楽しい酒 良い酒 おいしい酒

酒を飲むなら、いい酒を飲みたいものです。

おいしい酒を紹介できたら良いな!

お酒のお供Y・・・157

2015-05-18 14:15:55 | 日記


猫の皿


田舎を歩き回って骨董の掘り出し物などを見つけ、安く買いたたいて

江戸の好事家に高く売るという商売が果師。

一人の果師が、とある川岸の茶店で休んでいた。

爺さん一人でやっているのんびりとした茶店だ。

茶を飲みながらなにげなくあたりを見ていると、一枚の皿が目に入った。

商売がら、果師の視線がピタリと吸いついた。なんとこれが江戸でも

なかなかお目にかかれない高麗の梅鉢という高価な逸品。

たった一枚でも三百両はくだらない皿だ。

どうしてこんな茶店にと思ってよく見ると、皿に飯粒がついていて

そばで猫が「ウンニャー」とのびをしている。

「ははん」と果師は喜んだ。あの猫に皿で飯をやっているに違いない。

つまり爺さんは皿の価値を知らない。こいつは大儲けできるぞ。

ちょいと考えた果師。爺さんが近くにきたところを見はからって、

ひょいと猫を抱きあげる。いかにも猫がかわいくて仕方がないという様子で

懐へ入れ、この猫をくれないかともちかけた。猫のついでにエサ用の皿もという作戦だ。

爺さんはニコニコしながらもやんわり断った。猫は十七、八匹飼っているがどれも

かわいい。とくに婆さんに死なれてからは、家族同様で毎晩、家に連れて帰っている。

しかし、果師もそれくらいでは引き下がらない。なにしろ三百両の皿が手に入るか

どうかの瀬戸際だ。 「ただでくれとは言わないよ」。

懐から小判を三枚、鰹節代においていこうと、爺さんに手渡した。猫一匹に三両は

とんでもない大金。三両なら文句はないと見え、爺さんは首を縦に振った。

ここまできたらこっちのもの。内心ほくそえんだ果師はさりげない調子で、

「猫だっていつも食べなれた皿のほうがいいだろうから、この皿もついでにもらうよ」

と例の皿にひょいと手を出した。

ところが爺さん、あわてた様子で押しとどめ、皿だけは絶対にダメだとゆずらない。

果師はガックリ。もう猫なんかどうでもよくなりじゃけんに扱うと、「ギャーッ」と

逆に猫にひっかかれたりして弱り目にたたり目だ。

「どうしてそんな高い皿で飯をやってるんだ」

「この皿は高麗の梅鉢という高価な品。家において盗られるといけませんので」

(「こうするとときどき猫が三両で売れます」という演出もある)



                        立川志の輔    古典落語100席引用



能ある鷹は爪を隠すような囃しでしょうか。

隠したいから隠すんでしょうな、あそこも・・・

いやらしいこと考えたでしょー?!

