モジリア

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おじさんが読む「赤毛のアン」

豆本小説 タッちゃん

2013年03月10日 | 豆本

「タッちゃん」

3月3日、タッちゃんのママが朝のお片付けが終わって、

ホッとした時の事でした。

伝い歩きをしていたタッちゃんが両手を放してママの方へ

4,5歩歩いたのです。

 

ママは伝い歩きをしているタッちゃんを見ていました。すると、

タッちゃんはニコニコ笑い、ゆっくりと一歩、二歩、三歩と歩いたのです。

ママはうれしくなって、

「タッちゃん!」と呼びました。

タッちゃんはママの方を見て、その場に尻餅をついてしまいました。

 

ママの顔をみて、誇らしげに笑っています。

ママはうれしくなって、タッちゃんを抱き上げました。

タッちゃんが伝い歩きを始めたのは二月の末、雪の日でした。

ママは、

「もうすぐタッちゃんは歩くのだなァ」と思っていました。

でも今日、たった今、

タッちゃんが歩きはじめるなんて思いませんでした。

ママはうれしくて仕方がありません。

 

「そうだ!パパに知らせよう!」と思いました。

 

「タッちゃんが歩きました!おめでとう!」とメールしました。

パパからすぐに電話、ママは電話をタッちゃんの耳元に近づけました。

「…あァ…あァ」と云っています。

 

多分パパと云っているのでしょう。ママは再びパパに、

「じゃあね!」と云って電話を切りました。

 

ママは再びタッちゃんが歩くのを待っていました。

タッちゃんはまた歩きました。

両手をブランブランと広げ、

身体のバランスを取りながら一歩一歩身体を左右に揺すり、

確かめながらゆっくりゆっくり、右足左足を交互に前に出し、

その度に体制を整えています。

ママもタッちゃんと一緒の思いで見つめます。

両手でバランスを取りながら、歩を進めるタッちゃんに

ママは不思議に思いました。

 

タッちゃんは両手でバランスを取ることを

生まれながらにしてこうした知恵を授かっているのです。

歩くことは体全体を微妙に調和させなければなりません。

タッちゃんは一つ一つ確認するように、

ゆっくりゆっくり動作を進めています。

そして確かめるように一瞬とどまって次の動作へ移ります。

 

ママはタッちゃんのよちよち歩きに神秘的なものを感じました。

左右の手で身体のバランスを取ることも

体重を移動する次の動作も知っているのです。

未熟で覚束無い動作にタッちゃんが

これから関わって行く慣れ、と云う知恵も

歓びを伴って自らが努力する知恵を授かっているのです。

ママはタッちゃんに厳粛なものを感じました。


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