職場の女子職員が成人式の晴れ着で遊びに来た。他の職員もそれを見て浮かれ騒いでいる。
………私は身を隠すように、目に着かない場所で黙々と業務をこなしていた。
本当なら「成人式おめでとう。」くらいの一言をかけてあげるべきなんだろう。
できない。今の私にはできない。
片や二十歳になったお祝いで皆に祝福され、未来を夢見ている少女。
片や唯一の家族を突然亡くし、悲嘆の極致にいる初老の男。
あまりに対称的な人と人に、目眩を覚えた。
私は逃げた。きらびやかな晴れ着を着た少女から。
一言も口をきかなくても済むように………
大人げない?なくて結構。
祥一郎を亡くした悲しみを一時でも止めろというのなら、そんな誹りなど何ほどのものか。
悲しむのが仕事、悲しむのが義務、悲しむことが、今祥一郎にしてあげられる唯一のことだから………
………私は身を隠すように、目に着かない場所で黙々と業務をこなしていた。
本当なら「成人式おめでとう。」くらいの一言をかけてあげるべきなんだろう。
できない。今の私にはできない。
片や二十歳になったお祝いで皆に祝福され、未来を夢見ている少女。
片や唯一の家族を突然亡くし、悲嘆の極致にいる初老の男。
あまりに対称的な人と人に、目眩を覚えた。
私は逃げた。きらびやかな晴れ着を着た少女から。
一言も口をきかなくても済むように………
大人げない?なくて結構。
祥一郎を亡くした悲しみを一時でも止めろというのなら、そんな誹りなど何ほどのものか。
悲しむのが仕事、悲しむのが義務、悲しむことが、今祥一郎にしてあげられる唯一のことだから………