娘の一人暮らしの準備を進めなければいけない。
・・の筈だが、親の心配をよそに、ヤツはとっとと、東京に住む長女のところへ遊びに行った。
でもまあ、しかたなかろう。
長女は、あれはあれで妹の事が心配だったらしく、ことのほか今回の独り立ちを喜んだ。
飛行機を手配し、レンタカーまで借りて、妹を東京案内すると張り切っているようだ。
昨日私たち夫婦は、娘を福岡空港へ朝一番送った帰り、せっかくだからと宝満山に登る事にした。
ヤツの今回の目標は、
「この前、見つけていた寒葵を探して、花の写真を撮る事!」
らしい。
葉っぱを探しながら歩くヤツは遅れがちで、視界から消える事度々である。
彼方から
「おお!!見つけたあ。」
叫び声がした。
何事かと、ヤツのいる所まで戻ってみると、壁にへばりついている我を忘れたおばさんがいた。
「うひょ~~~咲いてる!!」
欣喜雀躍とはこういう姿をいうのだろう。
小躍りしながらスマホを取りだしている。
「やったー。」
そんなものなのか?
「だって図鑑には九州は分布が無いことになってるとよ。」
そりゃ、編者が九州ば確認するのが面倒臭かっただけたい。九州はだいたいそういう扱いになっとるもんたい。
これがその花らしい。
「うれしかー。来たかいがあったよ。わーーい。」
あー、うるさい。
こんな地味な花のどこがいいのかわからん。
今日も女道から山頂を目指す。
私が有難くも宝満山と神功皇后について話してやってるのに、ヤツは全く興味を示さず、
「お、ショウジョウバカマやん!」
もういい!!
ほっといて先に行くことにした。
宝満山は途中何か所か、水飲み場がある。
宝満山キャンプ場
頂上直下
春日の自衛隊の訓練らしい。
女性自衛官が
「ウヘー。ど、どうやっておりればいいんですかあ。」
悲鳴を上げている。
まず、ストックをしまう事だな。
ここは、いつも誰かが居て座れなかった断崖の岩だ。
幸い今日は空いているようだ。
ならばと、ここで昼食をとることにした。
おにぎりが転がらないように、慎重に食べなくちゃ。
「うれしかー。」
まだ言ってるよ。
お前が転がるぞ。