*****
「ベッド行こ」
瑠璃の方が先に誘ってきた。
「いいけど、お姫様だっこだけは勘弁してくれな」
そう言ったら、グーで殴られた。ま、左手で受けてかわしたけど。
にしても仕方ないだろ。どんなに可愛くたって、お前の身長百七十超えてんじゃん。
「おっきくて悪かったわね。伸びちゃったのは私のせいじゃないもん」
分かってるよ、と手を引いてやる。
今度は黙って連れてゆく。座敷を出て俺の部屋へ。そして部屋に入ると、瑠璃は手を離して自分からベッドに座った。
「うわっ。ギシって音した」
「少しくらい音しても大丈夫だから。それにベッド壊れたら、新しいの買ってやるから」
「じゃ私、キングサイズのダブルベッドがいいな」
そんなでっかいサイズ買って、どうすんだよ…
思わずため息つきそうになって、緊張しているんだと気付いた。
「怖いの?」
「怖くはないよ。でも痛いのは嫌い」
あ~、耳年増の性ね。
「思いっきり痛いらしいぞ」
大袈裟なくらい痛そうな顔してやると、瑠璃もめちゃくちゃ嫌そうな顔をする。
「やめるか」
そう言ったら、手を引かれて思わず瑠璃に向かって倒れこんだ。
「そんなわけ、ないじゃん」
瑠璃の腕が首の後ろに廻る。
「嫌だったら言えよ。やめるから」
うん、と頷く瑠璃を見て、止まらなかったらごめんと謝った。無論、声には出さないで。
「何」
何って、お前服着たままでどうすんの。
あんまり莫迦らしくって返事する気にもならず、ボタンを外す。
「みっちゃん、男の顔してる」
あ、そうですか。
「睫毛、長いね。眼鏡外しちゃったけど、私の裸見えるの?」
何だか、こいつ煩い。
上半身、さらけ出したところで瑠璃の両腕を真横に広げてベッドに縫い付ける。そして視線の向きを変えた。
「見ないで」
「何を」
「…顔」
その返事に思わず笑ってしまう。
「顔見なきゃいいのか」
何だよ、その目は。
「意地悪」
言いながら惹き寄せられ、思わず近づいてしまった唇に、触れる瞬間踏みとどまる。
「言って。欲しいって。俺が欲しいって、言って」
「みっちゃんが欲しい。全部、私だけのものにしたい」
刹那、唇が重なった、深く深く。そして体が熱くなる。
「本当に、後悔しないか」
その問いに、瑠璃は黙って頷いた。
ほんのりと赤くなって顔をそむけた瑠璃から、視線をずらす。豊かな膨らみの先端に触れると、身を捩ろうとする。
でも腕を押さえたままなので、身動きは殆んどとれない。
「や」
と小さく呟いた時、教えてやる。
「憶えておけ。ベッドの中の嫌はいいってこと。今時、少女マンガだってそのくらい載ってる」
暫く睨み付けるように見ていたが、再び意地悪という言葉と共に今度は瞳を閉じる。
首筋に、胸に、そして体の全てに刻印を。
どこもかしこも敏感になった瑠璃の体を優しく抱いてやる。
初めてなのに、それでも瑠璃の瞳は艶を帯びて揺らめいた。
「瑠璃。歯食いしばるの、やめな」
え。
小さな呟きのあと、息を呑んだ。
「痛…い…」
「暫く動かないから、ゆっくり息して」
瑠璃の瞳から涙と共に、笑みが溢れた――。
「動いていいよ」
そう言った瑠璃の声は掠れている。
初めてって快感を追うってわけじゃないんだろうな。そんなことを思いながら、瑠璃を見る。
今だけの顔。
見るなって言ってたのに、今は縋るような目で俺を追う。
「少しでも気持ちよくなって」
そう言って指を肌に滑らせる。
すうと息を止め、そして喘ぐような声を漏らす。
好きだ、と言おうとして止めた。ふと、そんな科白がドラマにあったと思い出したから。
瑠璃。
このまま、ずっと貪っていたい。
「お前のなか、あったかい」
そんな言葉を残したら、思い切りはたかれた。
著作:紫草
To be continued.
