部屋(へや)の片(かた)づけをしているとき、押(お)し入れの中から未現像(みげんぞう)のフィルムを見つけた。子供(こども)のときに集(あつ)めていたガラクタと一緒(いっしょ)に箱(はこ)の中に入っていたので、その頃(ころ)に手に入れたものだろう。でも、どうして? 自分(じぶん)はカメラなど手にしたことはないし、友だちにも写真(しゃしん)を撮(と)っていたヤツなんていなかったはずだ。
近くの商店街(しょうてんがい)にあるカメラ店(てん)へ現像(げんぞう)を頼(たの)んだ。古(ふる)いフィルムなので難(むずか)しいかもと言われたが、どうしても確(たし)かめたくなったのだ。
数日後、写真ができ上がってきた。ほとんどは劣化(れっか)でダメだったようだ。そのうち三枚(まい)は風景(ふうけい)を撮ったもののようだが、ぼやけていてどこの景色(けしき)なのか特定(とくてい)は難しそうだ。あとの一枚には若(わか)い女性が写(うつ)っていた。色落(いろお)ちしているが、顔(かお)ははっきり分かる。
それを見て思わず声(こえ)をあげそうになった。この顔は知っている。同じ職場(しょくば)で働(はたら)いている与田(よだ)さんだ! だが、思い直(なお)した。与田さんは自分よりも年下(としした)のはずだ。この写真を撮った頃にはまだ産(う)まれていないかもしれない。いったいこの女性は誰(だれ)なのか? もしかしたら、与田さんの母親(ははおや)かもしれない。それなら納得(なっとく)できる。
自分は半年前に今の職場に転職(てんしょく)してきたので、与田さんとそれほど親(した)しくはない。それでも、何だがムズムズして確かめずにはいられない。もしかしたら、自分と与田さんとの間に何かつながりがあるのかもしれない。そう考えただけでドキドキしてきた。
<つぶやき>二人の間にどんな関係(かんけい)があるのでしょうか? ここは妄想(もうそう)を働かせましょう。
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