退院もそろそろという頃、主治医がやってきた。最近ほとんど会ってなかった。入院患者を結構ほったらかしだなあと思っていたのだが。
私「先生。全然来ないじゃないですか?」
医者「いや、そんなことないよ」
私「この3日来てないですよ」
医者「1日1回は来ているんだよ、でもいないんだよね」
私「確かにベッドにいないことはあるけれど・・、でも、ナースステーションの前の待合所にはいますよ」
医者「申し訳ない。ちゃんとデータは見てるから」
私「まあ、いいか。病状も良くなっているってことでしょ」
医者「そうそう」
私としては心の中で「俺はデータじゃないよ」と思いながら、本当に「まあ、いいか」と本心としても思っていた。
そこで、医者は退院後の話をして来た。
この病院は循環器専門の高度医療を提供しているが、私の心不全は原因不明のため、退院後の、つまり通院での担当は心不全のみの専門の医者に変更になるとの話であった。血管外科を含めて循環器系でいくつかの専門に別れるらしいが、原因不明の心不全のみの専門の医者となると、この病院でも1人しかいないので、その医者に診てもらう事になるらしい。正直にいうと、なんだか分からないが、了解するのみだ。
話の節々で、どうしても最悪のリスクを考えた場合、できるだけ安全策を講じておきたいという意図が見え隠れしているように思った。そこで専門中の専門家が担当するという程度の主治医変更という判断らしい。こちらは別に構わない。この領域に関しては、一応日本有数の医者らしい。ただ、ほかの医者とそんな違いが出るのだろうかと思い、質問してみたが、「ん〜専門家だから」程度の反応であった。
もう1点。主治医は循環器内科だけではなく、腎臓内科の専門家にも診てもらうべきだとの判断から、他院の腎臓内科を紹介するので、そちらも通院することになると告げて来た。急性期の透析をした時にも、腎臓の機能が落ちていることは告げられていた。特に最悪人工透析を死ぬまでやることになるかもと“脅さ”れていた。そのため、専門医に腎臓の状態を経過観察し続ける必要があるというわけだ。
こう告げて来た時点で、主治医は腎臓内科の病院と担当医を決めていた。一応住居の場所を考慮してくれてはいたが、すべては医療のなすがままである。医療が私のありようを決定していくんだと疑問を抱きながらも、どこかで裏切ってやるなどと悪意がもたげるのだった。
主治医は土曜日に退院となると思うが、その午前中の採血とレントゲンの結果で最終決定すると告げて、お役御免という感じでベッドサイドから出て行った。ここでも医療が私を決定する。なんか腹が立つ。
(つづく)