火焔太鼓
市で古い太鼓を仕入れてきた道具屋の甚兵衛。これで大儲けをすると
息まいている。脇の女房はあきれ顔。なにせ怪しげな物ばかり仕入れて
きては損してばかりいる亭主。見るからにほこりだらけの汚い太鼓なんかで
儲かるわけがないと思っているのだ。
甚兵衛は小僧に表で太鼓のほこりを払うよう言いつけた。小僧は力まかせに
叩くものだから、ドンドンドンドンとうるさいのなんの。女房がよけいにいきりたつ。
そんなところへ一人の侍が入ってきた。殿様が通りがかりに太鼓の音を
聞いたと言う。てっきりうるさいと叱られると思った甚兵衛が、小僧のせいにして
あやまるが、どうもそうではないらしい。殿様が太鼓の音を気にいって買うつもり
だから、屋敷へ持ってこいという口上だ。
疑り深い女房は、音が気にいったとしても太鼓を見たら、あまりの汚さに殿様は
怒りだすに違いない。へたをすると帰してもらえないかもしれないと甚兵衛をおどした。
おっかなびっくり屋敷へ出向いた甚兵衛に先刻の侍が応対に出た。太鼓を持って奥に入り、
戻ってくると太鼓は火焔太鼓という名品、殿がいたく気にいられたので買うと言う。
安心した甚兵衛と侍の間で値段の交渉が始まった。侍が好きな値をつけろというので、
とりあえず甚兵衛の差し値は十万両。驚く侍に、そのかわりいくらでもまけますからと
言いわけをするおかしな商売。もともと無事に帰れればいいと思っているから、
値段のことなんか深く考えていない。
結局、侍が三百金の値をつけた。その意味が甚兵衛にはピンとこない。小判で
三百両のことだと説明され、「ひえーっ」と腰を抜かした。
感激のあまり、泣きべそをかきながら五十両ずつの包みで三百両を受けとって、
屋敷をあとにする。・・・・・夢心地で家に帰ってきた甚兵衛を見て、女房は
屋敷から逃げてきたのだと思い、
「追っかけられてきたんだろう。天井裏へ隠れておしまい」
しかし、甚兵衛は大いばりでことの次第を説明する。三百両で売れたと言ったとたん、
女房も腰を抜かして座りこんでしまった。・・懐から五十両ずつ出した小判を
積みあげるたびに、後ろへひっくり返ったり、気を失いそうになったり。
「ああ、ああ、お前さん商売が上手だよ」
「てやんでえ、ほら三百両」
「これからはもう音のする物にかぎるねえ」
「今度は半鐘を買ってきて・・・・・」
「半鐘はいけないよ。おじゃんになる」
立川志の輔 古典落語100席引用
難しいオチですね。じゃんと言ったらわたしは調味料を思い浮かべっちゃいました。
しかし、名品の価値って文化遺産級じゃないと意味なさそうだな。見るだけですもんだもんな。
How about the sky?
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