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奥田英朗「コロナと潜水服」

2022年12月03日 | あ行の作家


光文社
2020年12月 初版1刷発行
253頁

「海の家」
二歳年上の妻の浮気を知り、ひと夏、家族と離れて暮らすことにした小説家・村上浩二
期間限定で葉山の立派な古民家を借ります
長らく空き家になっていた家を掃除したり庭の草むしりをしたりしながら、のんびり生活を満喫するも、家の中から子どもの足音が聞こえたり、気配を感じたり、不思議な現象が起こります
怖い幽霊話かと思いきや、ひと夏の冒険みたいなのほほんとした話
でも、妻との関係はどうでしょうねー


「ファイトクラブ」
大手家電メーカーの早期退職勧告に応じず、親切部署、実質的な追い出し部屋に異動させられた三宅邦彦
まだまだ家のローンは20年残っているし、子供は高校生と中学生
まだ、会社にしがみつくしかないと腹を決めた邦彦が異動先で同じ境遇の仲間たちと新たに始めたことは、放課後の部活動
倉庫に保管されていたボクシング道具を見つけ練習を始めます
そこに、どこからともなく現れた男性がコーチを買って出てくれるのでした
オジサマ方には大企業の理不尽な仕打ちにめげず頑張って欲しいです



「占い師」
人気プロ野球選手・田村勇樹と交際中のフリーアナウンサー・浅野麻衣子
入団三年目にしてブレイクした勇樹と甘い結婚生活を望んでいるのですが、プロポーズの言葉はまだ…
勇樹の成績が上向くと局アナやファンの動きが気になって仕方なく、下向けば自分の結婚相手としては不足かも、など、かなり打算的で自分勝手な女性です
そこで、恋愛相談に訪れてみた麻衣子
占い師の鏡子に本音をぶちまけてみると…
自分のことは棚に上げ、でしょうか


「コロナと潜水服」
新型コロナウィルスが蔓延しテレワーク中の渡辺康彦
妻は出勤が必要な職業なため日がな一日家にいて、必然的に5歳の息子・海彦と過ごす時間が増えます
ある日、突然おかしなことを言い始めた海彦
どうやら新型コロナウィルスが感知できるようなのです
海彦の態度から、ついに自分が感染したらしいと悟った康彦は一室に閉じこもり完全隔離の生活を始めます
しかし、息子の世話はしなくてはならない、ということで康彦がとった究極の対応策とは…
防護服も雨合羽も売り切れ、古道具屋で妻が見つけてきたのが何と古ぼけた潜水服で道彦はそれを着て屋外に出るようになります
最初の緊急事態宣言が出た頃の混乱と狂騒を描いています
今となれば、そこまで…ですが当時はこんなのもありでしょうねぇ


「パンダに乗って」
小さな広告会社の社長・小林直樹は自分へのご褒美にと、ずっと乗りたかった初代フィアット・パンダを探します
しかし、日本ではマイナーなイタリア車で東京近郊では見つからず、ようやく探し当てたのは新潟の中古車店に一台だけ
遥々、新潟まで出かけ、意気揚々と東京へ戻ろうとするのですが、パンダのナビが直樹の意図しない場所を案内表示します
不思議なことが次々に起こって…少しだけウルっとくる素敵な話でした

5編とも、主人公たちは摩訶不思議な現象を体験しながらも割とすんなりそれを受け容れ認めていきます
特に最後の中古車の物語は、きっと穏やかな結末を迎えるだろうというこちらの予想を裏切らない内容で心地よい読後感にホンワカとなりました



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2 コメント

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Unknown (latifa)
2022-12-08 10:04:20
こにさん、読まれたのですねー!

それぞれ違った味わいの短編集でしたね。
やっぱり最後のお話が一番良いかも。

コロナと関連する内容の作品、ちょこちょこ読んでいますが、現実はもう3年経つのに、未だ先が見えませんね・・・。
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latifaさん (こに)
2022-12-09 08:03:10
遅くなりました!
図書館で書架を眺めていたら目に入り迷わず借りました。
赤いパンダが一番で、二番は放課後のボクシングクラブが良かったです。
コロナを描く作品を読むと時間の長さを感じますねぇ。コロナが落ち着いたらまた次のが…ってありそうじゃないですか(涙)
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