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小説・鉄槌のスナイパー・二章・NOー(52)&CG

2008-09-21 02:11:13 | 小説・鉄槌のスナイパー(第二章)
小説・鉄槌のスナイパー・二章・NOー(52)&CG

そして、伊豆の伊東署からは亀石峠で交通事故死した三人の身元が未だに分からず、仏は無縁仏として既に埋葬したという事。
その事件の担当刑事も南署に呼ばれ、捜査会議に加わっていた。
「では、今日は伊東署の刑事の二人を交え、大浜海岸射殺事件の捜査会議を行います。
ちなみに、伊東署から来てもらったと言う事は。去る六月十九日未明、亀石峠で事故死した三人だが、所持していた運転免許証から東京都在住の堀田俊也、関野実、浜崎公雄、この三人はいずれも該当者なし。免許証は偽造である事が判明しています。
遺体は既に荼毘に伏され、埋葬されています。この三人は何者で何処から来て、目的はなんだったのか。まるで分かっていません。
我々はこの三人と、大浜で射殺された銃の鉄鋼弾は何か結び付きがあるのではないかと思い、伊東署からも出席して貰った訳です。
これまでの捜査では何一つ分かっていない。大浜の二人は射殺される前に、市内のレストランの支配人の新田進一さんを蹴り殺しています。
その現場に居合わせた客の全員から証言を取っています。その中の一組のカップルがいまして、偶然にも敷地の交差点で二人に追い掛けられ、大浜海岸、すなわち射殺された海岸まで逃げています。
しかし、そのカップルは大浜海岸まで逃げると二人の車は追い掛けて来なかったと証言し、自宅のあった敷地のアパートへ無事帰っています。
その時間、私が彼等のアパートに着いた頃で、私の車の後ろにいました。それで話を聴くと積極的に話してくれました。
現在そのカップルは実家のある白馬に戻り、結婚して実家のペンションを手伝っていますから。まず殺しには関係ないでしょう」。
こうして静岡県警南署では遅くまで会議は続けられていた。
そして三日、四日、一週間がまたたくまに過ぎた。
テレビのニュースも行方不明になった真田茂達の話題も薄れ掛けていた。
九月に入った初日、京平と美保は一日の仕事が終わって家族揃って遅い夕食を取っていた。
テレビを背にして食事をしていた京平の耳に、軽井沢の白糸ハイランドウェイの雑木林の中から、白骨化した死体が発見されたと言う話が耳に入った。
美保は京平を見ていた。京平は振り向いてニュースを聞いていた。
「なんだ、白骨死体だって。自殺か?・・・」。父は箸を止めると、食い入るようにテレビを見ていた。
「嫌ね、避暑地でそんな事件は。お父さん、早く食べて下さい」。母良江は食べ終わると、自分の食器を持って厨房へ入って行った。
京平は茶碗と箸を持ったまま美保の隣に座り、テレビを見ながら食事していた。
すると、画面はライブに切り替わった。サーチライトの中で現場は青いシートで囲まれ、警官が取り巻いていた。
見ていると、担架に乗せられた小さな遺体が幾つも引き上げられ、警察車両に乗せられていた。
そんな光景を美保は空になった茶碗を手にしながら眉間に皺を寄せ、ただ呆然と見詰めていた。そして目を反らした。
「この現場には死臭が漂っており、遺体は二人や三人ではないと思われます。詳しい事が分かり次第お伝えします」。と、現場のレポーターは鼻を押さえながら映像から消えた。そしてカメラはターンして警察車両が走り去るのを映していた。
「困った事だな、誰が殺したのか知らないが、殺された人にもそれなりの原因があったんだろう」。父良平はそう言うとお茶を啜っていた。
「そう言えば京平、お前達が軽井沢に行ったころじゃないか。京都の医者が行方不明になったと言うのは?・・」。
「ああ、このあいだ小山が金を借りに来た時に警察が聞きに来たって言っていたよ。それで美保が京都出身だから知り合いじゃないかって。なあ美保」。
「うん、下鴨の下鴨クリニックてって言っていたけど、名前は聞いた事あるかも知れないけど、かかった事ないですから」。
「そうか、小山さんの所へな。所で昨日の寄り合いで、みそら野のマリブの市川さんの所へ警察が調べに来たって話していたよ。
なんでも、その真田とか言う医者が奥さんと二人で泊まっていたそうだ。それでな、予定していた七日の宿泊を三日も早く切り上げて帰ったと言っていた。でも三日分は払ってくれたんだってさ。
なんでも女性から電話があって取り次いだら、偉い戸惑ったような顔をしていたと。そこへ信金の望月さんが来てさ、真田茂って言っていたかな、大金を降ろして古い紙幣に全部替えてくれって言ったそうだ。
誰かに恐喝でもされてたんだろうって望月さんが話していたよ」。
「望月の銀行へ。じゃあ警察に呼ばれたかもな。それで何か分かったの」?
「いや、話はそれで終わった。真田とか言う医者はその後軽井沢に行ったんだな。大金を持ったまま行方不明か。もう殺されているな。
それに和歌山の毒入りカレーなんて事件も起こっている事だし、おっかない世の中になったもんだ」。
「お父さん、そんな物騒な事は言わないで下さいな。美保さんが怖がっているじゃないですか。ねえ美保さん」。
「でも怖いですね。盆踊りの会場で毒入りカレーなんて。それも町内会主催なんですもの。誰を信じていいのか分かりませんよね。私達も静岡で、ねえ京平さん」。
「うん、ほら、前に話したろ。警察もここへも聞きに来たじゃないか。レストランの支配人を蹴り殺した二人組が殺されたって。そんな話はもう慣れたよ」。
「そうだったわね、それでその犯人は見付かったの?・・・」。
「まだだろ、ニュースでもやらないから。あんな暴力団は殺されて良かったんじゃないか。どうせ生きていたって他人に迷惑掛けるだけだからね。僕は殺されて良かったと思うよ」。
「私も、あのレストランで暴れた時の事を思い出すだけで鳥肌が立つもの。本当に怖かったんですよ」。
両親は頷きながら何も言わなかった、そして食器を片付けると二人は自分の部屋へ上がった。そして今後の対策を練っていた。
「美保、万が一警察が白糸ハイランドウェイの有料道路を通った事で聞きに来たらそのまま話せばいいから。
回りを散歩して滝を見て帰ったって。証拠はと聞かれたら観光客と一緒に撮った写真を思い出したように出せば良い」。
「うん、聞かれるまで余計な事は言わないから大丈夫、任せて」。
そして翌日。二人は早めに起きるとテレビの前に座って朝刊を見ながらニュースの始まるのを見ていた。
しかし、新聞にもニュースでも身元の事や詳しい死因については書かれておらず、夕べのニュースの内容と変わりはなかった。
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