随分と走っていない。
猛暑を言い訳に、ランニングも自転車と同じように、2ヶ月以上のブランクである。
お陰で、どのズボンもウエストがきつくなってしまった。
山ズボンに至っては、苦しいを通り越して、数分で吐き気がしてくるほどだ。
このままでは、山に登る前に、車の中で気を失いかねない。
なまった体に活を入れよう。
久々、ランニングシューズを履いて高良山に向かった。
高良山鳥居前のスペースに車を止め、耳納スカイラインの起点となる車道を走る。
途中からは、南斜面林道を利用するのが、いつものパターンである。
この道なら、殆ど車が通らず、実に走りやすいのだ。
と、思いきや、
あらまあ。
でもひょっとしたら、車はだめでも、人なら通り抜けられるかもしれない。
走れる所まで走ってみるか。
タッタッタッタ
ハアハア、ゼイゼイ
思った通り、相当体がなまってる。
数キロ登ってきた時点で、既にバテバテである。
暫く走ると、道路脇に倒木や土砂が片付けられ、
その先には、崖の地面がむき出しになっている所があった。
もしかして、道路崩落ってこれの事?
もう、片付け工事は済んでるじゃん。
よしよし、何てことなさそうだ。
先に進むか。
すると、またしても同じ様なバリケードと看板が。
?
おずおずとバリケードを乗り越えると・・・
ドヒャー!
道が無くなっている!
わずかに残っているのは、宙ぶらりんの側溝とガードレールのみだ。
この被害状況では、当分の間、通行止めが解除されることは無かろう。
ショックである。
仕方ないので、元の高良山車道に引き返した。
ゼエゼエと走っていると、上から駆け下ってきた青年から、
「この先の13カーブのところに、ちょっと前にイノシシがいたんですって。気を付けてください。」
「マジか!イノシシは高良山で何度か見かけてるけど。でも、車道に出てくるのは珍しかね。」
本当にイノシシが居るのなら、絶好のシャッターチャンスである。
いつでもシャッターが押せるように、スマホを握りしめながら走っていると、後方から、猛烈な勢いで追いついてくる足音が。
振り返ると、小柄な若い女性だった。
瞬く間に私を追い越していく彼女。
今度は私がイノシシ情報を伝えねばなるまい。
「イノシシがいたってよ。そこの13カーブ付近だよ。」
「えええー!本当ですか!怖ーい。ヤダー!」
キャーキャー言いながらも、スピードを緩めようとしない彼女。
噂の13カーブは、画像突き当りの標識が見える辺りがそうである。
ハアハアハア
ちょ、ちょっと待て。
イノシシに体当たりされぞ。
ダメだ、追いつけそうもない。
どうやら、イノシシに体当たりされる役割を担うのは、彼女になりそうだ。
カメラ、カメラ。
と、悪魔の如き卑劣な企てを巡らすも、魔の13カーブは何事もなく通り過ぎたわけで・・・
人が多い時間帯に、しかも人や車の通りが多い場所に出没するイノシシは、よっぽど人慣れしていると考えなければいけない。
人を恐れなくなっているという事だ。
当分の間この山に、特にマイナーなルートで登るときは、食べ物を持って行くのは控えた方がよさそうだ。
高良山山頂直下の森林公園売店まで登ってきた。
いつもなら、ここから数キロ先の兜山分岐で折り返すのだが、なんせ久々の山ランである。
もはや限界である。
妥協してここから引き返そう。
高良大社前の売店まで駆け下ってきた。
ハヒー、ハヒー
ダメだ。休憩だ。
妥協に次ぐ、妥協である。
「トコロテン頂戴!」
「おまちどうさま。」
ズルズルズルー
ゲホゲホゲホ
酢に咽るのは、毎度のお約束なのだ。
私どもにとっては林道崩落は、走ったり山歩きが出来なくなるほどのものでしかないが、林業従事者にとっては死活問題であろう。
早めの復興を祈りたい。