財布の中身ですよー。貯金の中身も隠したいでしょー。


隠したくなったらそら・あかね



お酒のお供Y・・・156

2015-05-16 12:38:47 | 日記


こんにゃく問答

江戸を食いつめた八五郎が、上州のこんにゃく屋・六兵衛の

ところへ転がりこんだが、いつまでも遊んでいられないので、

空き寺のにわか住職になった。だが経も知らず、寺男の権助と酒ばかり飲んでいる。

ある日、寺に有名な永平寺の僧がやってきて、問答を申しでた。

あわてた八五郎は和尚はいないと断るが僧は引き下がらない。和尚は一度出かけると

何年も帰らないことがあるから待ってもむだだと嘘八百。しかし僧はあきらめず、

帰ってくるまで二年でも三年でも毎日来ると言い残して立ち去った。

困った八五郎は権助と相談し、本堂にある金目の物を売っ払って別の空き寺へ

移ろうと二人で家捜しを始めた。バタバタやっているところへこんにゃく屋の

六兵衛がやってきた。二人から事情を聞いた六兵衛は、自分が大和尚になって

問答してやろうと言う。

そのかわり僧がきても黙っているから、大和尚は口がきけず、

耳も聞こえないと言え、と八五郎に策をさずけた。

ずっとにらめっこをしていれば、相手の僧もくたびれて立ちあがる。そこを

ねらって塔婆で足を払い、頭から煮え湯をぶっかけて追い返そうという乱暴な作戦だ。

翌日、僧がやってきた。いろいろと問答をしかけるものの、六兵衛は知らん顔。

僧はなまじ学問があるだけに、黙行という黙っている修行と勘違いし、それならと

「ハッ」と両の人差し指と親指で小さい丸をこしらえ、前へ突きだした。

これを見た六兵衛が両手で空に大きな丸を描くと、僧は平伏。

次は両手の指をパッと開いた。六兵衛は片手をパッ。また平伏。

次に僧は右手の三本指を出す。これには六兵衛があかんべえをすると、おそれいったと

逃げだしてしまった。

八五郎が外で僧を捕まえ、どうなったと尋ねると、いかにも坊さんらしい大まじめな解釈。

最初の小さい丸は、天地の間はという問い。すると六兵衛が両手の輪で大海のごとしと

答えた。十方世界はと問えば五戒で保つ。もう一つ三尊の弥陀はと問うと、目の前を見ろ

と答えたからすっかり感服したと言う。

感心しながら八五郎が寺に戻ると、本堂では六兵衛がプンプン怒っている。

「ありゃ乞食坊主だ。手真似でおれの商売物にケチをつけやがったのよ。おめえとこの

こんにゃくはこれっぱかりかってやりやがる。しゃくにさわるからこんなに大きいやいって

やったんだ。十枚でいくらだときやがるから五百だと言ったら、しみったれが三百に負けろってから

あかんべえ」

                      

