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9月自作/夜『止む事無し魂の果て』
明けぬ夜はないというのに。
暮れる日を、疎ましく思う。
一日がいつ始まり、そして終わるのか。床をとる時。はたまた眠りにつく時か。
眠れぬ夜の続き。
陽は昇り、陽が沈む。
それは星の営み。
人は、時計の針の上。
自分の都合のいいように、昼を決め夜を決め、そして眠りにつく。
抗うのは、誰。
永遠の眠りを拒絶した人は、今、静かに眠る。
目覚めぬ人。
すでに幾年(いくとせ)。
機械に繋がれるわけでもなく、只管眠り続けている。
彼女には今、どんな時間が流れているのか。
曰くありげな紛い物。
恐れた自分の身代わりに、それを手にした彼女の強さ。
待っていたのは、別れだった。
原因不明の意識消失。
心臓の鼓動はあるのに、生きてない。
生きとし生けるもの。
彼女の目覚めに手を貸してくれ。
彼女の瞳を見られたら、どんな代償でも支払うものを。
不老不死の仙薬。
そんなものを信じた愚かな人。
しかし、それを望んでしまったのは… 俺。
永遠の命など、ありはしないものを。
愛しき人。
どうか、目覚めて。
この腕のなかに、戻っておいで。
不老不死など最早望まぬ。共白髪を誓い合う。
そして、この命果てる時。
三界六道に輪廻する、互いの魂の邂逅を願おう。
愛しい人の横顔に、今宵も夜の帳がゆるりと下りる――。
【了】
著作:紫草