僕はなぜ結婚したのかわからなかった
いまだにわからないのである
35歳で結婚した
焦った訳でもない
早くもなく遅くもない
そんな年齢だ
妻の紗也は当時は29歳
友人の結婚式で出会った
一年の交際期間のあと結婚した
僕は長男だが親との同居をすぐにする気ではなかった
しかし、妻の紗也ははじめから僕の両親との同居を望んでいた
結果としては実家の同じ敷地内に平屋のこじんまりした家を建てた
そんなに広い敷地ではないので親の住む家の増築を考えたのだがやはり、別棟が良いと決心した
僕は大学をでてからいろんな会社に勤務した
これといって好きな事もなく今は建設会社の営業をしている
親も普通のサラリーマンで母は専業主婦だった
車で数分のところに姉が嫁いでいた
妻の紗也は小さな町工場の経理をしている
家も建てたのでしばらくは共働きで子供も数年先だと話し合っている
紗也は田舎育ちの性格のおっとりした女性で街暮らしの僕には素晴らしくそれが良いことに思えた
結婚して二年が過ぎようとするなか、やはり母が孫の顔を見たいと言い出してきた
ある日家に帰ると妻の紗也が血相を変えて玄関に立っていた
「お母さんが、私の留守に勝手に家に入っていたわ」
「君が最初から鍵を渡していただろう。それにそんなこともあっただろう」
「この間なんかお姉さんと一緒に入っていたわ‼️」
「嫌なら、そう言えばいいのに」
「私から言えるわけないじゃない」
「じゃあ、僕が伝えておくよ」
「大きな声出さないで❗聞こえるじゃないの」
僕はため息が出そうになった
妻のほうが大きいじゃないか
その時に電話がなった
隣の家からだ
「あなたが出てよ」
僕は受話器をとると明るい母の声がした
「敬ちゃん❗帰ったのね、お鍋しようかと思ってるの二人でいらっしゃいな」
僕はその事を伝えようと振り返ると紗也の姿はなかった
風呂に入ったようだ
結局その夜は隣に出掛けることはなかった
その時は急にやって来た
姉夫婦が子供を連れて隣の実家にやって来て僕たちも一緒に夕食をとっていたのだ
母が話し出した
「ねえ、敬ちゃん❗この家とあなた方の家、廊下で繋がない?先で子供ができても便利だしね。紗也さんはまた働きだしたらいいのよ。私がみてあげるから。どうせ、瑠美子の子供も見てるんだから、そうしましょうよ‼️」
僕は横にいる紗也を見た
顔が青ざめていた
下膨れの顔だが決してブスではなかった
その膨れた頬が余計に膨れてフグに似ていると思った
とどめをさすように姉の瑠璃子が口を開いた
「あ母さん❗なに考えてるのよ‼️どうしてそこまでするの?私の子供達だけでも見るの大変なのに‥……そこまですることないわよ。人がいいんだから。紗也さんも最初からそれが狙いだったんでしょ」
「私は、私は‥……そんな事‥……」
紗也がブルブル震えながら消え入りそうな声で呟いた
「やめろよ‼️なんだよ、母さんも姉貴も!」
僕は紗也の肩を抱いて部屋をでた
それからしばらくはなに事もなかった
誰もが押し黙り顔すら合わすこともなかった
僕だけがこれで平穏に戻ったように感じていた
暗い家に帰宅した
決算時期で紗也の帰宅は僕より遅い
台所のテーブルの上に紙がおかれている
母の文字だった
来月から地代を支払っていただきます
金額は敬ちゃんに電話します
え?
