*****
そこは、ただ一言。
広い…
この言葉しか浮かばなかった。
こんな広い蔵の中で、たった独りで育ったというのだろうか。
此処には本当に、魑魅魍魎と呼んだ者がいるのだろうか。
長い廊下を歩いていくと、扉があった。
何だろう。心臓が早鐘のようにドキドキしてきた。
手を伸ばす、ゆっくりと。
刹那、電流が体の中心を走ったような衝撃を受け慌てて手を引いた。
「何!?」
戸の隙間から覗き見る。
しかし、中は暗くて見えなかった。
安堵のため息をついた時だった。
何かの気配が、部屋を横切ったようなイメージを描く。
背中を冷たい汗が流れた。
恐怖だ。全身の体毛という体毛が毛羽立つような感覚。その感覚に飲み込まれないようにと、咄嗟に声が出た。
「誰かいるのか」
その声は明らかに上ずってはいたものの、ちゃんと言葉になった。
!
笑った?
今、確かに誰かが笑った気がした。
やっぱり何かがいるのだろうか。
もう恐怖よりも、好奇心の方が勝っていた。ここがどんな場所なのか、理解しているとは言い難かった。
扉に置いた手には、何も起こらない。
俺は、息を止め一気に扉を引いた――。
著作:紫草
To be continued.
そこは、ただ一言。
広い…
この言葉しか浮かばなかった。
こんな広い蔵の中で、たった独りで育ったというのだろうか。
此処には本当に、魑魅魍魎と呼んだ者がいるのだろうか。
長い廊下を歩いていくと、扉があった。
何だろう。心臓が早鐘のようにドキドキしてきた。
手を伸ばす、ゆっくりと。
刹那、電流が体の中心を走ったような衝撃を受け慌てて手を引いた。
「何!?」
戸の隙間から覗き見る。
しかし、中は暗くて見えなかった。
安堵のため息をついた時だった。
何かの気配が、部屋を横切ったようなイメージを描く。
背中を冷たい汗が流れた。
恐怖だ。全身の体毛という体毛が毛羽立つような感覚。その感覚に飲み込まれないようにと、咄嗟に声が出た。
「誰かいるのか」
その声は明らかに上ずってはいたものの、ちゃんと言葉になった。
!
笑った?
今、確かに誰かが笑った気がした。
やっぱり何かがいるのだろうか。
もう恐怖よりも、好奇心の方が勝っていた。ここがどんな場所なのか、理解しているとは言い難かった。
扉に置いた手には、何も起こらない。
俺は、息を止め一気に扉を引いた――。
著作:紫草
To be continued.