Chamber Orchestra of Europe
Claudio Abbado
Composer: Gioachino Rossini
Author: Giovanni Gherardini
〘 … ハッピーエンドをもつ悲劇 ──ロッシーニ《泥棒かささぎ》
水谷彰良(日本ロッシーニ協会会長)
ジョアキーノ・ロッシーニ(1792-1868)は、デビュー作《結婚手形》(1810年)から37歳で初演した《ギヨーム・テル》(1829年)まで20年間に39の歌劇を作曲した。オペラ・セリア《オテッロ》とオペラ・ブッファ《チェネレントラ》に続く《泥棒かささぎ》は21作目に該当し、冤罪で死刑判決を受けた主人公が最後に救われる筋書きからセミセリアの救出劇と位置付けられる。台本はルイ=シャルル・ケーニエとテオドル・ボドゥワン・ドービニ共作《泥棒かささぎ、またはパレゾーの女中》(1815年パリ初演の歴史的メロドラム)を下敷きに、1815年までイタリア王国の官報『イタリア新聞』の主幹を務めたジョヴァンニ・ゲラルディーニ(1778-1861)が作成した。
原作劇はパリ近郊パレゾーを舞台に、盗みの疑いで小間使いが処刑された後に鳥の巣で銀食器が発見されて無実と判り、同地の教会がその死を悼んで“かささぎのミサ”を行うという史実──現在は民間伝承とされる──に基づいて作られ、ゲラルディーニはこれを翻案して《裁判官たちへの警告》と題し、1816年のミラノ・スカラ座オペラ台本コンクールに応募していた。その作劇がアリアと重唱で劇を進める従来型のオペラとは異なるアンサンブル中心であるのは、「現代の趣味に即してアリアよりもコンチェルタートを豊富にする」「斬新さとスペクタクルの壮麗さを結び付ける」といったコンクールの要綱に沿った選択である。ゲラルディーニの台本は落選したが、スカラ座から新作を求められて1817年3月にミラノ入りしたロッシーニは事前に用意されたコミカルな台本をしりぞけ、「最高に美しい題材」の《泥棒かささぎ》を選び(母宛の手紙、3月19日付)、序曲と16曲からなる3時間の大作を2カ月半で完成した(レチタティーヴォ・セッコのみ不詳の協力者が作曲)。… 〙
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます