バス運転士になるために、バス会社に就職すると、最初は新人運転士として新人研修を受けることになります。
地方の中小バス会社の場合は、1週間から1ヶ月程度の研修で独り立ちが許される場合が殆どです。
しかし、東京、名古屋、大阪などの大都市圏などの大手バス会社の場合は、3ヶ月程度の厳しい内容の研修を受ける必要があります。
運輸規則第38条2項、指導監督指針第2章には、過去3年間にタクシーやバス会社などの旅客自動車の運転士として勤務した経験の無い初任運転者の場合は、6時間以上の研修が必要です(貸切バスの場合は、実技指導を含めて26時間以上)。
そのため、法律的には地方の中小バス会社も大都市圏の大手バス会社も充分すぎる位クリアーしていることになります。
では、何故法律に比べて格段の時間を割いた社員研修を行うのでしょうか?
現実的に事故無く、安全に業務をこなすためには、どんな人でもこの位の研修時間は必要だからです。
バスやタクシーは、二種免許で人を乗せて旅費を徴収し運転業務を行います。
そのため、一般ドライバーならば事故が起こるような場面でも、それを回避できる高度なスキルがあることが前提になります。
万一、事故が発生した場合は、最初に「悪質性がないか?」という疑いを掛けられるのです。
要するに、「二種免許を持ちながら、故意に事故を起こしてはいないか?」という疑いです。
その疑いを会社側と運転士が一定の回避をするために、それに充分な研修があるか否かが重要なポイントの一つになります。
その為、地域にもよりますが上記の法律を越えた新人研修期間は最低でも予め施しておくことが、会社と運転士のために必要になります。
これは、自動車の自賠責保険と任意保険の関係に似て、実際に事故まで想定したら必要な基準と捉えると解りやすいと思います。
また、実際に運転業務を行う運転士の立場としても上記の法律を越えた期間の研修は最低限必要です。
普通に新人が、6時間程度の研修で業務が出来ることはありません。ましてや、未経験の新人はなおのこと無理です。
さて、現在バス業界は人材不足で多くの求人募集を行っています。
それにともない私の会社でも多くの新人運転士が、研修生として教習を受けています。
毎回、一定数研修終了までに退職する研修生がいます。
退職する理由には、研修時間が長いとか、内容が詰め込み教育過ぎるとか、指導員の指導が厳しすぎるなど様々あります。
しかし、長く厳しい研修期間には業務上の事故から自分を守る、正当な理由があります。
また、何処の職場でもある周囲との関係を築くための、通過儀礼のような側面もあります。
期間限定の試練なので、是非とも堪えて独車していただくことを切に願います。