「ベッド行こ」
瑠璃の方が先に誘ってきた。
「いいけど、お姫様だっこだけは勘弁してくれな」
そう言ったら、グーで殴られた。ま、左手で受けてかわしたけど。
にしても仕方ないだろ。どんなに可愛くたって、お前の身長百七十超えてんじゃん。
「おっきくて悪かったわね。伸びちゃったのは私のせいじゃないもん」
分かってるよ、と手を引いてやる。
今度は黙って連れてゆく。座敷を出て俺の部屋へ。そして部屋に入ると、瑠璃は手を離して自分からベッドに座った。
「うわっ。ギシって音した」
「少しくらい音しても大丈夫だから。それにベッド壊れたら、新しいの買ってやるから」
「じゃ私、キングサイズのダブルベッドがいいな」
そんなでっかいサイズ買って、どうすんだよ…
思わずため息つきそうになって、緊張しているんだと気付いた。
「怖いの?」
「怖くはないよ。でも痛いのは嫌い」
あ~、耳年増の性ね。
「思いっきり痛いらしいぞ」
大袈裟なくらい痛そうな顔してやると、瑠璃もめちゃくちゃ嫌そうな顔をする。
「やめるか」
そう言ったら、手を引かれて思わず瑠璃に向かって倒れこんだ。
「そんなわけ、ないじゃん」
瑠璃の腕が首の後ろに廻る。
「嫌だったら言えよ。やめるから」
うん、と頷く瑠璃を見て、止まらなかったらごめんと謝った。無論、声には出さないで。
「何」
何って、お前服着たままでどうすんの。
あんまり莫迦らしくって返事する気にもならず、ボタンを外す。
「みっちゃん、男の顔してる」
あ、そうですか。
「睫毛、長いね。眼鏡外しちゃったけど、私の裸見えるの?」
何だか、こいつ煩い。
上半身、さらけ出したところで瑠璃の両腕を真横に広げてベッドに縫い付ける。そして視線の向きを変えた。
「見ないで」
「何を」
「…顔」
その返事に思わず笑ってしまう。
「顔見なきゃいいのか」
何だよ、その目は。
「意地悪」
言いながら惹き寄せられ、思わず近づいてしまった唇に、触れる瞬間踏みとどまる。
「言って。欲しいって。俺が欲しいって、言って」
「みっちゃんが欲しい。全部、私だけのものにしたい」
刹那、唇が重なった、深く深く。そして体が熱くなる。
「本当に、後悔しないか」
その問いに、瑠璃は黙って頷いた。
ほんのりと赤くなって顔をそむけた瑠璃から、視線をずらす。豊かな膨らみの先端に触れると、身を捩ろうとする。
でも腕を押さえたままなので、身動きは殆んどとれない。
「や」
と小さく呟いた時、教えてやる。
「憶えておけ。ベッドの中の嫌はいいってこと。今時、少女マンガだってそのくらい載ってる」
暫く睨み付けるように見ていたが、再び意地悪という言葉と共に今度は瞳を閉じる。
首筋に、胸に、そして体の全てに刻印を。
どこもかしこも敏感になった瑠璃の体を優しく抱いてやる。
初めてなのに、それでも瑠璃の瞳は艶を帯びて揺らめいた。
「瑠璃。歯食いしばるの、やめな」
え。
小さな呟きのあと、息を呑んだ。
「痛…い…」
「暫く動かないから、ゆっくり息して」
瑠璃の瞳から涙と共に、笑みが溢れた――。
「動いていいよ」
そう言った瑠璃の声は掠れている。
初めてって快感を追うってわけじゃないんだろうな。そんなことを思いながら、瑠璃を見る。
今だけの顔。
見るなって言ってたのに、今は縋るような目で俺を追う。
「少しでも気持ちよくなって」
そう言って指を肌に滑らせる。
すうと息を止め、そして喘ぐような声を漏らす。
好きだ、と言おうとして止めた。ふと、そんな科白がドラマにあったと思い出したから。
瑠璃。
このまま、ずっと貪っていたい。
「お前のなか、あったかい」
そんな言葉を残したら、思い切りはたかれた。
著作:紫草
To be continued.