橋田壽賀子「TVはおしまいでいい。同じ顔ばかりがひな壇に…」
出家引退騒動の清水富美加(22才)が、月給5万円の低待遇だったことを訴えて話題となったが、芸能人は「労働者」か否かという問題が投げかけられている。厚労省が芸能関連の団体に対し、〈俳優や歌手等の実演家との契約が「雇用契約」ではなくても、働き方が労働者と同様であると判断された場合、その方は労働者として取り扱われます〉との文書を送ったのだ。芸能人の働き方について、橋田壽賀子さん(91才)に聞いた。
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清水さんの件は、病気は仕方ないと思いますが、私は約束したものはやってから辞めないといけないと思います。辞めるのは自由だと思いますよ。人間を縛りつけることはできないと思うので。
ただ国が芸能人を労働者と同等といっているのは私は違うんじゃないかと思います。芸能人は自分の才能を発揮するために、費やす時間は制限されてはいけないし、自分でも制限しちゃいけませんよね。
芸能界の仕事を選んだ以上は普通の労働者とは全然違うと思います。個人の才能がものをいう世界ですから。そんなもの(国の指針)に縛られるのはおかしいと思います。だったら芸能界を選ばなきゃいいんですから。嫌なら俳優さんにならなければいいんだから。もっとこの業界のことを調べて芸能人になりなさいって(笑い)。
私は1949年に松竹の脚本部に配属されて、それ以降長く芸能界というところでお仕事させていただいていますけど、芸能人が労働条件って言ったことなんてなかったですよ。初めて聞きました。
私なんか、締め切りあるでしょ。徹夜しますよ。早い人遅い人いらっしゃいますけど、ある程度締め切りあったら、才能なかったら、やっぱり間にあわせるために2晩くらい軽く徹夜しますよ。一年やってごらんなさい。労働条件も何もない(笑い)。
そんな杓子定規なもので区別されるもんじゃないと思いますね。芸能界での仕事はあらゆる犠牲があることは覚悟して入らなきゃと思います。引き受けた以上はやらなきゃいけない。病気以外はね。それが芸能界のルールですよ。山口百恵さんだって、みなさんが熱望してらしたって、ちゃんとすることしてお辞めになったんだと思いますよ。なんのトラブルもなくお辞めになったんですから。
こんなこと言うと怒られるかもしれないけど、自分の仕事じゃないですか。好きで入ったんでしょう。みんなかっこいいところばかり見てるんじゃないですか。特に若い人の認識が足りないんですよ。今の若い俳優さんってそこらに転がってるような人ばかりじゃないですか。昔のスターみたいな人いませんもんね。あの人と、あの人とおんなじじゃないのって(笑い)。もっと自分の仕事を選んだ以上大事にしなきゃ。
それにしても労働条件なんて言い始めたらますますテレビは細っていきますね。ひな壇番組あるでしょ。あれは時間通りに終わりますから楽ですよね。ニュースもそうです。対談番組とか。時間通りに終わる、そういう番組増えるんじゃないですか。
私はお笑い芸人さんの同じ顔ばかりがひな壇に並んでるのを見ると本当に嫌。だから私はテレビはおしまいでいいと思っているんです。違うメディアがいっぱい出てきてるんですから。ただ、毎年秋の『渡鬼』だけは必死に書いてますけど、それは愛情があればこそなんですよ。
※女性セブン2017年3月30日・4月6日号