ここ数週間、母親のことが頭から離れないでいた。
どうも体調がすぐれないようだ。すでに85歳、甲状腺の異常橋本病を持病としている。弟と一種に暮らしているが、弟が出張で留守になることが多く、この新型コロナで人との接触も少なくなっていたようだ。コロナの問題は、コロナの感染に限定されない広がりを持つようだ。
コロナで死者数が発表されるが、超過死亡数を考慮すると、実際コロナが原因の一つで亡くなった人はその程度では済まないだろう。死者数でみるだけではなくて、コロナの影響で不調をきたす人はより多いはずだ。
コロナの幅広い影響を母親の体調不良から推察してしまう。これも因果関係不明にされるのだろう。
それはともかく、足が浮腫で、肺にまで水が貯まる状態になっていたらしい。そして、痴呆の兆しがあるようだという。すでに歩行に難があり、杖をついているのだが、北海道でもあるので、「転んではいけない」と外出も控えていたようだ。
弟によると、食事を作らなくなり、ただぼうっとしていることが多くなったらしい。しかも橋本病の薬を飲むことさえ忘れていたのだ。「薬を飲まなければ」と言うのはいいが、薬を探しているうちに、当の薬のことを忘れてしまうらしい。失禁することもあり、オムツも用意したというのだ。
さすがに電話で声を聞いてみるが、確かに元気を感じない。電話だというのに「お兄ちゃんに、会えた〜〜」と涙ながらに訴えるのだ。なんと切ないことか。
僕は母親の状態がだんだんとわかってきた。と同時に、僕は母親の死を初めて身近に感じ、動揺していることに気づいた。僕の心に母親が住み着いていることに気づかせられた。亡き父親・叔父・祖母が夢に現れて、なんだか訴えているようであった。
僕は霊など信じないが、ただそういう夢を見たのだ。これは事実である。僕にとっての母親という存在を考えずにはいられない経験である。
さて、弟(次男)がまたしばらく留守にしなければならないということで、母を一人にはできないので、車で1時間ぐらい離れているもう一人の弟(三男)のところで、しばらく面倒をみることになった。
よかった。好転してきた。というのは、人との関わりが増えたことが元気に繋がったのだと思う。また医者は橋本病の薬を飲めば、1ヶ月程度で改善するとも。きちんと服用してもらっているはずだ。
(つづく)