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娘の学校の近くに、それは素晴らしいウルの木があります。上の写真なのですが…。ウルの木というのは、パンの木のことです。ブレッドフルーツの木、ともいいますね。
ウルの実はサツマイモに似た食感の果実で、食べ応えたっぷり。そのためハワイをはじめポリネシア民族にとっては大切な植物なんです。実の大きさはメロンほどもあり、昔はタロイモの代わりにポイにして食べたり、ココナッツミルクとまぜてスイーツにして楽しんだようです。我が家のハワイアン夫は、ふかしたパンの実に砂糖とミルクを混ぜて食べるのが大好きなのですって。
そんなわけでハワイではあちこちにあり、大切にケアされているウルの木なのですが…。ハワイ広しといえど、写真のように大きく立派なウルの木を見るのは初めて。周囲の家々よりも遥かに背高く、大きく枝を広げ、しかも実がたっくさん! 大きな木全体に、メロンほどのサイズの実がいつも100個以上はなっているでしょうか(写真の右奥に見える家は、2階建てなんですよ~)。
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あまりに実が重くて、下のほうの枝は地面にふれそうなほど垂れ下がっているし、周囲の道路にまで実がコロコロ転がっている、そんな見事なウルの木なんです。
そんな木を見て、私がいつも思い出すのが、ハワイでは有名な「ウルの木の伝説」です。村人を飢饉から救ったウルの木の話なのですが…。
昔々。神であるクーは自分の身分を隠して、人間達の村で暮らしていました。クーは人間の女性と結婚し、子供も産まれて幸せだったそうです。ところがある年、村をひどい飢饉が襲います。クーの家族も日に日に衰えていき、そんな様子を見て、ある時クーは家族に告げました。
「自分は今から死ぬ。地面に埋まった自分からは植物が生えてくるので、それを皆で食べてほしい」
そしてクーは両手を広げて仁王立ちになると、そのままズブズブと地中深く埋まっていきました。そのすぐ直後に大地から芽が出てズンズン大きくなり、みるみるうちに大木に。なんとそれはウルの木でした。木はやがて、家族はもちろん村全体を飢饉から救うほどたくさんの大きな実をつけ、村中の人が飢餓から救われたと…いうことです。
そんなわけで、娘を学校でピックアップし、立派なウルの木を見るたび、私は想像するのです。あの伝説に登場する木は、きっと、こんな木だったんだろうな~、と。だってこの木になる数百個の大きなウルの実は、それこそ村中の人々が分け合っても余りあるに違いありませんからね。
大昔のハワイアンは、もしかしたらこんな立派なウルの木を前に感謝の気持ちを抱き、「いつもたっぷり食糧を与えてくださって有難う! あなたはまるで神のような存在です」とかと思って、くだんの伝説を創りあげたのかもしれませんね(ちなみに娘はこの木を「神聖な木」と呼んでいます)。
素敵なウルの大木を前に、想像はひたすら膨らむのでした。