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長いキスの最后に、瑠璃が囁いた。
「さっきの、ほんと?」
唇を完全に離すことなく、本当だと答える。
すると彼女の口角が少しだけあがり、息が洩れる。再び抱き締めて唇を寄せた。
まるで覚えたての小僧のように、キスがしたくてたまらなかった。
「私、お遊びでいいよ。みんなにも内緒にする。誰にも言わない」
そう言って、俺を見上げる。
「だから気が向いたら誘って、みっちゃんが恋人と別れたら。結婚するなら、もう逢わない」
突き飛ばされるように、一瞬で瑠璃の体温を失った。
「本当は、愛人でもいいって言ってしまいそう。でも、そんなの許せない。みっちゃんがそんなことするなんて私が許さない。だから、みっちゃんに好きな人がいるうちは絶対逢わない」
そう言って、部屋を出て行こうとする。
「待てよ」
何、という言葉は背中越しだ。
「別れた。それだけ」
瑠璃は、すぐには振る返ることはなかった。ただ出てゆくことも止めたようで、足はそこに留まったままだ。
「どうして急に、そんなこと言うの」
「お前が、俺に女がいると勘違いしてるみたいだったから」
そこで初めて、こちらに振り向いた。
「勘違い…」
「そう。何度言っても信じないからな。俺には今、つきあってる女はいない。自分の気持ちに嘘つかないで、お前のことちゃんと見ていようと思ったから。それで、お前に本気で好きな男ができたら、それから忘れようと思ってた」
中学の時、モデルにスカウトされた時もそうやって黙ったまま、この部屋のその場所で立ってたっけ。
どうしようって。
でも気持ちはやりたいって言いたいのに言えなくて、困ってた。
「こっち」
俺は、自分の隣をポンと叩く。
まだ来ないと分かっているのに。少しだけ、意地悪したくなった。
自分で決めさせる。今も、これからも。
それでも瑠璃は動かないよな。
あの時も、そうだった。結局、俺が叔父さんと叔母さんを説き伏せたっけ。
でも、今度ばかりは俺も動かない。
迎えになんて、行ってやらない。
だから、お前の意思で来て――
もともと可愛かった。モデルの仕事を始めてから、瑠璃はどんどん綺麗になる。
手の届かない場所へ行くんだと思った。
でも、もし少しでも可能性が残っているなら。俺を選んで。
その時、瑠璃がゆらりと動いた。
「みっちゃん。私、迷惑かけたりしない?」
「迷惑!?」
「みっちゃん。私と一緒にいて、後ろ指差されたりしないの」
それは何を意味するんだ。
従兄弟だからか。卵とはいえ、芸能人だからか。
「瑠璃は、いったい何をしたいの」
「みっちゃんの女になりたい」
「とっくになってる」
言い終わらない内に、胸の中に瑠璃がいた。
「キスして。瑠璃から」
ゆっくり近づく瑠璃の瞳が、静かに閉じてゆくのを見た。
著作:紫草
To be continued.
長いキスの最后に、瑠璃が囁いた。
「さっきの、ほんと?」
唇を完全に離すことなく、本当だと答える。
すると彼女の口角が少しだけあがり、息が洩れる。再び抱き締めて唇を寄せた。
まるで覚えたての小僧のように、キスがしたくてたまらなかった。
「私、お遊びでいいよ。みんなにも内緒にする。誰にも言わない」
そう言って、俺を見上げる。
「だから気が向いたら誘って、みっちゃんが恋人と別れたら。結婚するなら、もう逢わない」
突き飛ばされるように、一瞬で瑠璃の体温を失った。
「本当は、愛人でもいいって言ってしまいそう。でも、そんなの許せない。みっちゃんがそんなことするなんて私が許さない。だから、みっちゃんに好きな人がいるうちは絶対逢わない」
そう言って、部屋を出て行こうとする。
「待てよ」
何、という言葉は背中越しだ。
「別れた。それだけ」
瑠璃は、すぐには振る返ることはなかった。ただ出てゆくことも止めたようで、足はそこに留まったままだ。
「どうして急に、そんなこと言うの」
「お前が、俺に女がいると勘違いしてるみたいだったから」
そこで初めて、こちらに振り向いた。
「勘違い…」
「そう。何度言っても信じないからな。俺には今、つきあってる女はいない。自分の気持ちに嘘つかないで、お前のことちゃんと見ていようと思ったから。それで、お前に本気で好きな男ができたら、それから忘れようと思ってた」
中学の時、モデルにスカウトされた時もそうやって黙ったまま、この部屋のその場所で立ってたっけ。
どうしようって。
でも気持ちはやりたいって言いたいのに言えなくて、困ってた。
「こっち」
俺は、自分の隣をポンと叩く。
まだ来ないと分かっているのに。少しだけ、意地悪したくなった。
自分で決めさせる。今も、これからも。
それでも瑠璃は動かないよな。
あの時も、そうだった。結局、俺が叔父さんと叔母さんを説き伏せたっけ。
でも、今度ばかりは俺も動かない。
迎えになんて、行ってやらない。
だから、お前の意思で来て――
もともと可愛かった。モデルの仕事を始めてから、瑠璃はどんどん綺麗になる。
手の届かない場所へ行くんだと思った。
でも、もし少しでも可能性が残っているなら。俺を選んで。
その時、瑠璃がゆらりと動いた。
「みっちゃん。私、迷惑かけたりしない?」
「迷惑!?」
「みっちゃん。私と一緒にいて、後ろ指差されたりしないの」
それは何を意味するんだ。
従兄弟だからか。卵とはいえ、芸能人だからか。
「瑠璃は、いったい何をしたいの」
「みっちゃんの女になりたい」
「とっくになってる」
言い終わらない内に、胸の中に瑠璃がいた。
「キスして。瑠璃から」
ゆっくり近づく瑠璃の瞳が、静かに閉じてゆくのを見た。
著作:紫草
To be continued.