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『蔵に居つく魑魅魍魎たちが、彼奴を守って育ててたんだ』
瑠璃が絶句した。
当然だろう。あの時の俺もそうだったから。
「母ちゃんの戸籍は、事件性から新たに作られたもので、本当の年齢も名前も、いつから蔵にいたのかとかも全然分からなかったって」
これで此処を嫌がるなら仕方ない。
それに俺自身を毛嫌いするかもしれない。
ただ、ちゃんと付き合うなら言わないわけにはいかないから。
「伯母ちゃん、かっこいい~」
「うん。えっ!」
お前、今、何て言った!?
「伯母ちゃんって、どこか翳があって神秘的で、それでいて綺麗で優しくて前から大好きだったんだよね。そんな過去のある人だったのかぁ。ますます好きになっちゃった」
興奮して話す瑠璃は、肝心なことが分かってないぞ。
お袋は『時間を超越した魔物かもしれない』と親父は言った。
そして俺は、その血を受け継いでいるってことだ。
嫌われるとかじゃない何かによって、引き裂かれる想い。
以前、一度だけ告白した女がいた。
彼女は、あっさりと俺を化け物扱いして離れていった。その時、周りに言い触らしていったから、暫く何処に行くにも魔物扱いだった。
あれから偽者の恋愛を追うのは止めた。
真実を話す必要のない、そんな人生を送ると決めたから。
瑠璃に言ったことは嘘じゃない。本当に、男ができたら離れるつもりでいた。
ただ忘れるつもりがなかっただけだ。
一生、逢うことはないだろうけれど。それでいいと本気で思ってた。
そのために在宅可能な仕事を選び、人との接触を絶った。
此処に来るのは、今はもう親父と瑠璃のふたりだけだ。
「ちゃんと分かってるよ」
物思いに浸っていたがために、瑠璃の言葉に反応が遅れた。
「でも…、みっちゃんが怖いとも、魔物じみたとこも感じたことない。そんなの聞かされても、好きなの。嫌いになったりしないもん」
瑠璃…
「でも、みっちゃんが、その話をして私を遠くにやろうとしてるなら」
そんな筈ないだろ。
でも、その言葉は声にならない。
「私は、みっちゃんの言う通りにする」
俺はそれには答えず、ガラス戸を閉め座敷に戻った。
それで見上げる瑠璃の隣に座った。
「そばに居て、ずっと。瑠璃が嫌だと思うまで」
瑠璃は首を横に振る、何度も何度も。そして少しだけ潤んだ瞳で、俺を見上げる。
「絶対離れたりしない。みっちゃんが出ていけって言わない限り」
「魔物の子かもしれないぞ。ずっと生き続けて、瑠璃を離すことなんかないかもしれない」
そう言ったら、瑠璃は本当に嬉しそうに微笑んだ。
「しよっか」
今更、何をと聞くほど、初心ではなかったようだ。
瑠璃は自分から腕を回してきて、頷いた。
著作:紫草
To be continued.
『蔵に居つく魑魅魍魎たちが、彼奴を守って育ててたんだ』
瑠璃が絶句した。
当然だろう。あの時の俺もそうだったから。
「母ちゃんの戸籍は、事件性から新たに作られたもので、本当の年齢も名前も、いつから蔵にいたのかとかも全然分からなかったって」
これで此処を嫌がるなら仕方ない。
それに俺自身を毛嫌いするかもしれない。
ただ、ちゃんと付き合うなら言わないわけにはいかないから。
「伯母ちゃん、かっこいい~」
「うん。えっ!」
お前、今、何て言った!?
「伯母ちゃんって、どこか翳があって神秘的で、それでいて綺麗で優しくて前から大好きだったんだよね。そんな過去のある人だったのかぁ。ますます好きになっちゃった」
興奮して話す瑠璃は、肝心なことが分かってないぞ。
お袋は『時間を超越した魔物かもしれない』と親父は言った。
そして俺は、その血を受け継いでいるってことだ。
嫌われるとかじゃない何かによって、引き裂かれる想い。
以前、一度だけ告白した女がいた。
彼女は、あっさりと俺を化け物扱いして離れていった。その時、周りに言い触らしていったから、暫く何処に行くにも魔物扱いだった。
あれから偽者の恋愛を追うのは止めた。
真実を話す必要のない、そんな人生を送ると決めたから。
瑠璃に言ったことは嘘じゃない。本当に、男ができたら離れるつもりでいた。
ただ忘れるつもりがなかっただけだ。
一生、逢うことはないだろうけれど。それでいいと本気で思ってた。
そのために在宅可能な仕事を選び、人との接触を絶った。
此処に来るのは、今はもう親父と瑠璃のふたりだけだ。
「ちゃんと分かってるよ」
物思いに浸っていたがために、瑠璃の言葉に反応が遅れた。
「でも…、みっちゃんが怖いとも、魔物じみたとこも感じたことない。そんなの聞かされても、好きなの。嫌いになったりしないもん」
瑠璃…
「でも、みっちゃんが、その話をして私を遠くにやろうとしてるなら」
そんな筈ないだろ。
でも、その言葉は声にならない。
「私は、みっちゃんの言う通りにする」
俺はそれには答えず、ガラス戸を閉め座敷に戻った。
それで見上げる瑠璃の隣に座った。
「そばに居て、ずっと。瑠璃が嫌だと思うまで」
瑠璃は首を横に振る、何度も何度も。そして少しだけ潤んだ瞳で、俺を見上げる。
「絶対離れたりしない。みっちゃんが出ていけって言わない限り」
「魔物の子かもしれないぞ。ずっと生き続けて、瑠璃を離すことなんかないかもしれない」
そう言ったら、瑠璃は本当に嬉しそうに微笑んだ。
「しよっか」
今更、何をと聞くほど、初心ではなかったようだ。
瑠璃は自分から腕を回してきて、頷いた。
著作:紫草
To be continued.