会社に連絡することにする。請負で病院勤務する場合、営業担当がいる。彼が病院側と連絡を取り合い、契約に関わる仕事をしている。
僕たちの営業担当は、物腰の柔らかい人物だった。最近よくある目標設定して、その実行を催促するようなことはない。ここでも多少企業カルト的な雰囲気はある。日本社会では、総じて似たようなところがるように思われる。ただ僕たち現場の人間に、目標を強要したり、自己啓発的な事も要求はしなかった。そもそも業務改善するような面、つまり効率化の側面は少なかったし。
電話で事情を話す。「契約外、つまり時間外の勤務を要求されているかのようで、皆困っている。そこで相談したい」と僕。結構詳しく話した。営業担当は「時間内勤務なら、お金をあげてもらわなければならない。そうでなければ、法律違反でしょ」と。
そこで僕から次のような提案をする。「実は勤務終了15分の間待機するだけだから、15分早く出勤し、15分早く退勤にすれば、特に問題ないですよ。そういう手もあるかなと」。この提案は問題発生当初から頭の中で描いていたものだ。
営業担当は勤務時間の変更であれば、勝手に決められないので彼の上司である支社長に相談してみると言う。そのため少し時間ちょうだいとのことで、一旦電話は切った。
翌日営業担当から電話があった。「病院からも相談の電話があった」という。そこで事前に僕から事の経緯を聞いていたので、すでに病院側に問題があるので、「上から目線」で話ができたと伝えてきた。そのため交渉もスムーズに進み、15分繰り上げて勤務することになったので、よろしくと伝えてきた。契約上の勤務時間の変更になるので、いつからかは追って連絡しますと決着がついた。
僕の目論見通りになったという感じであった。
スタッフも問題なしである。病院に勤務に行くと、病院職員から声をかけられ、「なんかうまくいったみたいですね」と。普通に相談して、手続きを踏めば、このようなトラブルになることはなかっただけである。
当の医事課課長は、この事で僕に話しかけてくることはなかった。ただ、どんなにいっても心ないパワハラは受けたのである。その時スタッフは重い雰囲気になっていたのである。はっきり言って、働きづらかったよ。
これは請負で病院の事務業務を行うことが持つ矛盾の表れの1つにすぎない。小さいことではいっぱいあるのだ。それをクリアしているのは、単に請負の政治的文脈をただ忘却しているだけなのである。命令系統の中に入っていないにしても、実際働いているときは実質命令系統の中で動いているようなものだ。そんな事を気にすると、なんかすり減ってくるものだ。
だから事務を請負にすることを可能した小泉改革の矛盾に、僕は痛められた経験でもある。