僕は慌てて隣に電話をした
「どういうこと?それに母さん、勝手に家に入ったのか?」
「鍵なんかとっくに紗也さんに返したわよ。ポストにいれたのよ。そういうことなんでよろしくね」
「母さん、おかしいだろう❗」
「何がおかしいのよ。あんた達のほうがおかしいわよ‼️電話で話すなんて。手の届きそうな距離よ。」
紗也は自分の実家に帰っていた
僕は親と別居をしてマンションを借りてまたやり直そうと言った
しかし、紗也は頑として離婚を要求した
慰謝料もいらない、応じなければ調停、裁判まで持っていくと。
僕は今は隣の実家に戻っている
住んでいた家は姉夫婦が引っ越してきた
そして隣と姉夫婦の家は廊下で繋がっていた
僕はなぜ結婚したのかわからない
何がどうなのか‥……
今もわからないのだ


いまだにわからないのである
35歳で結婚した
焦った訳でもない
早くもなく遅くもない
そんな年齢だ
妻の紗也は当時は29歳
友人の結婚式で出会った
一年の交際期間のあと結婚した
僕は長男だが親との同居をすぐにする気ではなかった
しかし、妻の紗也ははじめから僕の両親との同居を望んでいた
結果としては実家の同じ敷地内に平屋のこじんまりした家を建てた
そんなに広い敷地ではないので親の住む家の増築を考えたのだがやはり、別棟が良いと決心した
僕は大学をでてからいろんな会社に勤務した
これといって好きな事もなく今は建設会社の営業をしている
親も普通のサラリーマンで母は専業主婦だった
車で数分のところに姉が嫁いでいた
妻の紗也は小さな町工場の経理をしている
家も建てたのでしばらくは共働きで子供も数年先だと話し合っている
紗也は田舎育ちの性格のおっとりした女性で街暮らしの僕には素晴らしくそれが良いことに思えた
結婚して二年が過ぎようとするなか、やはり母が孫の顔を見たいと言い出してきた
ある日家に帰ると妻の紗也が血相を変えて玄関に立っていた
「お母さんが、私の留守に勝手に家に入っていたわ」
「君が最初から鍵を渡していただろう。それにそんなこともあっただろう」
「この間なんかお姉さんと一緒に入っていたわ‼️」
「嫌なら、そう言えばいいのに」
「私から言えるわけないじゃない」
「じゃあ、僕が伝えておくよ」
「大きな声出さないで❗聞こえるじゃないの」
僕はため息が出そうになった
妻のほうが大きいじゃないか
その時に電話がなった
隣の家からだ
「あなたが出てよ」
僕は受話器をとると明るい母の声がした
「敬ちゃん❗帰ったのね、お鍋しようかと思ってるの二人でいらっしゃいな」
僕はその事を伝えようと振り返ると紗也の姿はなかった
風呂に入ったようだ
結局その夜は隣に出掛けることはなかった
その時は急にやって来た
姉夫婦が子供を連れて隣の実家にやって来て僕たちも一緒に夕食をとっていたのだ
母が話し出した
「ねえ、敬ちゃん❗この家とあなた方の家、廊下で繋がない?先で子供ができても便利だしね。紗也さんはまた働きだしたらいいのよ。私がみてあげるから。どうせ、瑠美子の子供も見てるんだから、そうしましょうよ‼️」
僕は横にいる紗也を見た
顔が青ざめていた
下膨れの顔だが決してブスではなかった
その膨れた頬が余計に膨れてフグに似ていると思った
とどめをさすように姉の瑠璃子が口を開いた
「あ母さん❗なに考えてるのよ‼️どうしてそこまでするの?私の子供達だけでも見るの大変なのに‥……そこまですることないわよ。人がいいんだから。紗也さんも最初からそれが狙いだったんでしょ」
「私は、私は‥……そんな事‥……」
紗也がブルブル震えながら消え入りそうな声で呟いた
「やめろよ‼️なんだよ、母さんも姉貴も!」
僕は紗也の肩を抱いて部屋をでた
それからしばらくはなに事もなかった
誰もが押し黙り顔すら合わすこともなかった
僕だけがこれで平穏に戻ったように感じていた
暗い家に帰宅した
決算時期で紗也の帰宅は僕より遅い
台所のテーブルの上に紙がおかれている
母の文字だった
来月から地代を支払っていただきます
金額は敬ちゃんに電話します
え?
僕は慌てて隣に電話をした
「どういうこと?それに母さん、勝手に家に入ったのか?」
「鍵なんかとっくに紗也さんに返したわよ。ポストにいれたのよ。そういうことなんでよろしくね」
「母さん、おかしいだろう❗」
「何がおかしいのよ。あんた達のほうがおかしいわよ‼️電話で話すなんて。手の届きそうな距離よ。」
紗也は自分の実家に帰っていた
僕は親と別居をしてマンションを借りてまたやり直そうと言った
しかし、紗也は頑として離婚を要求した
慰謝料もいらない、応じなければ調停、裁判まで持っていくと。
僕は今は隣の実家に戻っている
住んでいた家は姉夫婦が引っ越してきた
そして隣と姉夫婦の家は廊下で繋がっていた
僕はなぜ結婚したのかわからない
何がどうなのか‥……
今もわからないのだ

