東京の渋谷区や世田谷区で、パートナーシップ条例なるものが施行されたが・・・・・
まだまだこの社会、日本社会は男女のパートナーが基本の社会だ。
男女が結婚し、家庭を作り、子供をもうけ、それが社会の最小単位とされている。
いくらパートナーシップ条例ができたとしても、まだまだゲイのカップルは社会の制度や行政サービスの恩恵を、男女カップルと同等に受けられるようにはなっていない。
これだけ価値観が多様化し家族の有り方も様々になってきているというのに、社会の認知と制度がそれに追いついていないのだ。
マイノリティというのはいつの世もその為に不利益を被ってしまう。
私が今の仕事に就く前、もう本当に経済的に困窮してしまって、家賃をどうやって払っていくかが最大の難問として横たわっていた。
このままでは祥一郎と二人、部屋を追い出されるかもしれないという恐怖に怯えていた。
最悪、祥一郎は実家に帰し、私は寮付きの仕事を見つけるしかないかなとまで考えた。
二人で暮らして行くのはもう無理なのかな、別れて暮らすしかないのかなと暗欝たる思いで悩んでいた。
そんな時、ハローワークで相談し、住居確保給付金の制度がある事を知った。
生活保護の住宅費扶助ではない、ハローワーク関連の制度だ。
私は早速窓口で相談し、区役所の担当部署まで赴いた。
失業中で家賃が払えなくなるかもしれなという事情を説明し、後日、今の部屋を借りた時の契約書のコピーを持って行った。
その他あれこれと説明し、書類に記入し、必要な物を用意し、給付の資格が有るので住んでいる部屋の家賃の振込先を伝えた。要するに行政から直接に大家に振り込む形式だ。
確か5万2千円くらいだったと思う。家賃の全額では無い。それでも随分と助かるのでなんとか何ヶ月はやり過ごせるかなと胸を撫で下ろした。(最長9カ月給付が可能)
ところがその後、電話で担当部署から電話が有り、私が用意した賃貸契約書のコピーを確認したところ同性同士で住んでいる場合ルームシェアになるので、この制度は適用出来ないとの連絡を受けた。
私はすぐ踵を返し、どういうことなのか詰め寄った。
窓口の担当職員は、「こう言う場合、この制度は適用できないのですよ。男女のカップルなら内縁関係でも適用できるんですがねえ。」
とのこと。
私はムラムラと怒りの感情が湧き、
「なぜ、男女だと法的に夫婦でもないのに適用されるのに、同性だと駄目なのですか?私達の暮らしは
同性同士といえどルームシェアではなく、私ひとりが働いて生計を立てているのです。パートナーは仕事を探していますが、身体が弱くてそれがおいそれと出来ないのです。要は私が扶養しているのも同然なのです。おかしいじゃないですか。法的に何の根拠も無い男女には適用されて、私達のようなケースにはできないというのは。」
と私は窓口で散々まくしたて、詰め寄った。もう殆どゴネていたと言ってもいいかもしれない。
その勢いに気圧されたのか、職員は奥に行ってなにやら上司とぼそぼそと相談している。
長い時間待たされ、やっと窓口に戻って来た職員は、「事情は解りましたので、今回は制度適用の資格有りとさせていただきます。」と言った。
前例を作りたくないという、お役所仕事の典型を見たような気がした。
後で調べてみると、ではどういう生活をしていればルームシェアになるのかの基準さえ曖昧だという。
とにもかくにも、税金を払っている以上、当然の行政サービスを何とか受ける算段がついたのだ。
祥一郎と二人、このままでは路頭に迷い、離れ離れになる可能性もあったが、これで何とか暮らせると思うと役所からの帰り路、じんわり涙が滲んだのを覚えている。
なんとも世の中の不条理を感じた出来ごとだった。
私がまだ住んでる部屋の賃貸契約書にはまだ、祥一郎の名が同居人として記載されている。
今度また私がこの家賃補助制度を利用しなければならない羽目になったとき、あの時と同じ窓口の担当職員が居て、
「この同居人の、〇〇祥一郎は、もう亡くなりました。」と言ったら、どんな顔をするだろうか。
そしてもし「ああ、それなら問題無くこの制度は適用できますね。」などと言ったら、私は怒りで机を叩き、体中が震えるかもしれない。
祥一郎はもう旅立って行った。
しかしあの時私は、絶対二人が引き離されるような事態にさせてなるものかという気持ちが有った。なりふり構わず、恥も外聞もかなぐり捨てた自分が居たのだ。
二人の暮らしを何とか守ろうとしたあの頃を、私は遠い目で今思い出している。
祥一郎よ・・・・・・
お前の、そして私にとっても一番大事なものを、油断していた私は守れなかった。
しかしもしやり直せるなら、私は役所の窓口の机を乗り越えて職員に詰め寄ってでも、お前の為に受けられるあらゆる制度を勝ち取ってやりたい・・・・
もし、やり直せるなら・・・・・・・・・・・
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