明海大学大学院応用言語学研究科

Meikai Graduate School of Applied Linguistics

「朝」「昼」「夕」「晩」「夜」と「ゴハン」 その2

2013年06月30日 | 日本語

前回の記事に、「朝」「昼」「夕」「晩」「夜」と「ゴハン」の関係について書いた。

 朝食     朝ご飯     朝めし     朝はん ×
 昼食     昼ご飯     昼めし     昼はん     
 夕食     夕ご飯     夕めし     夕はん      
 晩食     晩ご飯     晩めし     晩はん ×     
 夜食     夜ご飯 △    夜めし △    夜はん ×

 この表からいくつかの疑問が出てくるが、「夜ご飯」「夜めし」がユレであることについて私見を述べてみる。

【仮説その1】

 まず、「夜」という語から見てみる。「夜」を『広辞苑』で調べると、「日没から日の出までの時間。太陽が没して暗い間」とある。ちなみに、「晩」を同辞典で調べると、「ゆうべ。ひぐれ。宵。日没後、人がまだ寝ずにいるような夜の初めの方。さらに、広く、夜全体を指すこともある」とある。

 『広辞苑』の定義から、「夜」という語はかなり"幅の広い"時間帯を指すということが分かる。この定義と「ごはん」という語が"共存"できるかと言われるとなかなか厳しい。仮に18時が日没だったとしよう。18時10分に食べても、22時に食べても、3時に食べても、「夜ご飯」「夜めし」となる訳だ。「朝ご飯」「昼ご飯」などと比べると、明瞭さに欠ける。

 

 一方の「晩」は「夜」と比べると指す時間帯は"狭い"。これなら、「ごはん」という語と共存できる。だから、「夜ご飯」「夜めし」とは言わなかったのではないか。

 では、なぜ「夜食」という語が存在するのかという疑問が出てくる。「夜食」は「晩食」とは違う。「夜食」は「晩食」の次に食べるものだ。つまり、「夜食」の「夜」は普通の「夜」とは指す時間帯が狭くなっている。だから、「夜」と「ごはん」という語が"共存"できたのではないであろうか。

【仮説その2】

 上記のことを踏まえた上で、「ご飯」と「めし」の違いを考える。両者の違いは、丁寧か丁寧ではないかということが挙げられる。それに加え、こちらのサイトによれば、「ご飯」は「炊きたての米」、「めし」は「それ以外」という違いがあるようだ。言われてみれば納得できる。例えば、「酢めし」という日本語はあるが、「酢ご飯」という日本語は無い。

 現代ならボタンひとつでご飯を炊けるが、昔はそうはいかない。夕方ご飯を炊くのは可能であろうが、晩を過ぎた「夜」に釜戸でご飯を炊く家庭などなかったであろう。だから、昔は「夜ご飯」という言い方は無かった。(当然、夜遅く「炊く」作業もしないので、「夜めし」という言い方もない。)それがいつの間にか、「晩」と「夜」の境目を人々が気にしなくなり、どちらも似たような意味を持っていると思い始め、「晩ご飯」が「夜ご飯」に「晩めし」が「夜めし」に、それぞれなっていったのであろう。

 ただ、上記の私見は、歴史的な資料などを調べたわけでは無いので、あくまでも仮説の域は出ない。今度、日本語学を専門とされている先生方にお伺いしてみようと思っている。【大塚孝一 M1】


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