンズを脱ぐときに、血がべっとりついているような感触まであった。幸いにも、そこまでには至ってなかったので、ほっとしたものだ。
白爪キャンプ場。ど真ん中で1人キャンプ。
手前左側にトイレやシャワー小屋。
右手奥に、猫らしき白骨が転がっていた東屋がある。
(おそらく)キャンプ場横からの夕陽。