                         立川志の輔   古典落語100席引用


和尚どの、殿が一休さんをお呼びですよ。

こりゃ~珍念、珍念。



珍ときても、そら・あかね。  そうだ、そら・あかねを飲もう。

お酒のお供Y・・・155

2015-05-15 15:15:05 | 日記


牛ほめ

二十歳になる息子の与太郎。ちょっとたりない息子のことが

歯がゆくてならない父親は、一人で叔父の家へいかせてみようと考えた。

叔父は家を新しく建てたばかり。与太郎が普請の具合をきちんとほめれば、

少しは感心して見直してもらえるという親心だ。

与太郎を呼び、ほめ言葉をあれこれと教えはじめた。

感心させなければいけないので、せりふがむずかしい。

天井は薩摩のウズラ木理と教えると、与太郎は天井は薩摩芋にウズラ豆と

繰り返す。畳は備後表の五分縁は、畳は貧乏でボロボロ。左右の壁は砂ずりの

部分にいたっては、佐兵衛のかかあは引きずりとくる。叔父の名が佐兵衛だから、

こんなことを言ったら大変だ。

父親をからかっているのならまだしも、当の与太郎は大まじめだからどうにもならない。

そこで、紙に文句を書き、カンニングさせることにした。

父親がとくに力を入れて教えたのは、叔父が気にしていた台所の節穴と、かわいがっている

牛のほめ方。節穴は秋葉神社のお札で隠せば火の用心にもいい、牛は天角地眼、一黒馬鹿、

耳小歯違とほめろと言い聞かす。

地眼というのは眼が下をにらんでいること。一黒は体が真っ黒、歯違は乱杭歯という意味。

いずれも牛をほめるときの独特の表現。

書いたものを懐に入れて叔父の家に着いた与太郎。早速、普請をほめはじめる。

挨拶の仕方から、天井は薩摩のウズラ木理あたりまではそつなくこなし、まずは上々の

滑りだし。叔父も少し見直した様子だ。

「佐兵衛のかかあは」

「なに」

畳でちょっと失敗しそうになり、こっそりカンニングペーパー。まだ見せてもらっていない

庭石までほめてしまったのはご愛敬。

とにかくだいたいのところはうまくほめ、台所の節穴に秋葉様のお札も上出来。感心した

叔父は娘にも会わせようとする。

父親からは何も教えてもらっていない予想外の展開。しかし、与太郎は気にせずにほめだした。

「天角地眼、一黒馬鹿、耳小歯違。いい娘だ」

「何言ってんだ、与太郎。そりゃ牛ほめだ。牛ならあすこで遊んでる」

「いい牛だ。でも汚ねえなあ」

おやっと叔父が見ると、牛がちょうど糞をしているところ。尻の穴からボタボタ。

「あの穴が気になるなあ」

「秋葉様のお札をお貼んなさい。牛穴が隠れて、屁の用心がいい」



                           立川志の輔   古典落語100席引用


与太郎さん、もう一人前ですな。

与太郎といえば、ガキのころはユウシュウデぇ~♪親の来た伊勢に受けて♪

な~んてなぁ。



与太郎でもそら・あかね

お酒のお供Y・・・154

2015-05-14 14:05:57 | 日記


寝床

いたって好人物の旦那だが、玉にキズが自分だけ上手だと思いこんでいる義太夫。

ある晩、その義太夫をなんとか皆に聞かせようと、店の者に命じて自分の

持っている長屋や町内の人たちを呼びにやらせ、わくわくしながら開演準備中。

そのうちに町内を回った店の者が帰ってきた。様子を聞くと皆つごうが悪いと言う。

誰それは仕事、別の人は女房が臨月。店の雇い人たちも全員病気。店の連中も長屋の

人たちも、旦那の奇声におそれをなして誰も集まってこないのだ。

旦那はすっかり腹を立て、店の者には暇を出し、長屋の者には追い立てを食わすと

えらい剣幕(この部分までで先に進めず、長屋の連中が一か所に集まって旦那の

義太夫をけなすくだりを加えてオチにする演出もある)。

これはまずいと思った店の番頭がなんとかとりなし、ようやく一同が顔を揃え、

機嫌を直した旦那が義太夫を語りだした。

しかし、やってきた連中は義太夫なんかまったく聞く気がない。酒飲みはふるまわれた

酒や肴、下戸は甘いもののご馳走をたらふく食べて寝てしまった。

旦那は、座が静かになったのでさぞかし聞き惚れているのだろうと考え、様子を

見ようと簾をあげると全員がゴロゴロと横になっている。

ひどいのは他人の足を枕にしてゴーゴーと高いびき。

旦那が怒ったのなんの、頭から湯気を出す勢いで座敷にいるはずの番頭を探した。

「おい、番頭、番頭」

なんのことはない、番頭本人も鼻から堤灯で眠りこけている。ねぼけている番頭を

怒鳴りつけ、他の連中にも「帰れっ」と一喝。

一同がモゾモゾと動きだしたところで、どこからか泣き声が聞こえてきた。

「誰だ、泣いてるのは」

旦那が見回すと、隅っこのほうで店の小僧の定吉が泣いていた。旦那はてっきり

義太夫の悲しい場面に感動して泣いていると一人合点。どうだ、こんな子どもでも

感激するのだと番頭をはじめ周囲の大人を自慢気に見回し、定吉にどこの部分が

よかったのかと聞き始めた。いろいろと悲しい場面の演目を並べても定吉は

泣きながら首を振るばかり。

「そんなもんじゃありません」

「泣いてばかりいないで言ってごらん」

「あそこでございます」

「えっ、あそこ。あそこはあたしが義太夫を語った床じゃないか」

「あそこが、あたしの寝床でございます」

                       立川志の輔   古典落語100席引用

義太夫っていましたね。イシハラグンダンに。

グンダンにも飲ませたいそら・あかね


お酒のお供Y・・・153

2015-05-13 14:04:03 | 日記


万金丹

江戸を離れて流れ旅の梅吉と初五郎。

行き倒れになりかけて田舎の寺へ転がりこみ、和尚の好意で

泊めてもらった。三日、四日と居続けたあげく、もうしばらく

居させてくれと和尚に頭を下げた。

困ったのは和尚。いくら田舎の寺でもわけのわからない男二人を

居候させたのでは、檀家の手前、都合が悪い。そこで、

いっそのこと出家のための修行をしてみないかと二人にすすめた。

まあいいかと二人は頭を丸め、梅坊に初坊という僧名までつけてもらった。

翌日から毎朝、毎晩本堂でお経三昧。しばらくすると二人とも

いいかげんあきてしまった。そんなある日、本山に用のできた和尚が

ひと月ほど出かけると、二人に留守を言いつけて旅立った。

いそいそと和尚を送り出した二人は早速、酒を飲む算段を始めた。

金がないから本堂のさい銭をくすねて酒を買い、肴は裏の池にいるコイ。

むちゃくちゃなやつらで、和尚の衣を網のかわりにしてコイをすくい、

料理してしまった。これを肴にひさしぶりの酒。すっかりいい気分だ。

そこへ檀家の者が訪ねてきて、葬式をしてほしいという。葬式は

隣村の寺へ頼めと和尚に言われていたのだが、お布施ほしさに梅吉を

江戸からきたえらい坊さんに仕立てて、適当に経をあげ、もしもバレたら

香典をひっつかんで逃げよう、と話がまとまった。

さて、先方の家。かしこまった村の者たちがおとなしいのをいいことに、

ゴニョゴニョといいかげんな経を唱えたまではよかったが、戒名をと

言われてはたと困った。戒名のことまで考えていなかったのだ。

「戒名はいるのか」

いるにきまっている。この次のときにまとめてと馬鹿な申し出をするが、

檀家が承知するはずもない。  

困った梅坊が和尚の部屋で拾った薬の袋を取りだして渡した。

漢字が並んでいるから戒名に見えなくもない。紙が妙に四角いのは新型だとごまかした。

ところが戒名をじっと見ていた檀家の一人が「官許 伊勢朝熊霊法万金丹」の

文字の意味を教えろとしつこくせまる。

「官許とは棺の前で経を読んだから、伊勢朝熊は威勢よく生きていたのが

死んであさましい姿になった、ということだ」

万金丹は俗名の万屋金兵衛の名前からとったもの。霊法は法の礼、

つまりお布施のことだと説明する。

「それなら、白湯にて用うべしってのは」

「仏にお茶をあげなくてもいいという意味だ」

                         立川志の輔    古典落語100席引用

昔の噺家は漬物をつまみに酒をかっくらったと聞きますが、

渋いっすね。でも刺し身の方が肴としてよろしいかと。

「あなたにも万金丹あげったい」

GOOD LUCK!! YOU GO OWN YOUR WAY AND GROWING YOUR WAY.




松平健さんも飲んだそら・あかね