Mr.Busーstop(バス運転士の日記)

大手バス会社勤務の路線バス運転士です。バス運転士の日常をお届けしたいと思います。

若いバス運転士なんて、直ぐに辞めちゃうよ!?

2024-07-30 23:13:08 | 日記
ここ最近、20代、30代前半のいわゆる若年層の方がバス運転士を転職先に選ぶケースが、以前よりも増えてきています。

本当にここ半年位の傾向です。このまま若い人がバス業界に就職していただくことは、業界としても嬉しい限りです。

しかし、この傾向に異論を唱える中高年の先輩運転士も、少なくないのは事実です。

理由は、若いバス運転士の就職後の定着率にあります。概ね、1年から3年の間に給与の良いバス会社に転職したり、他の業界に転職したりします。

他のバス会社に転職することに対しては、給与や福利厚生など会社の今後の改善課題として前向きに捉えることも出来ます。

しかし、他の業界への転職については、バス業界が与えられるキャリアプランの限界を感じざるを得ません。

他の業界ならば、バス運転士で得られないキャリアを得ることも出来ますし、若い人にはそのチャンスも充分にあると感じます。

選択肢の多い若いうちに、多くの経験をしたい気持ちは、否定することは出来ないと思います。

今は、昔のように一つの仕事を定年まで続けないと、社会的信用が著しく欠損する世の中ではありません。

そう考えると、比較的に選択肢の多い若い人の定着率が、比較的に選択肢の少ない中高年に比べて低いことは、自然なことと思います。

私はむしろ、選択肢の沢山有るなかで、よくぞバス運転士の仕事を選んで頂き、尚且つ、1年から3年でも勤務してもらえる稀有なことに感謝すべきと感じます。

例え、バス会社を辞めても経験者として多くの同年代の若者に経験をベースにバス運転士の仕事を説明できる広告塔になる可能性すら感じます。

バス運転士にさえなれば、今の世の中でも公務員並みの待遇で、生活に困らない給与と社会的地位を得ることは可能です。

現在は、インターネットの時代です。一人の若者でも、多くの若者に情報発信をすることは可能です。

今後の業界のことを考えても、若者を粗末に扱うことは、ためになら無いと感じます。

何故ならば、選択肢の少なくなった中高年になり、バス業界に戻ってくるのは若い頃にバス運転士を経験した人間からだからです。

新人は事故ったぐらいで辞めるなよ!

2024-07-30 22:37:31 | 日記
新人バス運転士の1年以内の退職理由の一つに「事故を起こしたこと。」があります。

1年以内の新人は、日常の業務でも何か糸が張ったような緊張感があると思います。

この先、バス運転士をやっていけるのか、度々不安になることもあると感じます。

そんな中で、接触事故などの軽い事故でも起こすと、精神的に相当なショックを起こすと感じます。

不安の中で、少し気を抜いたときに前の車の後方に追突してしまったり、発車の際にオーバーハングを傷付けてしまったり、電柱でミラーを割ってしまったり、車内事故を起こしてはしまったりと事故は様々です。

本当に事故を起こすと、頭がまっ白になり、今後のことが不安になります。

特に新人は、緊張の糸が切れて「終わった~」と感じて、直ぐに退職を考える場合が多いです。

これに対して言えることは、先輩運転士も事故は何回か起こしていますから、必要以上に気にする必要は無いということです。

また、自分のセンスを云々言う新人もいますが、必要なセンスは会社側が判断して乗務させているのだから、「自分で勝手に判断するな!」と云いたいです。

会社が本当にセンスに疑問を感じた場合、運行管理者との面談の機会を与えて、運転業務から外したり必要な手立てを行います。

バス会社は、バス運行のプロフェッショナルです。

当然、数年しか経験していないバス運転士なんかより運転センスについての判断能力はあるに決まっています。

ましてや、素人や1年未満の運転士なんかよりは、絶対と云っていいほどみる目はあります。

会社が乗務を許可しているのだから、気持ちを切り替えて粛々と仕事をする姿勢は必要に感じます。

新人バス運転士の通過儀礼でもある、新人研修。

2024-07-30 21:52:51 | 日記
バス運転士になるために、バス会社に就職すると、最初は新人運転士として新人研修を受けることになります。

地方の中小バス会社の場合は、1週間から1ヶ月程度の研修で独り立ちが許される場合が殆どです。

しかし、東京、名古屋、大阪などの大都市圏などの大手バス会社の場合は、3ヶ月程度の厳しい内容の研修を受ける必要があります。

運輸規則第38条2項、指導監督指針第2章には、過去3年間にタクシーやバス会社などの旅客自動車の運転士として勤務した経験の無い初任運転者の場合は、6時間以上の研修が必要です(貸切バスの場合は、実技指導を含めて26時間以上)。

そのため、法律的には地方の中小バス会社も大都市圏の大手バス会社も充分すぎる位クリアーしていることになります。

では、何故法律に比べて格段の時間を割いた社員研修を行うのでしょうか?

現実的に事故無く、安全に業務をこなすためには、どんな人でもこの位の研修時間は必要だからです。

バスやタクシーは、二種免許で人を乗せて旅費を徴収し運転業務を行います。

そのため、一般ドライバーならば事故が起こるような場面でも、それを回避できる高度なスキルがあることが前提になります。

万一、事故が発生した場合は、最初に「悪質性がないか?」という疑いを掛けられるのです。

要するに、「二種免許を持ちながら、故意に事故を起こしてはいないか?」という疑いです。

その疑いを会社側と運転士が一定の回避をするために、それに充分な研修があるか否かが重要なポイントの一つになります。

その為、地域にもよりますが上記の法律を越えた新人研修期間は最低でも予め施しておくことが、会社と運転士のために必要になります。

これは、自動車の自賠責保険と任意保険の関係に似て、実際に事故まで想定したら必要な基準と捉えると解りやすいと思います。

また、実際に運転業務を行う運転士の立場としても上記の法律を越えた期間の研修は最低限必要です。

普通に新人が、6時間程度の研修で業務が出来ることはありません。ましてや、未経験の新人はなおのこと無理です。

さて、現在バス業界は人材不足で多くの求人募集を行っています。

それにともない私の会社でも多くの新人運転士が、研修生として教習を受けています。

毎回、一定数研修終了までに退職する研修生がいます。

退職する理由には、研修時間が長いとか、内容が詰め込み教育過ぎるとか、指導員の指導が厳しすぎるなど様々あります。

しかし、長く厳しい研修期間には業務上の事故から自分を守る、正当な理由があります。

また、何処の職場でもある周囲との関係を築くための、通過儀礼のような側面もあります。

期間限定の試練なので、是非とも堪えて独車していただくことを切に願います。