あれは祥一郎と永訣してから数日経った頃だ。
錯乱状態で、何が起こったのかまだ理解できない状態に陥り、当然ながら祥一郎の死を受け入れてなどいなかった真っただ中。
けれども私はただ一つだけ、これだけは血縁や親族達に伝えておかねばならないという思いがあった。
ボロボロの精神状態でも、それだけはやらねばならないという信念があった。
それは、カミングアウトすること。
兄弟や従兄弟たち、たいして付き合いも無く別に会いたいとも思わないが、悲しいかな、私がもしひとりで死んだら後始末するのは彼等だと思い至ったのだ。
それは祥一郎の死に際して彼が荼毘に付された時、実の父親と弟が複雑な心境の中、後始末に来たということとも関係している。
私という伴侶が居たにしろ、結局ゲイのカップルにとって片方が死んでも、もう片方が色々な面で主人公にはなりえない社会構造だというのは現実なのだ。
葬式にしろ、墓の問題にしろ、仏事にしろ、血縁が取り仕切るようにこの社会はなっている。
その上で。
カミングアウトしようと思った理由はただ一つ。
祥一郎と私が紛れも無く家族だったことは誇りだからだ。
私がたった一人で死んだら、私の痕跡では無い、兄弟や従兄弟達から見れば誰か他の人の痕跡が後から後から明るみに出るだろう。
そう、祥一郎がそこで生きた証が次から次へと私の骸の傍から出るだろう。
その時に、私と祥一郎が確かにそこで暮らし、愛し合い、家族として過ごした年月があったのだと、彼等に知らしめるため、カミングアウトしたのだ。
要らぬ詮索を避け、祥一郎の痕跡をすぐ処分させることを防ぐため、私はゲイであり、祥一郎という伴侶が居たのだということを理解させるためなのだ。
別に私自身が楽になりたかったとか、ゲイを隠すのが嫌だったとか、そういう問題では無く、私と祥一郎が共に生きた証、それは誇りであって、なんら恥ずべきものではない、だからカミングアウトすることにした。
大阪に居る兄にカミングアウトした際、兄は黙って聞いていた。
私が、「俺には、愛し愛された同性の伴侶がいた。何が言いたいかはわかるよね?こんなこと言うのは、勇気のいることなんだよ。」と言ったら、
「・・・・・・・そうだろうな。」と呟いたのみ。
別に理解のある言葉を兄から聞きたかったわけでもなく、そんな関係でもないが、とにかく私が死んだら、祥一郎との人生があった事だけは伝えた。
従兄弟達は幼い頃、短期間一緒に暮らしたことがあり、その頃から何となく気付いていたようで、
「お前何をいまさら。お前、死んだオモニ(韓国語で母のこと。私にとっては伯母になる)にその人とのこと言ったのか?」と言われた。
正月の墓参りのときにちゃんと伝えたと言ったら、「そうか、お前、これからはゲイの権利向上をライフワークしたらどうだ?」とも言ってきた。
兄にカミングアウトしたときとは違ってやや拍子抜けした感があったが、私は東京で死ぬかもしれないので、近場の従兄弟たちにも伝えることは伝えた。
私はおそらく孤独死するかもしれない。悔しいが、世話になりたくないが、その時に後始末するのは彼等だ。
その時に祥一郎の遺影や位牌、あいつの遺品が何故あるのか、これで理解するだろう。
今もうひとつ考えていることがある。それは遺書の作成だ。
私が死んだら、祥一郎の遺品とともに葬って欲しい項をしたためた遺書を作成しておこうと思っている。
法律的なことも含めて、これから色々と自分の残す遺書のことを調べようと思っている。
こんばんは。
はじめまして。水際と申します。
私は父と母と三人で車に乗っていて、
事故に遭って、
父がその日に母は翌日旅立ちました。
私は顔に大怪我をしましたが一命はとりとめました。
けい様の祥一郎さんを思われる気持ちに
僭越ですが私が父と母を思う気持ちに
似ていると思っています。
その思いは深く、
父と母の子供である証をのこしたい。
父と母の生きざまを忘れないよう
ブログを始めました。
けい様が祥一郎さんをとても大切に思っておられる事をひしひしと感じます。
その思いを、どうか大切になさってください。
コメントありがとうございます。
お二人とも続けて・・・・・お辛いでしょう。悲しいでしょう。
でも同志がここにも居ます。愛する人を亡くして巨大な悲嘆にくれる同志がここにも居ます。
心を共有しましょう。
ブログを教えてください。
おはようございます。
心温まるお言葉をありがとうございます。
私のブログは『お空から見ている事を願って』
http://blogs.yahoo.co.jp/aki7_hir13_arigtuaiti
でございます。
宜しくお願い致します。
とても心強く嬉しいです。 水際
毎日読ませていただいています。
私は同性の彼女と住みはじめて4年目になりました。
このブログから読む祥一郎さんは、一見、自己主張が強いように見えて、大事なことは自分のなかに留め、なかなか口にしてくれない…そんなところが意地らしくいとおしく。
それが彼女ととても似ているように感じています。
だからけいさんが心底恋しがっているのも、後悔されているのも、勝手ながら他人事に感じられません。
もしよろしければ、ですが、祥一郎のブログやツイッターを読ませていただけませんか?
もっと祥一郎さんを知りたくなりました。
大変失礼しました。
またよるにでも返信しますね
コメント有り難うございます。
祥一郎の書いていたコスメ関係の
http://blog.goo.ne.jp/ucchi33_2008
「うっちー@狸御殿」というブログです。
私のツイッターはmothra0428で検索してください。
また、ツイッターは私のフォローから、「匂宮」というアカウントを探してください。@ucchi_10でも検索出来るかも知れません。
最初の方の呟きは、亡くなってから私の日記とリンクしてますが、スクロールしていくと、彼の書いた呟きが読めるはずです。
パートナーの健康状態は気にかけてあげてくださいね。
私のようにならないように・・・・・・・・。
時間をかけて読ませていただきますね。