みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1409「あなたの価値」

2023-08-17 17:44:31 | ブログ短編

 彼は仕事中(しごとちゅう)に突然(とつぜん)、睡魔(すいま)に襲(おそ)われた。彼が目覚(めざ)めると、そこはどこか見覚(みおぼ)えのある部屋(へや)…。彼は思い出した。ここは、子供(こども)の頃(ころ)の自分(じぶん)の部屋だ。姉(あね)と二人で使っていた。しかし、そんなはずはない。だって、この家はとっくに取り壊(こわ)されている。
 彼は子供部屋を出るとリビングへ…。確(たし)かに、ここは子供のとき家族(かぞく)と住(す)んでいた家だ。家には誰(だれ)もいないようだ。彼は外(そと)へ出ることにした。しかし玄関(げんかん)を開(あ)けると、また子供部屋に戻(もど)ってしまった。外へは出られないということか…。
 彼は部屋の窓(まど)から外を見た。昔(むかし)、見ていた住宅(じゅうたく)が並(なら)んでいる。何だか懐(なつ)かしくなってくる。いけない。こんな感傷(かんしょう)に浸(ひた)っている場合(ばあい)では…。彼は思い出したように呟(つぶや)いた。
「そうか、これは夢(ゆめ)なんだ。俺(おれ)は仕事中に眠(ねむ)ってしまったんだ。早く起(お)きないと…。でも、どうやったら目を覚(さ)ますことができるんだよ?」
 その時、彼のスマホが鳴(な)り出した。驚(おどろ)いてスマホを見ると、非通知(ひつうち)の着信(ちゃくしん)。彼は電話(でんわ)に出てみる。すると、冷(つめ)たい無表情(むひょうじょう)な声(こえ)が返(かえ)ってきた。
「あなたを誘拐(ゆうかい)しました。あなたの家族に身代金(みのしろきん)を要求(ようきゅう)したのですが、あなたのために払(はら)う金(かね)はないと断(ことわ)られてしまいました。残念(ざんねん)です。あなたに何の価値(かち)もないなんて…」
「待(ま)ってくれ。俺の妻(つま)が…そんなこと言うはずがない。これは、何かの間違(まちが)いだ!」
「では、あなたが身代金の額(がく)を決(き)めて下さい。あなたなら、いくらつけますか?」
 そこで彼は目を覚ました。ぐっしょりとイヤな汗(あせ)をかいていた。
<つぶやき>もし、奥(おく)さんがこんなことを思っていたら…。これは、どうしたらいいんだ!
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