太宰府に行くとヤツが言う。
「なんでや?」
「北斎展やっとるけんたい。」
「ほほう。んなら山は止めた。俺も行く。」
太宰府に行くなら電車が速い。
駅前は既に参道である。
参拝は後回し。
菖蒲園を抜けて、
九州国立博物館へ。
会場には、赤富士を初めとして、富嶽三十六景&富嶽百景、お化けを描いた百物語等々。
教科書や図鑑でしか見た事がない浮世絵が、多数展示されていた。
無論、会場内は撮影厳禁。
カメラは用無しである。
と、思いきや、
ここだけは撮影OKなんだそうだ。
北斎が書いた獅子の原画である。
《冨蔵がてんのヤツ獅っ子》
冨蔵さんは、この獅子のどこが合点がいったのだろう?
そりゃそうだ。
獅子の十六って・・・・駄洒落かよ!
北斎じいさん、中々お茶目である。
北斎はこの獅子の絵を、一日も休まず、一年間書き続けている。
北斎を十二分に堪能し、会場を後にする。
太宰府天満宮。
この日は複数の中学、高校の修学旅行生で埋め尽くされていた。
天満宮の裏へと廻る。
どうやらヤツには、何やら魂胆があるらしい。
夫婦樟
「ふーん。俺、初めて見たかも知れん。」
天満宮には何十回も来ているが、思えば神社の裏手を歩いたのは初めてかも。
包丁塚
包丁の供養塔らしい。
これも知らんかった。
筆塚ねえ。
これも知らん。
ヤツは篠栗の姉から、幾つか情報を仕入れていたようで、
「神社の裏に、トンネルがあるって。」
これか。
何々、『宝満宮参拝隧道』とな。
て事は、宝満山竈門神社の参道は、ここから始まるって事か。
「あ、そこそこ。」
ヤツが指さしたのは、松重豊が地元の番組で紹介したという『お石茶屋』
注文も決まっているらしく、梅肉が入った、
「梅の香うどん下さい。」
「じゃあ俺は、丸天を追加でトッピングして。」
では、
ズズズズーー
まあ、梅干しの味がするうどんとしか言い様はないな。
天満宮の池に佇むアオサギ。
参道に戻ってきた。
早速、何やら売店で買い求める家内。
「《梅の香ひじき》が美味しいんだって。」
これも義姉の請売りである。
「ふーん、それは良かけど。お前が買ったのは、《梅の実ひじき》ってなってるぞ。」
「えー!」
アホである。
最後に参道の茶店に入り、おやつタイムである。
家内はクリームぜんざい。
私は葛餅の黒蜜かけである。
「俺、気がついたんやけど。」
「何を。」
「きな粉ってあんまり好きじゃなかった。多分50年ぶりぐらいかも。」
「アホやん。」
色んな気づきのある一日だった。