Mr.Busーstop(バス運転士の日記)

大手バス会社勤務の路線バス運転士です。バス運転士の日常をお届けしたいと思います。

前回の記事「バスの発進保護と運転士の優先意識」の補足

2024-02-26 22:18:11 | 日記
前回の記事の最後に、以下のような記述をさせていただきました。

バスの発進保護と運転士の優先意識(復活) - Mr.Busーstop(バス運転士の日記)

道路交通法では、公共の交通機関である路線バスには、発進保護、専用通行帯、優先通行帯などの他の自動車に比べ一定の優先が認められています。本日は、その中でも路線バス...

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◆「タクシーには発進保護の条文は適用されませんのでご注意ください。たまに、誤解されているタクシードライバーの方もいらっしゃいますが、おそらく、乗合と乗用の違いを混同しているのと思います。

バス、タクシー事業をまとめて旅客自動車運送事業と言います(運送法第3条)。

一般的な見方も、お金をもらって乗客を目的地まで運送する事業と云えば、バスとタクシーだと思います。

この考え方は、特に間違いはありません。

しかし、道路交通法や運送法などの関係法令を鑑みてバス、タクシー事業をみた場合、この考え方ではしばしば間違いを犯すこととなります。

その間違いの代表的な例が、上記の「タクシーにも道路交通法上の発進保護が適用される。」という思い込みです。

これは、以前タクシー運転士から私も云われ、混乱したことがありました。

では、何故このような間違いがおこるのか?運転士自体が旅客自動車運送事業について正しく理解してないからだと考えます。

「こんなの基本的なことだから、研修でやるだろう!」と、おっしゃる方もいらっしゃると思いますが、流す程度にはやりますがしっかり記憶に定着させるまでやるかは、各社まちまちです。

やはり、自主的に運行管理者の国家資格を取る程度のことをやらないと、理解できている人は少ないと思います。

本日は、ここで旅客自動車運送事業について簡単に説明したいと思います。

運送法第3条で、旅客自動車運送事業は大まかに分けて下記の4つの事業で区分けされます。

(1) 「一般乗合旅客自動車運送事業」:路線バス、高速バスを指します。有償で不特定多数の旅客を運送するバスを云います。

(2) 「一般貸切旅客自動車運送事業」:貸切、観光バスを指します。有償で特定の旅客を運送するバスを云います(乗車定員11人以上)

(3) 「一般乗用旅客自動車運送事業」:タクシー、ハイヤーを指します。有償で特定の旅客を運送する乗用車を云います(乗車定員10人以下)。

(4) 「特定旅客自動車運送事業」:通園通学バス、企業送迎バスなどの送迎バスを指します。特定の需要に応じ対応するものを云います。

私が、バスの運転士として運行を行っているものは、路線バスになりますので一般乗合旅客運送事業となります。

さて、昨日の記事で説明した路線バスの発進保護の条文は、以下のような記述となります。

◆「停留所において乗客の乗降のため停車していた乗合自動車(路線バス)が発進するため進路を変更しようとして手又は方向指示器により合図した場合、後方車両は、その減速又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き、当該合図をした乗合自動車(路線バス)の進路の変更を妨げてはならない。(道路交通法第31条の2)」

条文に乗合自動車と記述がありますので、一般乗合旅客自動車運送事業(有償で不特定多数を運送するバス)を予定していることがわかります。

つまり、路線バス、高速バスが対象となり、タクシー、ハイヤーなどの一般乗用旅客自動車運送事業(有償で特定の旅客を運送する乗用車を云います(乗車定員10人以下)。)は対象となりません。

よって、タクシー、ハイヤーには道路交通法上の発進保護はないということがわかります。

このように、正しい区分けを理解しているドライバーは少なく、主にベテランドライバーか運行管理者ぐらいしか理解していないのが現状です。

やはり、法令を理解するときに「思い込み」がかなりの間違いを犯すことは事実のようです。また、要らない事故を誘発する原因にもなります。

自分を過信せず、少しでも疑問に感じたら「一呼吸おいて確認するゆとり」は必要に感じました。

この「一呼吸おいて確認するゆとり」は、運行経路の間違いに対する事前防止策や危険回避に有効ですので「だろう運転」、「漫然運転」などに注意して安全運行の確保に努めたいと思いました。

バスの発進保護と運転士の優先意識(復活)

2024-02-26 00:31:40 | 日記
道路交通法では、公共の交通機関である路線バスには、発進保護、専用通行帯、優先通行帯などの他の自動車に比べ一定の優先が認められています。

本日は、その中でも路線バスの発進時の保護(道路交通法第31条の2)について、考えていきたいと思います。

路線バスの発達時は、最も車内事故のリスクが高く、運転士が細心の注意を払うときでもあります。

令和2年のバスの行動類型別車内事故件数割合では、発進時の車内事故が最も多く全体の約4割を占め、次に急停止時、等速時、減速時がそれぞれ約1割5分と多いです。

そのため、この運転士が細心の注意を払う発進時に法令での保護がされることは、非常に路線バス運転士としてありがたいことです。

因に、この道路交通法第31条の2の条文は、「停留所において乗客の乗降のため停車していた乗合自動車(路線バス)が発進するため進路を変更しようとして手又は方向指示器により合図した場合、後方車両は、その減速又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き、当該合図をした乗合自動車(路線バス)の進路の変更を妨げてはならない。」と、定められています。

要するに、停留所からか路線バスが出ようとウィンカーを出した場合、後方の車両は進行に無理が発生しない限り、路線バスの進路変更を妨げてはならないと云うことで、違反した場合は、罰金などが科されます。


さて、実際の一般ドライバーは、どうでしょうか?私の感覚では、ほとんどのドライバーが守ってないように感じます。

たまに、路線バスの発進に配慮いただけるドライバーの方がいるときには、ものすごく感謝します。

よく、「警察は、何で取り締まらないのか?」という声を聞きますが、公務員の比例原則から有限な公金を使用して取り締まりをする以上、重要案件から優先順位つけて行うことは当然で、まだ積極的な取り締まりの対象とはなっていないということでしょう。

但し、事故が起こった場合は、発進妨害についても責任追及がされる場合がありますのでご留意ください。

このような状況のなか、事故を防止する方法としては、路線バスの運転士が優先意識を捨てて、大きなものを通行させていただいているという謙虚な態度で運転するしかないのが現状です。

実際のバス会社の新人研修でも、優先意識の排除や譲り合い運転について、厳しく指導されます。

私も、この事に留意し、落ち着いて乗務したいと思いました。

尚、タクシーには発進保護の条文は適用されませんのでご注意ください。たまに、誤解されているタクシードライバーの方もいらっしゃいますが、おそらく、乗合と乗用の違いを混同しているのと思います。