更新します。
最近みた映画の感想などを少し。
ダーウィンの悪夢 ★★★★☆ かつてその豊かな生態系のため「ダーウィンの箱庭」と呼ばれたタンザニアのビクトリア湖。今やその生態系はナイルパーチという外来魚の放流により完全に破壊されてしまった。ナイルパーチはEU諸国そして日本へと輸出され、これにより一部の周辺住民の懐は潤ったが、その一方で地域間の深刻な貧富の格差を生み出した。“悪夢”と化したビクトリア湖を素材に、南北問題の実体と、如何ともし難い現実のなかに取り残される現地の人々の姿を印象的映像で描き出した秀作。2005年山形国際ドキュメンタリー映画祭審査員特別賞受賞。http://www.hubertsauper.com/
憂国 ★★★☆☆ 三島由紀夫が、原作・脚色・製作・監督・主演を手がけた幻の短編。三島本人が「「憂国」一編を読んでもらへば、私といふ作家のいいところも悪いところもひっくるめて、わかってもらへるやうに考へてゐる」と語ったほど、この作品に対する彼の思い入れは強かったようだ。三島が天才であったことは疑うべくもない。あれほど壮麗で格調高い文章を書く作家が三島以外に果たして何人いるだろう(言い過ぎかな・・)。しかし残念ながらこの映画。いまひとつ響かなかった。橋本治が言うように「三島由紀夫はとうの昔に終わっている」ということなのか?
決して自らをさらけ出そうとしない、冷静で、全てを達観しきった、一部の隙もない、見事な様式美。その奥に見え隠れする究極の自己愛とナルシシズム。而して、僕のような凡人にはこの映画を受け入れるだけの感性が欠如しているようだ。
ヴァンダの部屋 ★★★★★ 寝た。不覚にも。映画が始まって5分で。全くパンしないカメラ。フェルメールの絵画でも眺めているかのような強烈なコントラスト。ドキュメンタリーとフィクションの間を往きつ戻りつするダイアローグ(あるいはモノローグ)。なんなんだこの映画は!!目が覚めてから、静かにエンディングを迎えるまでの約2時間半、僕は恰もまだ夢の中を彷徨い続けているような、なんとも名状し難い不思議な感覚にとらわれていた。最初に寝ておいてこんなことを言うのもなんだが、これは凄い映画だ。監督はポルトガルのペドロ・コスタ。彼は、リスボンのスラム街に住むヴァンダという女性と、彼女を取り巻く人間達をおよそ2年間にわたってカメラに収め続けた。映画「ヴァンダの部屋」は、何も語らず、何も告発せず、そしてなにも糾弾しない。固定されて微動だにしないカメラはただそこにいる人間達を静かに見つめ続けるだけだ。蓮実重彦に曰く「映画の21世紀は「ヴァンダの部屋」とともに始まる」。2001年山形国際ドキュメンタリー映画祭最優秀賞受賞。http://www.cinematrix.jp/vanda/
ミツバチのささやき ★★★★★ 20年数年ぶりにこの映画と再会した。何度見ても素晴らしい。(以前のエントリーも参照してみてください)監督は寡作で知られるビクトル・エリセ。この人は10年に1本しか映画を撮らない。しかし、この人の映画はどれも本当に素晴らしい。ということで、この「ミツバチのささやき」についてはいつか改めて書くことにします。
おわり。
"Good night and Good luck”
僕もあれはとてもいい映画だと思いました。
>>特にエド・マロー役の人の演技は素晴らしかったと思います
同感です。男臭くて、クールでよかったですよね。
それにしても、エド・マローのあのタバコの量は尋常じゃなかったですね(笑)。実際のエド・マローもタバコの吸い過ぎがもとで死んだらしいですよ。
ちなみに、ビデオニュースの神保哲生氏は、コロンビア大学時代に、G・クルーニーの演じていた番組プロデューサーだった人物(名前忘れました)に直接師事していたそうです。そのせいもあってか、神保氏はこの映画にはかなり辛口のコメントを残していました。
ジャーナリストの悲しい性ってやつかもしれません。